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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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幼虫

遅れました!

269話




 「世界のために命を捨てられるかって?それは僕自身だけだと覚悟が決まらないね」ルルメアは僕の

『お前は世界のためなら何でもできるか?自分を犠牲にしてでも...』という問いに覚悟は決まらないと言った。


「そうか。じゃあ、ここでお別れだ...。僕は僕の中の世界、”仲間”を救うため、死は無駄ではなかったと、仲間に伝えるために、虫を退治しに行くとする...」僕はルルメアと距離を取り、手を前に突き出し、広げた。


その瞬間目の前に扉が現れ、開かれる。中は光が満ちていて、様子はうかがえない。

「じゃあ、ね」ルルメアが寂しそうな目をした。


しかし、僕は声など掛けず足を踏み出した。




 「やぁ、レイド」扉の先にはラナが棒立ちでこちらを向いていた。僕は一度放棄した虫退治をもう一度やろうと、口を開こうとした。その瞬間ラナが口を開いた。


「君にはXXがあるかい?」ラナの声がかすれていた。


そしていつになく弱々しい。ラナは僕の顔色を窺ってからもう一度口を開く。


「君には欲望があるかい?」ラナの声はハッキリとしていた。まるで耳元でささやかれたような感覚が僕を襲った。


「いや、人間には、生き物には必ずと言っていいほど欲望がある。欲望は時に殺し、奪い、殺され、奪われるものでもある。今君がやろうとしていることは奪う行為だよ。それでもやる気かい?」ラナの言葉が聞こえると同時に周囲から小さな声が聞こえた。


「臆病者...臆病者が来たぞ...愚かな人間だ...帰って来なければ...死ぬだけだ...」一人が言っているようだが、それは100人を優に超えるくらい声が重なって、眩暈が起こる。


頭が揺れているかのような視界のふらつき、失った足の安定性が、眩暈を更に騒ぎ立てる。


 まるで一時間をその場で過ごしたような感覚が終わると同時にラナが口を開く。


「この世はもう、終わりを迎えるよ...」ラナが一言言った瞬間にラナの目が肥大化し、爆発した。それを引き金に口や、鼻、目、耳、尻から僕よりも圧倒的に大きい虫が現れた。


 虫はダンゴムシの様に皮膚が固い質で、足が多くついている。しかし、石の下で見つけるようなダンゴムシではなく、足も腹の部分も目も、すべてが装甲で囲まれたようなものだった。


「ここは図書館だ!どうせ出られないだろ!」僕が怯えながら放った言葉で虫が、図書館から消えた。僕はまさか...とその場でもう一度扉を開こうとするが、扉は現れなかった。


「どうすればいいんだよ!」僕は自分の無力感を殴り飛ばすように床を殴った。その瞬間に図書館中から文字が宙に浮いて、床に張り付いていく。



『これを見ているときには僕は死んでいる。そして、君に言わなければならないことがある。それはこの虫は僕が生み出したんだ。


この虫は生き物の欲望を食らうことで増幅していく、君はもうわかっているだろう、僕を素材とした虫こそが”ハエの王”。


今はまだ幼虫と同じ感じだよ。でも、一時間すれば蛹となり、その更に一時間後にはハエの王が君臨することとなるよ』ラナの言葉のようなもので僕は更に絶望する。



それは、虫が世界に放たれたからだ。それから床を眺めていると、更に文字が動き、もう一分が表示された。


『これが最後に君にできることだよ。虫は幼虫の間に地面を這いまわって全てを食い、蛹になる。その後、ハエとなると残った世界を食い尽くす暴食だよ。


...最後にこの文字を自分の手のひらに擦り込むように消してみてよ』僕は文字を読んだ後に文字を手のひらで詰る様に消し、目を本棚に向けた。


その瞬間に目の前に扉が現れた。


「ここで...止まる訳にはいかないだろ...ハルはもういないが、意志を継がせてもらう」僕は左肩を右手で掴み、ドアを身体で押して開けた。




 現界に戻るとわかりやすく砂埃が舞っていて、山が動いていた。それだけで、それが虫なのだとわかった。僕は鱗を鎖の様に編み、虫に投げ込み、手を勢いよく引いた。


その瞬間僕は虫に向かって飛んでいく。その拍子に鎖を消した。


 虫の上に付くと、衝撃の事実に気づく。虫の通った道は全て境目のない黒になっていて、そこから風が溢れてきていた。


「一度、止まってくれ!」僕は言葉を放ちながら右拳を掲げ、振り下ろし、虫の装甲に当たり、冷たく乾いた音が弾けた。その瞬間、虫は一度動きを止めた。


「よし、これで...」僕は言葉を吐きながら手を虫の装甲に当て、氷結の力を出し、虫の装甲に霜が出来ていく。


ここで動きを止められれば、虫の進行を止め、僕のありったけの力で倒せる...。


 そう思って氷結を進めるが、虫は唐突に動き出した。しかし、動きは前進するものではなく、装甲がそれぞれ広がり、僕は霜の着いた装甲によって足を滑らせ、地面へと落ちて行く。


その時に僕は気付いた。目の前の虫は丸まっていて、守りの構えだった。


 「一応、止めれたには違いないが、あれだと、攻撃できない...」僕は足を地面に向け、落ちた。僕はそれから立ち尽くす。攻撃の通らない装甲をどうやって砕くか、考えていた。


その中で思いついたのが...

「道化師の力を使えば...」僕は左の頬に触れた。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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