妖精の森の存続
282話
「誰が...ダレガ悪と決めた!私は森を再生させるためだけに生きているというのに!」マモルは分断した身体を揺らして、分断された身体がそれぞれ、木目を動かし、同じ言葉を放った。
「それは俺たち人間のエゴだ...。でもこれが俺のできることなんだ」ソロは左手で剣の鍔を親指で押し、剣の刃が見える。
「なら...ワタシも、エゴの為に...森を再起させる...!」マモルが木目を動かすと同時に地面に根っこを根強く生やし、その瞬間に地面から芽が生え、葉が広がり、枯れ、縦に茶色の木が伸び、辺り一帯を覆い隠す、雲に触れる直前の高さまでの大木がその場に現れた。
それを見た背後のドラゴンが、叫び始める。自分たちの敷地に突如現れた木に縄張り意識で追い払おうとしているようだ。
ドラゴンが大木を壊そうと地面に接触し、地面に剥き出しになっている根っこを攻撃した出した。
すると、地面から辺りから上に向かって生え、周辺のドラゴンを一網打尽とした。鼻につく血や排泄物の匂いが混ざり、大木を周辺を充満させる。
その間大木は徐々に成長を進めている。ほんのさっきまで雲に届くか、届かないくらいまでの高さであったが、今では林冠が既に雲を貫いていて、枝の隙間を雲がすり抜けている。
「これは...流石に...」ソロが呟いているときに地面が割れた。
ソロが下に目を向けると、そこは漆黒の地面で、崩れた地面が漆黒の地面に落ちると、物体が消えていた。
「はぁ!」ソロが右手を自分の足もと辺りに持っていき、息を強く吐いた。
その瞬間ソロは空中に浮き、大木を見据える。大木の根っこがある地面は崩れず、周辺だけが壊れて生き物を葬っていく。
「いよいよまずいな...他の誰かに被害が被らないために、本気で行かせてもらう...」ソロは右手を剣の柄に移し、鞘を左手で固定し、剣を抜いた。
剣を抜くと、剣が真っ青に輝き、辺り一面を薄い青へと変化させる。
「本来なら魔王を倒すときに使う技だった...魔力と体力の消費が激しいからあまり使いたくないけれど...」ソロが剣を右手のみで持ち、掲げる。
「聖剣よ...勇者たる者ソロに力を分け与えよ!”聖剣エクストリバー”!!」ソロが叫びながら剣を振り下ろした。その瞬間、青色の斬撃が大木の軋む音と共に、斜めに切り倒した。
「ここはどこでしょうか...?」一人の少年、元の名はレイドという名の少年が暗がりの森の中起き上がった。少年の顔には道化師の仮面が付けられており、表情は読み取れない。
「ん...?これは...」少年が目にしたのは地平線まで続く世界。
そして、その風景は少年は見覚えがあった。何より、今はここに用がある気がしていた。
「来たか。貴様が来るまで一年。案外早かったな」人型の仮面が背後から声をかけてきた。少年は落ち着いた声に懐かしく思う。
「あなたは誰ですか...」少年は敬語で口を動かした。その声に何倍も大きい白い毛並みの仮面をつけた犬が少年を囲った。
「貴様...幾つ被れば気が済むんだ...」犬型の仮面は少年を見るなり、鼻を前足で押さえる。
「貴様は神に求められ、神の欲を満たし、ここに来ることが許された存在となった...。今の貴様の身体はいっそ清々しい...」人型の仮面は少年に近づくなり、少年をほめたたえる。
「ここに来て私は何になるのでしょう...」少年は人型の仮面に向けて言葉を放つ。
「ここで貴様は神と話し、新世界を創り上げるのだ...」人型の仮面は少し興奮した様子で言った。
「ふぅ...まずいや...この再生力は予測できてなかった...!」ソロは剣を既に鞘にしまい、未だ壊れていない地面に膝を着いていた。
ソロの目線の先には大木がうねっていて、切った筈の大木は元よりも強固に、高く生えていて、その周囲に低木がいくつも生えていた。
「森を...存続させる...!」マモルは同じ言葉を放ちながら辺りを緑一色へと変えていく。
「どうすれば...止められる...!」ソロは鞘から剣を取り出そうとするが、頭に何も思い浮かぶ様子もなく、冷や汗が掻く。
「早速、貴様には神様に会ってもらおう...」人型の仮面が呟き、上を向くと、灰色に包まれた世界に大穴が開き、光が瞬いた。
その瞬間、少年は姿を消した。
「来たか...ついに...ゲホゲホッ!」咳を声に出して神と呼ばれる人物が少年の目の前に現れた。少年はその神の姿に唖然としていた。
「神...その姿は...」少年は敬意の欠片もなく言葉を放った。その言葉に神と呼ばれる存在が掠れた声で乾燥したカサカサの口を開く。
「私は...ヘイズ。世界神だ。この名は私が産まれた時に名付けられた名である」ヘイズはやせ細った身体に死装束を纏い、黒く、踵まで届く長い髪を揺らした。
どうでしたでしょうか?
面白く読めたのなら幸いです!
次回も読んでいただけると嬉しく思います!
ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!