理解した
主人公ー!
4話
ずっと監視されているとなると、ここから出でもすぐ追っ手が来るということ。つまり寝る間もなく動き続けなければ行けなくなる。打つ手なしだな。そう息を吐くと同時に足音が響いているのに気付いた。鉄格子の向こう側を見るとそこに立っていたのは
「アストラスト。どうしてここに?」僕は疑問をアストラストにぶつけた。アストラストは息を溜めて話し出す。
「なぜ、グランドに"一方的"にダメージを与えたのか、気になってね...」アストラストの発言に疑問が生じる。だって僕は何もしてないはずだもの。
「なぁ、アストラストもし僕に呪いが憑いているとしたら信じるか?呪いのせいでそうなったと.....」
「うるさい!グランドは旧友だ!君はグランドに重傷を負わせたことになんの意味を見いだせる!?しかも一方的に...だ....」アストラストは僕の言葉を遮って怒号を露わにする。その声に僕は何も、口が動かない。一方的だったと、情報が改ざんされているというのに。
「私はあの時。あの村に駆けつけた時言ったな。私の名のもとに保護すると....。しかし、今の君はどうしても救いようの無い動物にしか....見えない」オドオドしている僕にアストラストは屈辱的な言葉を並べて翻弄してきた。僕は暫しの沈黙後口を開いた。
「仕方...ないだろ。あいつが突っかかって来たんだ。あいつのせいだ。あいつのせいで....!」言葉を最後まで発せなかった。アストラストの怒りが目に見えて分かる。二度目の沈黙。そのままアストラストは僕の目の前を去った。どうすれば良かったんだ?いや僕は反撃しなかった。なのにどうして?冒険者になって素敵な仲間を連れて、モンスターを狩って生計を立てて平凡に暮らそうと、そう思ってただけなのに。僕は息を詰まらせて目から流れる水滴を拭えずにはいられなかった。
「おら、晩飯だ」騎士が晩ご飯の焼き魚を配り終えると、ジンから声をかけられた。
「昼は凄かったな。ただお前の人柄は分かったよ。」ジンは僕に昼の事を喋り、僕の人柄を言ってくれるみたいだった。続けてジンは
「お前の人柄は静かなフリをして相手を油断させ、実は強くて理不尽に人が殴るのが好きな"クズ"だ。二度と喋んじゃねぇぞ」ジンは僕に圧をかけながら精神的なダメージを与えてきた。
「ぁぁぁ、ぐ.....」僕は言葉を発しようとしたが、無理だった。罪悪感と自己嫌悪で心が押しつぶされて、口が動かない。僕は嫌な悪感情を持ったまま眠りについた。
ーーーー翌朝。
「おい。出ろ」騎士は僕の牢を開け、再び僕は縛られどこかへ足を運ばされる。
着いた場所は王城の扉を開いた城下町。僕の目の前には全国民であろう、人の集合体が見えた。そしてその先にある。処刑場の存在。
「僕は殺されるのか....」ポツリと呟くと騎士が僕を転ばせる。それを見て国民は
「あ、あいつを殺せ!グランドはあれから目を覚まさない!お、お前のせいだ!お前のせいだ!」グランドが倒れているのを見て号泣していた人が言い出すと同時に他の人も束になって発言する。
「「「こーろーせ!!!こーろーせ!!!こーろーせ!!!」」」国民の処刑を急かす言葉。僕はなんで生きたのだろう。今も村に居ればこんなことにはならなかっただろうに....。もういい。僕は辛いんだ。冒険者になって冒険すると思っていたのに。冒険をしない冒険者がどこにいる?そう、考えてる内に僕は膝を処刑台に着かされ、前傾姿勢となった。あぁ、また首が切れるのか。折角だ。僕の能力発動するか試してみよう。気が動転していたのかもしれない。しかし、今は好奇心に負けよう。天を仰ぐ様に槍がかざされた。そして次の瞬間。鈍い音と共に僕意識が遠のいた。
こ、ここは。またあの空間だ。いつも何かしらあるとこの空間に来る。恐らくこの空間が無くなると同時に僕はまた目が覚めるのかな?
ーーーーーさぁ、答え合わせだ。
視界が晴れる。僕の目の前に待っていた光景は僕の首を切ろうとしていた騎士が血だらけに倒れている。その周りの国民と整列していた騎士団合わせて26人ほど地面に額をつけていた。僕はあまりの光景に吐き気を催し、その場に胃液を吐いた。僕の求めていたものはこんなんじゃない...!違う違う違う違う!このままだと僕は大量殺人鬼...。僕は口角を少し上げ、笑う。もういいんだ。そう思うと僕は息を吸い言葉を発する。
「僕を捕まえるからだ!僕を殺そうとするからだ!逃げ惑え!じゃないと僕は君らを...全員殺す。」初めは大胆に大声で徐々に声を抑えて国民と騎士団、ここにいる全ての人に殺害予告をした。すると人混みは一斉に逃げ出す。騎士団は一部分を除いて国民を守ろうとしていた。騎士の鏡だ。だが、僕の足元にも及ばない。僕に筋力がなかったとしても僕には能力がある。死にそうになれば能力が、僕を助けて反撃してくれる。これ程恵まれた力はないだろう。そう思いながら騎士の真横を素通りする。騎士はすかさず僕の背を斬るが、
「お返しだ....」僕の放った言葉と同時に、斬りかかった騎士に斬撃が降り注ぐ。能力が分かれば何も無い空間もないように思える。
「ば、バケモノ...ッ!」腰を抜かした騎士は僕に言葉の暴力をする。しかし
「いいねぇ...。この大陸を僕、いや、"バケモノ"が壊してやる!」僕はただ吠えることしか出来ない。幸いまだ好戦的な騎士がいるおかげで、まるで僕が暴れているようにしか見えないだろう。
「さぁ、この国を起点に俺はこの大陸を滅ぼしてやるぞ!」僕は王都の門を目の前に脅しのように叫んだ。すると、そこに一人の騎士が現れた。
「おい、これ以上暴れるな。この国も大陸も私が全て護る!」聞き覚えのある声だ。
「アストラストか...。お前のお陰で僕はこの大陸を滅ぼせそうだよ」僕はアストラストに礼を言った。
「なんで私がお礼をされなきゃいけないんだ?」アストラストは僕に問う。
「それはな....。お前が僕の中のボクに気づかせてくれたからだよ」迷言。迷言だ。しかしそれでいい。こいつに能力を気付かれるのはまだ早いと思うんだ。
「何を言っているんだ!」アストラストは僕に叫ぶが怖くない。もう、君の方が下だ。アストラスト...。沈黙後、アストラストが僕に攻撃を仕掛けてきた。アストラストの剣先に魔法陣が広がる。魔法陣は剣先から柄頭までを覆いへばりつく。そして、魔法陣のついた剣の威力は絶大。僕の脳天にぶつかった。後、アストラストは塵となった。
「さぁ、冒険の始まりだ....」僕がそう呟くと次の町へと歩き出した。
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