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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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旅路

273話




 『早くこいよ!』『また旅を始めよう!』『今日はどこに行くの!?』無い意識の中、聞いたことのある声が響いていた。


無意識に聞こえる声はまるで空耳のようで、曇ったような、遠い昔のようなものだった。



 痛みが生きている実感を促す。僕はいつの間にか意識が戻っていて、身体中に走る痛みを痛感していた。


「血を使い過ぎだ...ここで血を使って回復するとすれば...死ぬ覚悟をしなけりゃならない...」僕は傷んだ体を起こそうとするも起こせず、地面に倒れこんでいる。


寝ていた時間含め、恐らく一時間ほど経っただろうか。


「この変わりに変わった世界で安全に一時間過ごせたのは奇跡だ...」僕は辛うじて動く頭を横に向け、辺りを見る。辺りには何の気配も感じられなかった。


深く息を吐いて痛みを何とか和らげようとするが、痛みは引いて行く気はしない。ただ、痛みは時間経過で和らいでいる。もう一休みすれば痛みはかなり薄れるだろう。


しかし、安全に休めるとは思えない。ここで目を開けていたとしても、何もできない。なら、休んだ方がいいか...。



 僕は休むことを決めると目を閉じた。


 目を閉じ、しばらく時間が経つと、運ばれている感覚に襲われる。僕はその感覚に不信感を抱いているが、目を開けず、身体も動かせずにいた。


しかし、なぜか安心して、僕は二度寝と洒落込んだ。



 次に目を開くと僕は見慣れない天井を目線に寝ころんでいた。僕は痛みの引いていることを確認し、体を起こした。


左辺りに目を向けると、暖炉があり、部屋は暖かくなっている。誰かの家なのは明確だが、人の家はまだ残っているのか?


 そこに声が一つ聞こえた。その声は久しくも、疑ってしまうものだった。


「やぁ、レイド君」そこにいたのはアストラストだった。僕は顔を青ざめてアストラストをじっと見つめた。するとアストラストが口を開いた。


「私は死んでなんかいないよ。君は私を殺してしまったと悔やんでいただろうけどさ、私は死んでないよ。死んだのは私の...身代わりって言った方がいいかもしれないね?」アストラストは困惑したままの僕に向けて、薄笑いを浮かべて言った。


「死んだってアスファルに広がると、私は旅に出たんだよ。困惑させてしまっているし、順に話をしようか...」アストラストはテーブルに肘をつき、指と指を絡ませて手の前に持っていき、話し出した。





 ―――時は遡り、レイドがウトムから離れて、野宿している間のこと。


 アストラストは布を多く自分に巻いて、変装した後にアスファルから出て、コセトマに向けて歩こうとしていた。


「さてと...先に”コセトマ”に行きたいけど、今はレイド君の殺戮のせいでこの大陸中にアスファルの騎士が通行止めをしているね。今はあまり動きまわるべきではないかもしれないね。だからと言ってじっとしていては、話は進まないし、ここらで別の大陸に行くのもいいね」アストラストは顎に手を当て考え、腰あたりに括りつけた世界地図を取り出した。


 アストラストは地図の右側に目を向けた。


「ここは最南北の国だね。”ヘルス”ていう国は寒そうだね。丁度熱いくらいの布を巻いてるわけだし、世界中を周っていたらコセトマ以外の”伝承”を知れるかもしれないしね」アストラストは口を動かしながらも、腰を地面に落としていっていた。


 アストラストは足もとに魔法陣を張り、次の瞬間アストラストは跳んだ。その瞬間アストラストの姿はその場から消え失せ、気付けばアストラストの身体は”ヘルス”という最北の国の手前に移動したのだった。


「入ろうかな。冷えてしまうしね」アストラストは身震いしながらヘルスへと足を進めだした。



 「お?旅人の方ですかな?冷えているでしょう。よければ私の家へどうぞ...」老人は首の輪郭が不自然に太いように見えるほどマフラーを着けていて、何より、穏やかな顔つきだった。


確かに宿屋でお金を払って泊まるよりは、誰かに止めてもらうのはいい。


しかし...

「いえ、大丈夫ですよ。悪いですしね」アストラストは白い息を吐きながら、手を振った。すると老人は穏やかな顔つきから極端に暗い顔つきとなる。


「そうですか...?それでは...」老人は寂しげな顔つきのままアストラストに背を向ける。その姿は実に哀愁が漂っていて、何か悪いことをしてしまったかのような罪悪感が残る。アストラストは顔を顰めて手で老人の腕を掴む。


「やっぱり、泊めてくれますか?」アストラストは微笑んだ。



 アストラストはロングの白髪で顔が整っている。戦いの時は後ろに括ることが多い。だから、時にアストラストは女に間違えられることがあった。それは今回も例外ではない。


「おじいちゃん!また女の人呼び込んだの!?おばあちゃんがいないからって!」老人の孫と思われる少女が暖かそうな毛皮を羽織って、暖炉の前で老人を説教していた。


「私は、男だけどね...?」アストラストは説教の仲介に入る様に言葉を投げた。それを聞いた老人の孫はアストラストを向いて叫ぶ。


「そういう問題じゃないの!ただの旅人が口を出さないでよね!」老人の孫は腰に左手を当て、右手の人差し指をアストラストの鼻辺りまで伸ばした。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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