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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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妖精の森の支配者

278話




 「端的に述べるなら知的好奇心だね」アストラストは人差し指を一本立てて笑みを浮かべた。


「好奇心?」僕は眉を顰めた。


「そうだよ。レイド君、君が私の友人であるグランドを殺した時は君を私の手で刑を執行する気だったよ。


でも、君のその力。どこかの伝承で見かけた気がしてね。


それから私は好奇心のあまり伝承を探す旅に出たのさ」アストラストは僕をじっと見つめた。


「つまり僕は伝承そのものって事か?」僕がアストラストに向けて疑問を口にした。


「いいや?それは、分からないね。結局、伝承を探している時に世界中に異変が起きて、最後まで探しきれなかったよ。


だから、君が伝承そのものっていう確証がないね」アストラストは椅子から立ち上がり、壁際に歩き、木の壁にもたれる。


「ただ、ひとつ分かることがあるんだよ。伝承は作れる事、伝承は実在する事、


そして、魔法ではないチカラを持つものこそ、伝承の力を引き継いだ者という事だね。


そして、伝承の能力は私の中に取り入れられたものもあるけれど、殆どの人が未だ伝承のチカラを得ている。


それに引替え、伝承は新たに産まれる者に引き継がれていく」アストラストはいつの間にか玄関に近づき、ドアノブを握っていた。


「どこに行く気だ?」僕がアストラストに近付く。


「君は人の自由を縛る気かい?今から私は未知の伝承を探しに行くのさ」アストラストは笑みを浮かべながら、外へと出た。



 外に出るアストラストを見た後、僕はついていくようにドアノブを回し、扉を開く。


その瞬間、光が目に突き刺さり、目を細めた。


「虫の討伐が終わった今、次なる困難は妖精王...という事になる...妖精は森にいることが多いだろうから、森を探しまくるしかないな」僕はドアを最後まで閉め、太陽を眺めた。


 太陽は色が更に変わっていて、青色へと変わっていた。


しかし、見るものの色は世界が変わる以前と変わっていない。不思議なものだ。


 アストラストは多分、僕の故郷である“ コセトマ”に行き、伝承を探し回るだろう。


それは、僕のチカラを伝承とは言い切れていなかったからだ。


「何より、早く森で妖精を見つけなければ、虫の時のように世界を壊しだす...。時間がないみたいだ」


僕は家の周辺の森を探しに、ナイフを片手に持ち、凶暴化しているモンスターに用心しつつ、森を進み出した。



 しばらく森の中を彷徨い歩いたが、妖精のような生き物はおらず、そもそも、モンスターにさえも会わなかった。


「おかしい。いつもならモンスターは森の中を蔓延っているはずだ...」僕は森の中のじめっと湿った空気を吸い込み、吐く。


額から頬、顎にかけて汗が伝わり、最終的に地面に落ちて小さな音が鳴る。


周囲の森はまさにジャングルと言えるような場所だった。


 更に奥に進んだが、妖精の痕跡の様なもの、めぼしいものは特にない。


僕は森の外へと出て行こうと、来た道を振り返る。


しかし、そこは来た道とは全く別物で、緑の光が微笑む世界だった。


 緑一色と言える世界は雰囲気が森とは一段と変わっていて、妖精がいそうな雰囲気を漂わせていた。


巨大な桃色の花が幾つか咲き誇り、大木が木々を纏まりながら成長し、壁が出来ている。


それは左も前方も、後方もそれは及んでいた。


そして、その中央に一際目立つ大木と大木が交わりながら真上に伸びている。


その頂上には巨大な蕾があり、その蕾は外から見えるような、透けるような花びらだった。


「これは...妖精の森...?」僕は衝動的に口を動かし、緑の世界に光があらゆる所から現れる。


人間のような姿に虫の様な翅。緑色、桃色、黄色の髪色で自然な色が目立っていた。


「私たちの森に何の用ですか...?」森全体に響く声が聞いてきた。


「僕は次に脅威になるものを探している...冒険者だ」僕はナイフをしまい、中央に目を向ける。


その瞬間、中央の大木が動き出し、蕾が僕の目の前まで近づいてきた。


蕾がゆっくりと開き、中に緑系統の色の髪色をした耳がとんがり、背中には花弁のように開く、翅が生えている妖精がいた。


「私はこの森の支配者“ オロベイン”です。あなたをこの森に引き入れたのは信頼に当たる人物だと思ったからです...。ではこちらへ...」オロベインは花弁に僕を招く。


僕は足を踏みだし、花の上に乗る。すると、花は中央へと戻っていく。中央に戻ると、花びらは閉じられ、蕾となる。



 「あなたの脳は手に取るように分かります。嘘をついていないのは確かですが、何か私に言えないことがあるみたいですね...」オロベインは翅を広げ、飛び出した。


「あぁ、その通りではある。僕は次の脅威が妖精王だと踏んでいる」僕は飛ぶオロベインを見つめたまま、視線をそらさない。


「なるほど。つまり、あなたは私達を殺すということですか?」オロベインは僕に背を向けたまま声を出した。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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