融合
262話
「クソッ!飛べねぇ!あのメスが!」ヤーズと戦い、羽を負傷した黒ずくめのドラゴンが思うように動けない体に文句を言う。周辺のギャラリーはいなくなっていて、寂しげな場所へと早変わりしていた。
「恥かかせやがって!今に見てろ...今度見かけたときがお前の最後だ...」黒ずくめのドラゴンは空に顔を向けて吠えた。
「人間はか弱い生き物だよ。悪いがそれはどう言おうと曲げられぬ事実。
そして、ソリドスの意志を継いだのが、お前さんだ」白龍のホライズドンは鼻息を私に吐いてきた。流石図体が大きいだけ肺活量がすさまじい。
「そ、う...ですか」私は少し言葉に詰まりつつも微笑んだ。
「まぁそんな警戒するな。ここに居ればお前さんは無事に過ごすことができる。...して、なぜここに来た?」ホライズドンは微笑みながら巨体で私を囲おうとする。
「成り行きで...」私は後頭部を少し掻きながら言った。
「うむ...それは...我々が現れたことと関係があるな?」ホライズドンは私の目の前で息を強く吐いた。私一人分の大きさ位の鱗が煌めいている。
「それは、よくわからないですね」私は呆けた顔になる。それを見たホライズドンは空を見えぬ洞穴の天井を見上げて首を伸ばす。
「我らは架空の生き物である。故に、本来この世界では存在さえ疑われる存在だった。しかし、何かの拍子でこの世界に我らが現れた...。それは他の種族もそのようだ」ホライズドンは長い鬣を揺らした。
「いいか?お前さんら人間の目的はこの世を正常に戻すことだ。我は消え、人間にこの世界は返される世界は正常でないといなければ、壊される」ホライズドンは私にゆっくり振り返り、首を回す。
「...私にはそんな使命...重いよ...」私は普段の口ぶりで下を向いた。
その瞬間、心に火が点る。それは意志というものではない。そのままの意味だった。
「これは...ソリドスの...」ホライズドンは目を大きく開けて驚いていた。
ここは...暗い世界...ソリドスとホエレルドンのいる場所...。
「「出せ...!ここを出せぇ!」」いつもの口調より乱暴になり、本来の口調で二匹のドラゴンが叫んだ。
そして、よく見ると、ドラゴンは融合し、太い身体に黄色と赤の鬣が短くなり、狸のような尻尾で先が細くなっている尻尾に熱量が溢れる。
それと同時に私の手から熱量がなくなった。
「お前のせいで、おれたちは繋がった!人間の皮を被った悪魔が!」ドラゴンらしからぬ言葉で融合したドラゴンが叫び続ける。
「どうして...?」私はなぜ二匹のドラゴンが合わさったのかわからなかった。
「そりゃ、お前のせいだ」「お前が生まれてきたことが罪だ」「死んじまえ悪魔」「消えろ」「死ね死ね死ね死ね」
「違う...これは私の記憶じゃない...!ソリドスとホエレルドンが聞かせてくる幻聴...」私は自分に言い聞かせる。
「―――――思い出せ」
―――思い出せ思い出せ思い出せ―――
「あああああああああああああああああ!」ヤーズは脳内に響く声に叫び声をあげて対処する。
しかし、声は治まらずヤーズは徐々に涙が溢れ出て来る。口を大きく開け、喉の辺りにしわを寄せ、歯ぎしりをし、喉を掻き切るように私は掻きむしる。
やがて、喉辺りから血が垂れてきた。じわじわと溢れてくる血にヤーズは疑問を感じてはいない。
「私は何も知らない...黙って従っていればいいのよ...お前ら」ヤーズは今まで使ったことのない相手への呼びかけを使った。
「人間の分際で、指図するな!」ドラゴンは叫ぶと同時に尻尾に纏った熱気が私に飛んでくる。私は血みどろになった手でその尻尾を受ける形にした。
「五月蠅い」私が言葉を放った瞬間、髪が黄色い髪に白い髪が混ざっていく。その次にドラゴンの尻尾が私の手に当たり、私は特に力を入れず、受け止め、血がドラゴンに付く。
その瞬間ドラゴンの尻尾に付いた私の血の手形が赤く光りだし、ドラゴンが呻き声を出しだす。
「ググ...」
「従え...」私の短い言葉でドラゴンは地面にひれ伏した。
「お前さん...その頭どうした...たった一瞬で...」ホライズドンが驚く声を上げる。私は俯いたまま首元を触っていた。
「ここには用なんかない。ここから出させてもらうわ」冷徹な声で私は言い、ドラゴン化する。そのドラゴンの姿は暗い空間で見た、狸のようなドラゴンで、羽は身体と同じくらいの大きさだ。次の瞬間私は洞穴の天井に穴を開けて、外へと飛び立った。
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