空欄
286話
「邪魔だ...。何かを忘れてる...今私に必要なのはこんなところじゃない...」少年は言葉を放ちながら、顔にへばり付いた仮面を剥がし始めた。
皮膚が肉を掴み離さず、肉ごと、ブチブチ...と仮面を引きはがしていく。
胸辺りに紅が広がり、地面に肉や皮膚が内側にべったりと付いた仮面が軽い音を出して、地面に落ちた。
「な...ッ」人型の仮面はヒビの入った仮面の上から頭を押さえて、少年を見つめた。
その視線の先には顔に表情一つない、顔の骨が丸見えになっている少年が立っていた。
「何が...私を動かすか...分からないさ...ただ、私はここを出る...」
「それは許されぬ...。貴様はここに依存し...精々その生命をこの”旧世界”に捧げろ」すぐにでも少年を丸呑みしそうなほど大きな白い犬が現れた。
その犬は顔に仮面をつけていて、人型の仮面と似ているような雰囲気がしていた。
「旧世界が何か知らない...私はもう...決めた...」少年が呟くと同時に指を鳴らした。その瞬間、空間が辺り一帯を揺れ動かした。
少年が空中に浮いた状態で現界に現れた。少年の顔は既に皮膚と肉が再生し、仮面はない状態となっていた。
初めに少年の目に留まったのは円形に黒が支配している大地に土の雨が降り注いでいる光景だった。
「ここが...私の帰るべき...ッ」少年が言葉を放っている途中に胸に激痛が走る。
その痛みに耐えるべく少年は胸を押さえた。少し遅れ、青の光が瞬いた。
ソロが剣を地面に突き刺し、青い光で辺りを包み込んでいた。
「流石にキツイ...でも...邪樹を倒した今...次は...」ソロが剣を地面から抜こうとし、目線をドラゴンの森に向けた。
その時
「お前は誰だ...?ここで何をしている?」突如として現れた言葉にソロは即座に声のした方へと向く。その瞬間にソロは目を見開く。
「お前は...レイド?」ソロは突如現れたレイドを見て、後ずさりをした。それは、道化師の仮面を被っていなかったからだ。
「レイ...ド?それは私の名前か?」レイドは自分の名前であるはずの名を困惑の念を露わにして首を傾げた。
その姿はまるで何も考えていないようなもので、無垢な少年の様だった。
「そ、そうだ。レイドはお前の名前だ...。でもどうしてお前がここに...?」ソロは冷静に言葉を選びつつ、話した。
するとレイドは首を傾げた後に手を叩いた。
「何か忘れてると思っていた...!お前が私の仲間か!」レイドは勘違いの言葉を放ち、満面の笑みを浮かべ、ソロに寄って行く。
「...仲間じゃないんだが...」ソロがレイドに聞こえぬ声量でつぶやくとレイドは首を傾げた。
その姿を見て、ソロはもう一度口を開く。
「あ、あぁ!さぁ、あのドラゴンを倒せば世界は救われるぞ!」ソロは困惑しながらも剣をドラゴンの森の突き立てた。そこに突如、大震動がソロたちを飲み込んだ。
それと同時に突風が吹き荒れ、ソロは顔を腕で覆い、突風で巻きあがる砂埃を防ぐ。
それに対して、レイドは瞬き一つせず、棒立ちの状態だった。そして、聞こえるは大木の声。
「こ"の"...!も"う"す"こ"し"で"...!」
―――パチン....ッ!
軽い音が鳴り、大木の声は途中で途切れた。
「うるせぇよ...」レイドは乱暴な言葉づかいで腕を下ろした。
レイドは指を鳴らていたのだった。レイドの声は先ほどよりも暗いものだった。
空を覗けば世界は土色に包まれていて、何かを見落としているかのような感覚がレイドに襲いかかる。
襲いかかる感覚はまるで宙に浮いていて、まるでふわふわした感覚で、頭が空っぽになっているかのようだ。真っ白な頭。真っ白な空間...。
どこかで何かを見落としている気がする。すべてが、忘れものばかりだ。
でも、気がするだけだ。それだけ、それだけなのに、何かを忘れている。
大事な何か。
何かなのはわかっていて、大事なのもわかっている。
なのに、大事な何かを思い出せない...。
今使ったこの力さえも、なぜ使えたのかわからない。
この力の根源が何かすらも...
「さぁ行くぞ!レイド!」隣で笑う男は能天気に偽物の笑顔で私を誘う。
忘れているものはこんな人のことではない。
私の忘れているものは何か別の...。
でも思い出せない。頭が空っぽだ。
―――空っぽな頭はまるで...
―――どこかを思い出すかのような、空欄が当てはまりそうでハマらない...
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