怠慢と憤怒
52話
ナイフと剣を交差させる。しかし、あまり良い様には進まないな。今俺がどこを歩いているのか。今、どんな技を考えようとも良い案が思いつかない。砂漠のような場所に響く金属音は俺が鳴らしているものだ。その砂漠のような場所は永遠と続き、その所々に未だ墓が埋まっているのが見える。この先に元の場所に戻れる気も望薄なのは分かっていたが、やはり、多少精神的にくるものはあるな。
「どの方向に向かっているのかすら分からないからさらに困るな。」俺はそう独り言をボヤく。絶え間なく鳴らす金属音はどこにも跳ね返らず、一方方向に飛んでいくだけだ。
しばらく歩くと、そこにゆらゆらと歩いている人影が見えた。その人影は急激に揺れ動いた後、倒れた。俺は慌ててその人影に近づく。そこには髪が膝辺りまで伸びている少女がいた。その少女は俺が声をかける前にボソボソと言葉を放っていた。
「面倒くさい....。」少女はそう言いながら眠りについていた。俺はそのまま少女が起きるまでその場に留まっていた。
俺が剣を研いでいると声が聞こえた。
「また、寝ちゃってたかなぁ?」少女の声だ。それ以外の気配は感じられない。
「起きたか。俺の名前はラフノ。目の前で倒れたお前を見守ってたんだが。」俺は少女にそう言うと立ち上がった。
「ありがとうねぇ。」少女は目を擦りながらそう言った。
「ところでここがどこら辺か分かるか?」俺がそう聞くと、少女はとある方向を指さした。
「あっちが終わりの場所だよぉ?」そう言った少女は片目を閉じていた。もう眠たいのだろうか。そこで俺は1つ提案をする。
「道案内で一緒に来てくれないか?」俺がそう聞くと、少女はニッコリ笑って。
「構いませんよぉ。」気だるげに言った。
「なんで眠そうになるんだ?」歩き出してからしばらく経った後、俺が聞いた。少女は少し経ってから話し出す。
「面倒っていう口癖が治らなくて、いつの間にかこんなに眠くなるようになっちゃったぁ。」少女はそう言って手を空に仰いだ。変わった人もいるものだ。と、そう思った。不意に少女が次は俺に質問してきた。
「どうして、剣やナイフを持ってるのぉ?」少女は顎に指を当てて聞いてきた。俺は当たりまえながら話す。
「これはモンスターを倒すためだ。」俺がそう答えると途端に少女の足が止まる。
「やっぱり、そんなんだね。いつも私たちののんびり過ごす時間を奪う。人なんだね。」少女の声はトーンが下がり、そして、テキパキとした話し方に変わっていた。少しずつだが、声が大きなるのが分かる。つまり、この少女もさっきの子ども達のように豹変するのだろうか。俺はそんな事を考えながら剣を構える。
「この....!あ、眠い...。だるい...。おやすみ。」少女はそう言い残して顔面から地面に倒れて、ねむった。
「どういう事だ?察しはつくが....。」俺は困惑した様子で、剣を仕舞った。その突如の事だった。俺は地面を舐めていた。そして、その微かに見える視界の端には先程の少女が立ち俺を見下していた。
「ようやく《 落ちて》くれたお陰で、私の出番だな!」先程の少女の口調と打って変わり、暴力的な口調に変わっていた。
「なにを...!」俺が発言しようとすれば少女は俺に蹴りを入れた。
「喋んじゃねぇよ!雑魚が!」少女はそう言って俺の頭を踏みつける。案外痛みはなく、俺は歯軋りをしながら少女を視線だけで見上げる。少女の余裕の表情を見て俺は安堵の表情を一瞬うかべた。これならすぐにでも隙が出来そうだと思ったからだ。しかし、そんな楽観視している場合ではなかった。少女の踏む力が段々強くなってきているのだ。これを意味する事は、俺の頭がいずれ近いうちに潰されるということだ。
「な、なぁ。取引をしよう。もし、この話が終わってから10秒の間に俺がここから抜け出したら、俺の勝ち。逆に俺が10秒経っても抜け出せなかったら、お前の勝ち。」俺がそう提案すると少女はムスッとして。
「勝ち負けを決めて何がある?」少女の言葉はごもっともだ。でもここで提案した事は間違いでは無い。それは警戒させるためだ。俺が抜け出すかもしれないという事を思わせるだけ。すぐ俺の頭を潰さないのにはなにか理由があるはずだ。だからこそ、ここで考える力を使わせ、«眠らせる»。これが俺の目的だ。力任せではダメだ。考えされる事によって眠気を勝たせる。そうすれば必然的に俺は逃げれるはずだ。
「今俺がすぐにでもこの足を退ける事ができると思うか?」俺は言葉を放ち続ける。
「思わねぇな!私は強いから!」少女は自分の胸を叩いて言った。
「そうだろうな。」俺が冷めた反応をすると少女は牙を剥き出しにして。
「自分から聞いておいてなんなんだよ!世界犯罪者の共犯者がよぉ!」少女はそう言って俺の頭をさらに踏みつける。俺は痛みより、世界犯罪者の共犯者という単語が気になった。
「どういう事だ?」俺は気になってつい聞いてしまった。すると少女は呆れた顔をして。
「レイドっていう大量殺人犯。その仲間がお前だ。」少女はそう言って腕を組んだ。
どうでしたか?
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