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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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旅路③

275話




 目を覚ますと、じめっとした空気に煽られた。目覚めはあまり良くない。


更に肌寒く、ベッドから抜けられぬ状態となる。


「久しぶりの寒波に身体が追いついてないね...」アストラストは身体を震わせながら腕と腕を組む。


そして、震えながらベットに座る状態となり、目線の先は机に移っていた。


「そうだ...!昨日の事を記録しておいてみよう...」アストラストは思いついたように手を叩き、震えた身体を動かした。


 椅子を引き、机を前にして座ると、旅の為に持ってきていた小さめの腰に付けるカバンを探った。


 周辺はボロボロだが、文字を書くには打って付けの紙を1枚取り出し、皮で作られたインク入れと、羽根ペンを1本取りだした。


 羽根ペンの先をインクに何度か付け、紙を伸ばして、文字を綴り出した。


『今私はこの世の中にある伝承を探す旅に出ている。なぜ伝承を探すかは教えないけれど。昨日は老人とその孫に食事を頂いた。今日は伝承を探りに行こうと思う』


小さめの文字で紙に書き、優しく息をふきかけて、乾くのを早めさせ、手でなぞり、乾いたことを確認すると、巻物のように巻き、カバンに入れた。


「さて、探そうかな」アストラストは息を吐くと同時に言った。



 宿屋から出ると、アストラストは暗い顔をした。


ーーーそれは、



「1万コーカだよ...」宿主の言葉にアストラストは目を大きく開いて、驚いた。


「た、高くないですか...?」恐る恐る宿主に聞くと朝からテーブルで食事している人達が一斉に立ち上がった。


そこでアストラストは気づく。


「これは...旅人を狙った脅し商法ですか...?」アストラストは誰にも聞こえない声で呟いた。


 ここで問題を起こして、捕まれば伝承も調べられなければ、アストラストに関わった老人とその孫にも被害が被ったら、困る。


「分かりました。払いましょう」アストラストは少し威圧的に言い放ち、コーカを入れた布袋の中身から1000コーカ札を8枚出して100コーカを18枚だし、残りは10コーカを20枚出し、宿屋から出た。



 朝の出来事で気分が落ちに落ちたアストラストは肩を落としながらも、ヘルス国の町並みを見ながら、伝承が記されているであろう図書館を探し出した。


 「すみません、この国の図書館はどこにありますかね?」アストラストはちょうど通りかかった通行人に向かって聞いた。


すると、通行人は指をさして、口を動かした。


「ここだよ。図書館になんの用か知らないけど、ここの管理人さんは少し不気味なんだ。あまり驚いてやるなよ?」通行人はまるでアストラストを怖がらせるように言って、去って行きながら手の甲をこちらに向けて、手を振ってきた。



 アストラストは唾を飲み込み、図書館へと進む木の短い階段に足を踏み込んだ。


 2、3段上ると縦に長い焦げ茶色の扉が待っていた。アストラストが扉に縦に細長いハンドルが付いていて、金属だった。少し雪が積もっていて冷たそうだった。


アストラストはその冷たさをものともせず、口を動かしながら、扉を開く。


「失礼致します」その言葉の強さはアスファルにいた時と変わらず、兵士長を思わせるものだった。



 礼儀正しく入ったアストラストが1番初めに見たのは、奥へと立ち並ぶ図書館だった。


図書館の中は外のように湿気が強く寒い訳ではなく、乾燥した空気にほんのり暖かかった。


「どなたですか?」聞こえた声は随分と若々しく、幼さを感じさせる潤った声だった。


アストラストは声に反応して、案外下から聞こえた声に振り向いた。


すると、そこには藍色の髪の短髪の12歳くらいの少年が、様々な色の本を表紙や裏表紙を天井、床に向けた状態で手を下の方にして、頭の上まである本を運んでいる最中だった。


上の方の本は揺らいでいて、今にも落ちそうだった。


「手伝ってあげるよ」アストラストは少年の顔が見えるようになる辺りまで本を持った。


「ありがとうございます...!」少年は真っ白な歯を見せつけるように笑顔でお礼を言ってきた。



 「ありがとうございました!えっと...」少年が両手を後ろに回し、気まずそうに頬を掻く。そこでアストラストが気づいたように口を動かす。


「あぁ...!私の名前はアストラストだよ。君はなんて言うのかな?」アストラストは膝に手を付き、しゃがみ気味の体勢で少年に聞く。すると少年は一礼した。


「すみません!アストラストさん!ありがとうございます!...っと、ご用があって入ってこられました...よね?」少年が丁寧な言葉遣いで礼をしたままの体勢で顔だけアストラストに向ける。


「そうだね。この国の伝承の書があれば見たいのだけれど、あるかい?」アストラストは少年の身体を縦に真っ直ぐに手でやさしく直しながら言うと、少年が顎を触る。


「ありますがあまり読むことはおすすめ出来かねます...」少年は視線を下に落とした。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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