半透明のこどもたち
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51話
俺は人ならざる気配に剣を向ける。俺はここで力を手に入れる。そう決意したと同時に来たその気配は今の俺には勝てるかどうか分からないほどだった。
「誰だ?」俺がそう言うと、タンコが手で俺を後ろにやり、前に出る。
「迷い人だな!?」タンコはそう言って肩に金槌をやった。すると、気配はさらに近づいてくる。そして見えたのは陽気なおじさんだった。
「わしは遂に死んじまったのかえ?」おじさんはとぼけてそう言った。よく考えたらここで生死が別れるような場所なんだから人の気配がなくて普通なのか...。俺は少し残念そうに剣を仕舞った。
「さて、疲れただろう?少し眠っていきな!」タンコはそう言っておじさんを誘う。俺はおじさんの容姿を確認する。布を身に纏っているだけで、他に目立った服装は見受けられなかった。
「さて、君もそろそろ生きてずっと彷徨う準備は出来た?」タンコはそう俺に言ってきた。
「正直、生きてこの場所を抜けれるか分からないが、頑張ってみるよ」俺はそう言って小屋から離れて行った。
持たせてもらった鞄の中には暗い場所を照らすことの出来る、再利用可能の松明。硬いパンと剣が刃こぼれを起こした時に何とかするための研石。そして、剣が折れた時のためのナイフのみだ。俺は剣を腰に掛け、鞄を閉める。
「あれから1時間位歩いたが、全然陽の光が見えないな...。」俺はたかが1時間経った位で弱音を吐いた。しかも、モンスターも出てこないから尚更暇でしょうがない。そんな事を思っていると周りから複数の笑い声が聞こえた。
「ふふふふふふ....」「あはははははは
...」「クスクスクスクス....」俺はその笑い声が聞こえると声を出す。
「誰だ!」俺がそう叫ぶとその笑い声の持ち主が現れる。空中からスっと現れた姿はモンスターのゴースト族に似ている。物理攻撃が効きにくいモンスターだ。
「モンスターなのか?」俺がそう聞くと半透明の子供はクスクスと笑い、口を開く。
「わたしたちはこのばしょのまもりびとなの。」1人の少女はそう言った。その次に少年が口を開く。
「ぼくたちはやばんなひとがこないようにしてるんだ。」少年はそう言って微笑む。続いてもう3人目の少女が話し出す。
「わたしたちはここに、いつづけるの。そうあなたもここにいつづけるの。」少女がそう言うと世界に光が点滅する。その点滅に俺は目を閉じた。そして、目を開けるとそこは無数の墓が埋もれていた。
「ここにはおかあさんもいる。」
「おばあちゃんもいる。」
「みんないる。あなたもここにいてよ。」順番に話す子ども達に俺は少し気圧される。その理由は子供の容姿だからだと思う。
「俺はここには居られない。ずっと移動しなければならないんだ。」俺は強くそう言った。すると子供から笑顔が消え。
「じゃあ。」
「ここで。」
「しぬまでしんで。」子供たちはそう言って豹変する。子供の口から目から鼻から胃から無数の腐手が溢れ出る。3人の子供が合わさり、一体のモンスターとなった。
「ずっと....ずっと、ここにいてよぉぉぉぉ!」子どもの集合体のモンスターは俺に襲いかかってくる。俺は物理攻撃など効かないと知っていた。でも、俺は剣を振った。そう。ラフノの剣は光の剣。体内の光を全て剣に宿していた。勿論その光の中には魔力も込まれている。つまり、子供モンスターは真っ二つに割れたのだ。
「ど、うして....。」子供は涙を流しながら地面の下に落ちていった。
「安らかに....。」俺はその言葉を発して、もう一度歩き出した。目の前には墓が広がっていた。
ふと、見かけた名前。“ ヴァイル”。その名前を俺は無視して、歩く。
あれからもう1時間位経っただろうか。代わり映えのない風景を眺めて歩く。そんな時に腹が鳴った。
「少し休むか。」俺はそう呟いて腰を着いた。鞄に手を入れ、硬いパンを取り出し、かじる。歯ごたえのある感じが食べている感じがする。どこまで歩けばいい。そんなことすら分からず、暇な時が流れる。こんな調子じゃ、強くなれない。俺はどうしてここにいるんだ?今この地面に埋もれば俺もらくになれるのだろうか。一瞬そう考えてしまったおれは自分が嫌になる。
「いまはヤーズに、ハル、レイドがいるだろ。滅多な事考えるんじゃない。」俺はそう自分に言い聞かせて、立ちあがる。
空は曇り、光のひとつの無い空だ。ふと、思いついてつぶやく。
「そうだ。歩きながら技を編み出せばいいじゃないか!もうひとつの武器、ナイフもあるし、行ける気がする。」俺はそう言ってナイフを取り出し、剣との合わせ技を考えながら、再び歩き出した。
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