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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
285/288

人間

すみません!かなり少なくなってしまいました!

284話




 一瞬で浮いた大木から泥が地面に落ちていく。完全に引き剥がれた大木の根。


そして、ソロの直立した姿は凛々しく、佇んでいた。


「時に守護兵は...狂戦士へと変わる...それは追い詰められた分、強くなる...。俺は...今までこうして、召喚しては召喚獣から力を奪って、一人で戦ってきた」ソロは儚げに剣の鞘を握りしめた。


その瞬間深い声が空気中に震えた。


「だから何だって言うんだ...」マモルの声とは違い、明らかに低い声がソロを襲った。


「私は...生きるためなら何でもする...」大木の木目が動いた瞬間に大木の根がドラゴンの森に突き刺さり、大木が切り株だらけのドラゴンの森に根を縮小させ、移動し、安定した場所となる。


その次の瞬間、ドラゴンの森に真っ黒な葉と大木が辺り一面に広がり、元の大木は更にでかく、太くなる。


半径は十五メートルばかりの大木で林冠はどこまで続いているのか、見えたものではなかった。


 刹那、ソロの体は宙を舞い、気づけば身体はシワだらけになり、肉が無くなり、皮膚と骨だけが残り、枯れ木のようになっていた。




 「曖昧な言葉ばかり...人間ははっきりしない。感情というものがあるからだ。そんな感情など消えてしまえばいい...」ヘルズが少年の頭の前まで歩き、少年の頭を踏みつける。


片足になった瞬間だけ揺れた。ヘルズの身体は、体幹がない事が伺える。


「あなたも...元は人間だったはずです...ならば分かるはずです...。感情が...」少年は頭を振り付けられ、動かしにくい口をゆっくりと動かした。


「人間は捨てた。今更振り返るつもりもない...」ヘルズは少年を突き放すように、見下した視線で、踏みつけ続けている。


しかし、その声にはどこか寂しげな雰囲気が漂っていた。


「なんで人間を捨てたのですか...?...ッ!」少年がヘルズに問いた瞬間に顔が蹴られた。軽い痛みに少年は睨む。


「人間はそんな好奇心さえも身を滅ぼすことを知らなッ...ゲホゲホッ!はぁ...はぁ...」初めてにさえ思ったヘルズの荒らげる声。それを感情としなくてなんと思う。


「それが...先程からあなたの言っている...感情ですよ...」少年の押し潰されそうな声でヘルズが目を見開く。


「そ、んな...。私は...まだ人間...?しかし、神というものを譲り受けた...。私は...神で...」


「その考える力も...人間のものではないですか...?」少年はヘルズが頭を抱えて、無駄に思える言葉を放っている時に更に負荷を与えるような言葉を投げかけた。


少年の屁理屈を正直に真正面から受けるヘルズは頭を抱える。


「そうだ...。この人間の名残たる身体を捨てれば...私は神となる...そうだ...そうなんだ...!」ヘルズは自己解決に自己解決を重ね、己の身体を捨てる事を声に出し、身体を掻きむしり出した。


鎖骨の下辺りを掻きむしり、溢れ出したのは真っ赤な鮮血で、ヘルズは鮮血を見ると、手についた鮮血を振りほどくように動かし、血飛沫を周囲に散らす。


「あ!あぁ!人間の部分が消えている気がする...!体温が無くなる!これが!神!神になる!これが...」掠れた声の叫び声は儚く散り、少年を縛り付けていた重みが掻き消え、少年はおもむろに立ち上がる。


「上手くいくとは思いませんでした...」少年地面に円状に広がる鮮血を見ていた。



 「人間の神とはたった二人いればいい」その声は目の前から聞こえた。


気づけば、少年は神に会うまでの地平線まで広がる大地に移動していた。


見れば、声の主は人型の仮面だった。


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