箱詰め
主人公に降りかかるトラブル。
どう回避するのか。
3話
「あの人何をしたんだ?」「人に重傷を負わせたそうよ」「なんてひどい奴なんだ」「でもあの人もケガしてるのはなんでかな?」「抵抗されたときに負ったケガでしょう」手を縛られて道の中央を歩かされる。色んな人が僕を悪者扱いにする。だからと言って僕が悪くない訳でもなさそうだから否定はしない。自分の力。無意識に発動する能力だ。自覚したからと言って能力を使うことができるわけではなさそうだ。
そう考えながら歩いていると遂に王城に着いた。目の前に聳え立つ王城は僕を見下ろしている。ふと、足を止めてしまった。すると、背後から叩かれる。
「進め!」さすが騎士団と言うべきか、押す力も僕では突破を考えようと思わない位の力だった。
「入れ」騎士の声に従わざるおえない。鉄格子に囲まれた部屋に僕は閉じ込められた。
「さて、明日からどうなるんだろうな」僕にも分からない能力。死んだと思ったら生きてる。僕の能力は昔読んだ本の中にあった能力。"起死回生"かも。って言うのは流石にないか...。
「お前は何をして捕まったんだ?」急な人の声に驚いた。声をした方に顔を向けるとそこにはみすぼらしい髭を生やした囚人がいた。
「そう言うあなたはなんで捕まったんですか?」僕は髭を生やした囚人に聞いた。
「ここで会ったのも縁だ。俺の名前はジン。嘗て全ての海を制した者だ。自分で言うのもなんだが、功績を残したはず、もう少し早ければ」ジンと名乗った男は自分語りを僕にした。それを聞いて僕は
「確かに凄い人って言うのは分かったけど捕まった理由は?」僕は捕まった理由が聞きたくて質問した。
「まぁ、そう急くな。もう長い間人と話せてなくて暇でしょうがなかったんだ。もう少しおじさんの話に付き合ってくれよ」僕はジンに話に付き合うようにお願いされた。
「まぁ、いいでしょう。どうぞ」僕はジンに話を譲った。するとジンは話し出した。
「俺が初めて降り立った大陸は灼熱の大陸だった。水を飲んでないと倒れるかと思うほどだった。二つ目は暑くもなく寒くもない。そんな大陸だった。しかし、その大陸の独自の文化に着いていけず殺されかけた事もあった。3つ目の大陸は寒さが強い大陸だった。そこでは何とか生き抜いた。そこで現地の人に聞いてしまった事があってね。さらに北に大陸があるとの事だったが、とても人が生きれる環境ではないと言われてそこの大陸へは行けなかった」ジンは自分の冒険譚を話した後僕の知りたい事の話題に入った。
「と、まぁ、自分語りはここまでにしてさっきから君が知りたがってる俺の捕まった理由はだな。人を殺したからだ....」ジンは重々しく語りだした。
僕は驚きを隠せなかった。それはそうだ。この人も僕と同じ様な感じなのかもしれない。
「どうして、人を殺したんです?」恐る恐る聞いた。するとジンは息を溜めて吐き出した。
「妻だ。俺の妻は昔から呪われた眼の持ち主で、寝ていると突如別の人格が妻を操作し、近くにある村を全て焼き払うほどの凶悪な人格だ」ジンは殺した理由を言うより先に殺してしまった人の話から話してくれた。その話の初めを聞くだけで息を飲んでしまった。そしてジンは話を続ける。
「だから俺たちは人里離れた森小屋で住むことにした。妻は俺に"ごめん。ごめん"といつもの様に言っていたな。しかし、森小屋に住み初めて一週間が経った頃、事件は起きた。凶暴化した妻が森を焼き払った。王城からの騎士団などものともしない。近寄ったものは全て焼き払った。俺は見ていられず、妻へ歩き出した。しかし、妻は無表情のまま躊躇なく俺を焼こうとした。だから俺は走って妻を抱きしめた。平和的な解決方法があると、そう思って。だが呪いの力は絶大だった。呆気なく俺は突き放された。俺は妻を刺すことを決意した。封印魔法が込められた剣をあわよくばまた妻に会えることを祈って....。しかし願いは届かず、封印は解けた。だが、妻は流血した後、事切れた。その場を見つけた騎士団は俺を鉄縄で俺を縛り、今では獄中にいるわけさ」ジンは話した。人を殺した理由と捕まった理由。どちらも仕方なかったとしか言えない。気を沈めているように見えたのか、ジンは話し出す。
「まぁ人を殺したのは事実だ。この世界の条例。何時いかなる時でも人は殺してはならない。そう定められているのさ」ジンは既に諦めているような口調で僕に言った。
「それじゃあ奥さんもジンさんも報われない人生だったんですね」淡々と言った。
「いやぁ、辛いねえ」ジンは辛い現実はもう思い出さないようにしていたのではないか?そう思った。そして僕らの会話は静かに終わった。
ーーーー翌朝。
「朝食だ」騎士から渡された食事は硬いパンひとつだった。騎士が朝食を配り終え、牢獄から出ていくと、ジンが話し出した。
「お前にはこの量は少なく感じるか?」ジンは片目を閉じて言った。
「いえ、地面に落とされたから土付いてないかなって....」僕は何を気にしていたのだろうか。昨日の晩も考えていた事だが、ジンの奥さんは呪いで寝ている間も活動中で良かったんだよな?そう考えると僕も寝たら何かしら発動して暴走してしまうのかもしれないな。そう考えていると、不意に声をかけられる。
「脱獄したいか?」ジンは僕に言った。 僕は少し考えて
「いや、人を傷つけたんだ。罪くらいは被りますよ」自分の手の平を見ながら言った。
「脱獄できるとしても?」ジンは僕を試すように聞く。確かにこんな所で一生を過ごす気は毛頭ないつもりだが、いつ出れるか....。息を吐き僕は問う。
「どうすればバレずに出れると思う?しかし、ずっとバレず」僕はジンを睨むように強い視線を送りながら言った。
「いいか?この世はまだ魔法に疎い。だからそこを突く。俺は魔法を使える。しかもこの場を脱する事のできる魔法だ」ジンは自信あり気に言った。
「どういう魔法だ?」僕は食いついてジンに聞いた。
「人形魔法の身代わり術だ。この魔法は誰かが触らない限りその人の脳に依存し、体も服も同じになり、その人の行動さえも真似ることの出来る魔法だ。触れられたら爆発する仕組みだ」ジンは淡々と魔法の説明をした。
「つまり、バレなければお前はずっと名前を変えてれば普通に生活出来る。ところで普段はどんなことしてるんだ?」ジンは僕に世間話のような事を聞いてきた。
「冒険者」単語で答えた。するとジンは血相を変えて言った。
「お前逃げれないぞ....!」ジンのその一言に僕は困惑した。
「どうして?」疑問を持って聞いた。
「ギルドカードには冒険者情報と同時に帰還魔法と追尾魔法が込められてあって、ギルドカードは所持者にずっと着いてくる。つまり、お前はずっと監視されてるのさ。この国。いや、王都アスファルによってな....」
どうでした?
面白かったら良かったです。
次も呼んでください!