代償の仮面
272話
僕は仲間の状況がどうか気になりつつも、丸まった虫の上に僕はかがんだ状態で、黒い刀を生成し、虫の装甲と装甲の間に突き刺し、霜まみれの虫の上で滑らない様にする。
奇跡的に装甲と装甲の間は、装甲よりも案外柔らかく、刀で突き刺せた。恐らく腰にあるナイフを使った場合はナイフが壊れるところだった。
「これなら僕は滑ることなく、凍らすことができるだろう...」僕は呟くとすぐに虫の装甲と装甲の間の皮膚に触れ、手のひらを中心に冷気が溢れていく。辺り一帯に雪が降り始めた。
雪の結晶が虫に張り巡らされた。そこで僕は刀からは手を離さず、息をついた。
「ふぅ...これで、一度何とか...考える時間は得れただろう...」僕が呟いた瞬間虫が動き出した。虫が動くと氷漬けになった筈の身体の表面にヒビが入り、壊れていく。
「もしかして、もう砕けるのか?にしては早いし、動けるはずが...」次の瞬間虫が丸まっている状態から元の地に足が着いた状態となり、僕がふと前に目を向けると、僕が刀を刺している場所ともう一つ前に虫がいた。
分身したのか、と刀を刺している虫から刀を抜いた瞬間、僕は気付く。
「軽い?」僕は呟くと刀の切り口に目を当てて、覗く。そこは空洞で、地面の存在は丸々なくなっていた。
「待てよ?だとすれば...!」僕は焦燥感に騒ぎ立てられながら前の虫に目を向け、その場から跳び、前の虫に移動した。
そして、先程と同じように刀を柔らかい皮膚の部分に突き刺し、落ちないようにしようとした。
しかし、刀を刺そうとした瞬間乾いた音が弾け、刀は弾かれた。
「これじゃあ...もう一気に決めよう...」僕は右拳を高々に上げ、右腕を中心に魔法陣を張り巡らせて、自分の足ごと辺り一帯を氷結させ、虫の動きを一度止めた。
次の瞬間僕は右腕を虫に振り下ろした。
その瞬間、爆発音と主に紫の光に真っ赤な海水の爆発が起き、魔法陣が解き放たれ、物理攻撃と合わせて重苦しい音が轟いた。
僕はほとんどの力をフル活用し、白く色づいた息を深く吐いた。
「これで...」僕は右腕を赤いオーラを出して、治す。辺りに振り撒かれた煙と霧が晴れていくと、衝撃な光景を目にした。
僕が殴った筈の虫は無傷で、何もなかったかのように虫は動き出した。その先に集落のようなものが見える。
そこには人間とは異なる種族なようだった。だからと言って、僕は手を抜くはずもない。
「他の誰かに被害を出すわけにはいかないんだ!」僕は次の瞬間左頬に手で触れた。
その瞬間意識があらぬ方向へと飛ばされる。
黄色い歓声が聞こえる。その中には罵倒を投げ込んでくる声もする。僕は檻の前にいて、檻の中にはライオンに似た鼠色の生き物が檻の側面を周っている。
そして、どこからともなく陽気な音楽が流れ始めた。
次の瞬間パチンッ!と音が鳴った瞬間に光が完全に消え失せ、一筋の光が何もないところに当てられ、そこに紙吹雪が吹き荒れ、しばらくして紙吹雪が弾け、そこに人影があった。
「お久しぶりです...。レイドさん...」そこには道化師が頭を下げて立っていた。
「僕に道化師の力を渡してくれ...」僕は頭を下げた。その瞬間道化師は仮面の下で微笑む。
「...レイドさん...あなたは仲間を忘れる覚悟はありますか...?仮面の力は絶大です...しかし、それは代償があります...それはレイドさんがよく知っているでしょう...」道化師の言葉で僕はいつの間にか左頬に現れた道化師の仮面に触れる。
「分かっているつもりだ。でも、ここでこの虫を排除しなきゃ元も子もない...僕に力をくれ」僕は決意の眼差して言い、一歩前に踏み出した。
「分かりました...では...」道化師は僕の言葉を汲み取り、指を胸辺りまで上げ、指を鳴らした。その瞬間、紙吹雪が僕に纏わりつき、煩わしくなる。
その次に誰かの笑い声が耳元を囁く。僕はその声を気味悪く思い、耳を塞ぐがまるで声が薄れることはなく、歯ぎしりをした。
その瞬間、道化師はその場から消え、僕も意識が元の場所に戻る。
「これが最後で...終わらせてくれ...ださい...!」僕は希望を手に力を込め、虫を殴った。その瞬間虫の半分が球状に消え、残るは足が多く存在する場所だった。
「これなら...行け...ッ」僕は抉れた虫へと落ちて行く中、激痛が全身に伝わった。
そこで僕は疑問を抱いていた。
「前はこん...なに短く...なかっただろ...!動けよ!」僕は傷む体に無理やり言い聞かせ身体を空中で捩り、虫の残りの全てを動かそうにも動かせない右手を当て、消し飛ばし、塵一つとして無くなった。
しかし、そこで気づく。僕の頭が向かっているところは、虫によって食われた暗闇に向かっていることに。虫によって食われた暗黒は物質を食らい、消し去る。
それがわかっている。このままでは僕は消えてしまう。仲間と再会するためには消えることだけは避けたい。
しかし、身体がもう動かしようがない。
「ここまで...なのか?」僕は諦めの言葉を吐いた途端思い出す。
「そうだ...指を鳴らせば...って指動かないだろ...!地面に向けて、視線を集中して...」僕はそう言っているうちに浮遊感が無くなり、地面に身体が触れる。
「ここで一休みするか...」僕は呟いて意識がそこからなくなった。
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