不満
和が続いております。
27話
町の人は復興に力を入れていた。僕達は鬼神を倒した功績として、何か報酬があるかも思いきや、僕らは町から追い出された。
「命を賭して戦ったにも関わらず追い出されたのは腹が立ったが、まぁ、いいか....」僕はそう呟く。
「仕方ない。丁度俺たちが来た時に状況が悪化したみたいだからな」ラフノは目を閉じて言った。確かにたまたまとは言え、悪化させた原因と言えなくもない。仕方ないって片ずけるのも懸命だな。
「そういえば、今どこに向かっているんだ?」ハルがラフノに聞いた。
「“ イズモ”という所だ。イズモには最高級の刀や今持っている武器に付与魔法を付けてくれるらしい。1つの武器に5000コーカは必要だがな」ラフノは向かっている所と、そこに向かっている理由を述べた。
「例えばどんな付与魔法が付けれるんだ?」僕は素朴な疑問をラフノにぶつけた。
「そうだな。斬れ味上昇と魔力上昇...が主流だった気がする....」ラフノは少し自信がなさそうに言った。
「確かではないのか...」ハルは顎に手を当てて言った。
そんな会話を交わしている時、王都アスファルでは....
円形の机に沿って並ぶ椅子。その椅子にはそれぞれの大陸の支配者がそれぞれ座っている。
「このまま野放しにしておいていいのか?」低く威厳のある声が響く。
「最近ではあまり目立った話がありません。いつか捕まえる必要はありますが、今は大丈夫だと....」青年のような声は遮られる。
「そんなに楽観視していいと思っているのか!?儂の眼には貴様がなぜそう答えるのかわからん!」ドスの効いた声で青年のような声の持ち主は気圧される。
「静かにせんか!」濁りのない声はそう言って争いを止めた。続けてその声は喋る。
「今話すべきはそんな犯罪者の事ではない!今話すべき事は....魔王復活の予兆だろ!?」その気迫のある声は言った。
「我々の大陸では1度その予兆のようなモンスターが出た。亀のようなモンスターだった。そのモンスターが予兆のモンスターなのであればゴズライトタトルというモンスターになるが?」穏やかな声の持ち主は手を組んで言った。
「して、そのモンスターはどうされた?」低く威厳のある声の持ち主が言った。
「その、先程話していた犯罪者が倒したのでないかと、ある。元よりその者は世界規約を破り、人殺しを重ね重ねしたが、実力は認めれる位だ。もしかするとその者は“ 勇者”に成り得る存在ではないかと、思う」穏やかな声の持ち主が言った。
「あまり、ここでは勇者の話はよそう...でないと首が飛んで仕舞うぞ...」低く威厳のある声の持ち主はそう言って誰が抑えていた。その抑えられていた人は先程の気迫のある声の持ち主であった。穏やかな声の持ち主は焦りながらも一言言った。
「すみません」
目の前に現れたのは刀を持った人。その人は急にハルに斬りかかった。
「なんなんだ!」ハルが辛そうに受け止める。それと同時に僕は刀を持った人を峰打ちしようとした。しかし、瞬時に避けられた。
「速い....!」僕は咄嗟に言葉が出た。
「なぜ止める。ただそいつの首を獲るだけだぞ?」刀を持った人はそう言って首を傾げる。
「こいつは、ハルは僕たちの仲間だぞ!それを簡単に....」僕の声は遮られ、刀を持った人は喋り出す。
「お前たちにはわからんだろうが、そいつには鬼がとり憑いている。しかも上位だ。その鬼は黒鬼だ」刀を持った人は構えを取りながら言った。
「そんなはずがないだろ!?この前倒したばっかだぞ!?」僕はそう言う。
「はぁ...。お前は分かっていない。黒鬼はずっと精神体で渡り生きてきたんだ。つまり、そいつは今は大丈夫でもいつか乗っ取られる...。その事をしっかり肝に免じておくんだな....」刀を持った人はそう言って構えを解き、鞘に収めた。
「待った!お前の名前はなんだ?」ラフノが言い出す。
「俺の名前はマサトリ。ただの武士崩れだよ」マサトリと名乗る人はそう言って僕らに背を向けてどこかに歩いていった。
とはいえ、明らかになったハルのとり憑かれた体。どうすればいいのだろうか。町に着いたら探してみるか。
ふと僕は考えることがある。今僕は何をしているのだろうか。僕の目的はこの世界を滅ぼす事では無かったのか?どうしてこうなった?その原因は僕が1番知っている。仲間が出来たからだ。仲間ができるまで僕は何度も失望した。この世界に、人に。なのに、今では辛くない。今は滅ぼすことなど考えず、冒険者として生きようじゃないか。
そして着いた場所は、イズモ。この大陸で1番大きな町だ。まずはハルから鬼を取り出せる場所に行こう。
神社に着いた。ここでなら何とかできそうだ。そう思って僕は鳥居を潜った。しかし、ハルは鳥居を通れなかった。突如、ハルを中心に黒雲が集まる。
「俺はまだ死んでいないぞ...。俺をここから出すにはこいつを殺すんだな」黒鬼と思われる鬼はハルの体を乗っ取り、言った。そして、直ぐにハルは正気に戻った。
「大丈夫ですか?」ヤーズはハルに近寄って言った。しかし、ハルはヤーズの手を叩いて退いた。
「いつもそう!このパーティの中では1番弱くてこの前の戦いも何も出来なくて!大して強くもない癖に闘技場に申し込んで案の定負けて!最後には乗っ取られてって!本当にろくでもない人生だった!」ハルは泣きながら僕達に言ってどこかへ走っていった。僕はハルの悩みを感じ取れなかった事に不快感を抱いた。仲間が悩んでいるのにも関わらず、僕は旅を楽しんでいただけ。ラフノとヤーズも俯いているようだった。もう夕暮れだ。僕は夕日をみながら鳥居から出た。
どうでしたか?
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