手紙
どうぞ!
楽しんでください!
44話
私は今、訳あって王様の娘になっている。簡単に理由を述べるとしたら王様のご機嫌とりって言ってもいいかもしれない。この部屋は窓から海が見える。部屋の中は白色が多く、化粧台があった。全身を映せる大きな鏡もあった。こんなにも貴重な鏡をどうやって生成したのか気になるが、今はほっておこう。そんな事をしているとドアがノックされる音がした。
「失礼します。国王様がお呼びです。どうぞこちら...。の前に着替えて貰ってもよろしいですか?そちらのドレスに。」使用人はそう言ってタンスを指さした。私はタンスに歩いていき、開いた。するとそこには幾つも丁寧に並べられたドレスを目のあたりにした。
「えっと....。これはどれを着ればいいんだ?」私は幾つもあるドレスを指さして聞いた。すると使用人は移動しだす。
「こちらのお召し物でよろしいかと。」使用人はそう言ってドレスを手渡された。
「お着替えなさるのをお待ちしています。」使用人はそう言って部屋から出ていった。
「勝手に話を進まられてる。協力するとは言ったけど、少し憂鬱だよ」私は肩を落として呟いた。そして私は着替え出す。今まで着ていた薄汚れた服を脱いで、ベッドに掛けてドレスを着ようとすると、ドレスと中から紙が一枚落ちてきた。私はその紙を指で挟み拾った。その紙は水に濡れたようにヨレヨレになっていた。今にも破けそうな紙を私は広げる。紙には何か文字が書いてあった。
「なんだ?」私はそう呟いてベッドに腰掛けて黙読する。
『 私の名前は“ エリスタ・タルスタム”。この国の国王の娘です。これを読んでいると言う事は私はその時、既に死んでいるでしょう。そしてあなたの名前はハルでしょ?なぜ分かったか不思議でしょ?そう。私にかかった病は<予知病>そう私は思っているわ。誰かが私の傍で何かの選択をすればその先の未来が見えるというものなの。でも私にはコントロール出来なくていつの間にか衰弱していったの。寝る事に夢を見るでしょ?でもその夢が予知だとしたら私は寝たくなくなっちゃった。でも寝てしまってその度私の体は活力を失っちゃった。私が今この手紙を書いているのは今にも死にそうだからなの。ここまで読んで貰ってありがとう。ハル、あなたには私のフリを1ヶ月ほど続けていて欲しい。今はその事を考えるだけでお願い。1ヶ月経ったらこの国に何かが起こるからその時にこの国から脱出して。その前にこの部屋のベッドにあなたの今着ているドレスを真っ赤に染めてナイフを突き刺して置いておいて。そしたら父上は私が死んだ事に気づいてこの城に火をつけて同時に死ぬでしょう。私はもう限界です。私が予知した部分はここまでです。お願い。父上を助けてあげて、この国の人たちも。』手紙はこれで終わっていた。
「私はまるで娘のように振る舞えばいいんだな?エリスタ。私はあなたの事なんて知らないけど、あなたを助けると思って私頑張るよ」私は天井を見上げてそう呟いた。私は決意の顔を浮かべてドレスを着た。
「遅かったですね。」使用人はそう言ってドレス姿を見る。
「着るのに少し困ってたんだよ」私がそう言うと使用人は少し厳しい顔をして。
「とてもお似合いです。それでも言葉は丁寧になさってください。いいですか。」そう言って使用人は歩き出した。私はその使用人に着いていく。
「歩きながらでごめんなさい。私ってそんなに王様の娘に似てますか?」私は少し言葉を慎みながら言った。すると使用人は止まり私に背を向けたまま。
「ええ。貴方様は国王様の娘様にとても似ておられます。貴方様を見た時、目を疑いました。それほど貴方様は国王様の娘様ににていらっしゃるのです。」使用人はそう言ってまた歩き出す。私はその背中を追うだけだった。
「おぉ、やっぱりお前にはその青白いドレスが似合っているな。どうだ?今日晩酌に付き合ってくれんか?はっはっはっは...!」王様はそう言って笑っていた。そこで私はムッとして。
「お父様。私には“ エリスタ”という名前がちゃんとありますよ?」私がそう言うと王様は驚いた表情になって。
「あ、あぁ。そうだな。エリスタよ。」王様はそう言い直した。
「ところで、私をお呼びになさった理由を教えて下さりますか?」私がそう聞くと、王様は威厳のある顔をして口を開いた。
「いいか。お前、ゴホンッ!エリスタには他国の王子の<お世話>をして欲しい。今日と明日だけだから頼めるか?わしには仕事があって出来なくてな。」王様はそう言って髭を触る。私は朗らかな笑顔をつくり。
「ええ、お父様。」一言そう言った。
「とても協力的ですね。」使用人はエリスタの部屋に行きながら言った。私はその言葉に口を開く。
「そう、見えるか?私は亡きエリスタの為にしている事ですよ。」私がそう言うと使用人は止まり、私の方を向く。
「どうして娘様の名前を知っているのですか?」使用人はそう聞いてきた。私は微笑んで。
「化粧台の縁に彫られていましたから。」私がそう言うと使用人は少し残念そうに。
「そう。」と一言言ってまた無言で歩き出した。
どうでした?
面白く読めたのなら良かったです!
次回も読んでくれると嬉しいです!