妖精の森の大木
280話
奥に進んでいくと目の前に緑の世界が広がった。その世界はオロベインが支配していた森よりも明らかに大きく、一握りで殺せる大きさの妖精が僕の周りを囲うように集まっていた。
「我々の森を壊す人間はお前のことであるか?名を何と申す」その声はあまりにも低く、森中が微細に揺れる。
その声に僕は目を向ける。そこには見上げててっぺんまで見える人型の大木であった。
「僕の名前はレイド!妖精王を倒しにきた!」僕が叫ぶと時間が少し経ち、大木が動き出す。
大木が足を動かしだすと砂煙が舞い上がり、僕は堪らず、腕で顔を塞ぎ、目が傷つく事を防ぐ。
「レイド...ふむ...良い名だ...我は”ウールド”。我の名を知るのは妖精しかおらぬ。栄誉だと思え。だがそれも、おしまいだろうがな」
ウールドが言葉を最後まで言い切ったときには大木が僕の頭上から落ちてきていた。
僕は瞬間に辺りを氷結させる。辺りの妖精は氷漬けとなる。
しかし、大木は僕の身体を潰した。それと同時に砂煙が高々と上がり、衝撃が体中に流れる。
地面と大木に挟まれつつも僕は腕を曲げ、大木を腕で受け止め、腕が軋む音を立て、歯を食いしばる。
「何がおしまいだ...!僕はここで...終わるわけにはいかないんだよ!」僕は叫ぶと同時に身体を背中から鱗を出し、鱗の出る勢いで僕の身体が押し上げられ、大木が上へと起き上がっていく。
「何?」ウールドが持ち上がる大木、改め、ウールドの腕は力が入っていない。僕は力を入れられる前に鱗でウールドの腕をはねのけた。
「見くびってもらっては困る...!」僕はヒビの入った腕に赤いオーラを出し、修復する。ウールドははねのけられた腕を見つめて、じっとしていた。
「我の腕をはねのけた人間は二人目だ...だが、これは避けられんだろう...?」ウールドは木目の眼球を動かし、両手を高々と上げ、振り下ろした。
その瞬間想像を絶する突風と衝撃が僕を中心に両端から岩が抉られ、僕を襲うように並みの様に岩が巻き起こる。
僕は足を曲げ、跳び上がろうとしたが、足場が崩れて跳ぶことが出来ず、僕はバランスを崩した。尻餅が付く様に倒れた僕の身体は岩に呑まれ、潰される。
痛みが僕の脳内を染め上げ、僕の顔を歪ませる。右頬が岩で潰れ、岩で身体の身動きが取れなくなる。
徐々に茶色の根っこが岩を押しのけながら僕の身体に巻き付けてくる。僕の身体に根っこが完全に巻き付くと、僕の身体は岩の山から引き上げられた。
僕の身体は無理やり根っこで立たされ、ウールドと目を合わせる。
「人間を吸い取れば我は森を永続に導ける...」ウールドは枝を僕の心臓に伸ばし、刺す直前となる。
このままじゃ僕は死ぬ...。仲間と会えない...。ラナも報われない...。世界が壊れる。壊れたら冒険できない...。迷惑かけた故郷にも...
「戻ろうにも戻れないんだよ...!」僕は微笑み目を真っ赤に光らせた。
その瞬間僕の意識が遠のき、周囲から観客の声が黄色い声援を喚き散らす。
「僕に...僕に力を...!」僕は四つん這いになり、床を指でなぞる様に握る。
その瞬間両目と左頬に纏わりつくような仮面。僕の右頬に最後の欠けた仮面が付き、僕の顔は道化師の仮面に覆われた。
「私は...私に...力をありがとうございます...」レイドは仮面の下で微笑み、歓声が喚く。
「おしまいだ...」ウールドが僕の胸に枝を突き刺した。
「クククク...私の勝ちです」レイドは仮面を着け、自由のないはずの身体を揺らして笑う。
「私の勝ちなんです...」レイドの声が響き、指を鳴らす。
その次の瞬間、巻き付いてきていた根っこから僕の姿は消え、僕はウールドの顔辺りまで飛ぶ。
「どうですか?今の気持ちは...」レイドは無駄に身体を回転させながらも、ウールドからは目を離さない。
「人間...ちょこまかと...」ウールドの背から木の枝がまるで一つの大木の様に襲いかかってくる。レイドは指を鳴らし、枝を全て排除する。
「私はあなたを見世物にしてあげましょう...」レイドが笑う。笑う。笑う。笑う。笑う。笑う。笑う。中指と親指に力を入れ、指を鳴らした。
妖精の森は消え、レイドはどこか薄暗い森に大の字に倒れた。
「ありがとう。これで俺は解放された...よ?だから、俺が君の意志を引き継ぐよ。この勇者。”ソロ”。
俺の成せなかった魔王討伐に世界害虫、世界邪樹。次は最後だ。世界邪竜”トラゴル”。
この戦いが終わった時がレイドの夢が叶う...。それが俺にできる最善の救いだ」
ソロは己の肩から肩に巻かれた真っ赤の布を、右手で熱そうに引っ張る。
左の腰あたりには豪華なつくりの剣があり、身体には銀色の鎧を着てある。
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