占拠された村
260話
「じゃあ、まずは近隣の占拠された村を取り返そうか。村は基本地図には表記されない事が多い。だからこそ、占拠されやすいんだ」男は地図を机に広げながら発言し続ける。
「今回、取り戻す町は”キキヴァ”だよ。”キキヴォデラ”によって支配されている村らしいね。肝心のキキヴォデラは村のことはどうでもいいみたいだね」
「そんなことよりも、この村はスライムによって占拠されたらしいんだ。物理攻撃特化の僕らには何の役に立たないから君に頼むよ」男は一方的に発言した。
「僕も魔法を使えれるわけじゃないんだが...」僕は男への愚痴をぼやきながら歩いていた。既にぼやけてキキヴァという村は平原であったため見えていた。
僕はそこに向かっている。にしては僕の荷物はなく、完全にこれから異種族を殺しに行け、と言われているようだった。
村の着く寸前のことだった。背後からの気配に僕は振り向く。そこにはスライムが僕を包み込むほど大きく広がって、今まさに僕を襲ってきていた。僕は即座にスライムを凍結させ、拳で壊した。
「ここはもうスライムの領土になっているのか?」周辺には動物すらも見えなくなっていた。
その動物も今ではモンスターになっているみたいだ。恐らくモンスター同士も襲うのだろう。
「スライムは小さいスライムと合わさって大きくなるし、村に入ってスライムを一塊にした後凍らして壊したほうが、一網打尽にできるだろう...。そうと決まれば、行動しよう」僕は呟きながら地面を蹴った。
同時に地面からスライムが僕を止めるように立ちふさがってきた。僕はすぐさま氷結させ、拳で壊して、村へと突き進んでいく。
「どうしても村に行かせたくないのか?」僕は上を見上げながら立ち止まった。僕の視線の先にはスライムが辺り一帯を覆い隠すほど大きく平べったく広がり、既にそのスライムは僕の退路を断つように倒れてきていた。僕は鱗を出し自分の周囲に球状に並べた。
その直後。水に揉まれるような衝撃が立て続けに起こる。
外からジュウ...と何かが溶けるような音が起こりだす。スライムが僕を消化しようとしているのだろう。スライムに胃があるにか知らないが、今突き抜けばスライムは死に至る?可能性はなくはないが、スライムは周りにいる生き物を襲う習性がある。
スライムに命や知性があるのか、興味深いものだ。
でも、今は気にしても意味がない。
「っと、そろそろスライムの身体全体に僕の鱗を消化したころ合いかな?じゃあ、弾けろ!」僕が合図の様に叫んだ。その瞬間、爆発音が何度も曇ったように弾けた。
爆発が止むと、僕は鱗を全て消した。するとそこにはスライムの欠片が落ちていて、未だに微動していた。恐らく、この快晴でスライムは干からびて死ぬだろう、と僕はその場を後にした。
「た、倒したの?」男が驚いた顔で立っていた。その男の前には銃を腰にしまった女が頬を赤らめながらも、僕の成し得たことに驚きを隠せずにいた。僕のいない間に何かしたのだろうか。知らないわけではないが...この話は止めておこう。
「ああ。倒した。村も無事だ。人はいなかったが」僕は洞窟の外を見ながら言った。
「そうか。ご苦労だ犯罪者レイド」女は何もなかったようにいつも通り強気に言った。
「で?」
「で?って...」僕の一文字の言葉で男が困惑する。そして、何かを思い出したように言葉を次につなげる。
「そうだね。次のか...。行ったり来たりで申し訳ないけど、この大陸最北の町に行ってほしい。そこは吸血鬼族が住む場所なんだ。ただ、一つ気を付けてほしい。吸血鬼は人や動物、同族、モンスターから得た血を全て”自分のチカラ”に”変える”ことができる。それに血を吸った生き物の考える”主導権を一定時間奪う”こともできるんだ」男は指を一本立て、僕に言い聞かせるようにゆっくりと、重要な部分を強調していった。
「分かった。直ぐに終わらせる」僕は短く発言、後に洞窟から出て、足を曲げ、北に向かって跳んだ。
「嘗ては罪びとを殺める人間が今では人間を殺めた犯罪者に助けを乞うとは滑稽なものだな...」洞窟に入ってきながらフードで顔を隠した人間が男と女に向かって言った。その瞬間、女は銃口をフードの人間に向ける。
「おっと...やめてほしいね...もうあまりいない人間族だぞ?ここで自分の祖先のしてきたことを無駄にして、次は自らの手を汚すのか?」フードの男は両手を低めに上げて、男女を煽る。
「さ、親睦会はここまでだ。君らは本当に人間か?」フードの男が女と同じような銃を持って銃口を男女二人に二丁持ちで向けた。
「その動揺の仕方は違うみたいだね」二つの銃弾が洞窟内に響いた。
「僕の名前はルルメア。メアルの意志を継し男だ。そして、ルルハの罪を背負いし者だ」ルルメアと名乗った男がフードを取った。
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