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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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泣いた青鬼

楽しんで読んでください!

25話




僕達は民家を壊していく青鬼を止める術を分かっていない。どうすれば勝てるかなんて今は考えなくていい。そう思いつつも体に脱力感が流れる。僕は段々短刀を振れなくなってきていた。

「なんで!勝てないんだ!何度も斬っているのに!」ラフノの嘆く声が聞こえる。

「無理だ」ハルはその場に座り込んでしまっていた。

「もう、力が....入ら....」ヤーズはそう言いながら倒れた。仲間が全て倒されるところを見ているわけにはいかない。そこで僕は思い出した。僕の能力で殺してしまったモンスターも僕の中にいるのではないか?僕はそう疑問に思って目を瞑り、何も無い世界に誘われる。

「やっぱり...」僕は意図せず声を零した。僕の見つめる先には赤鬼がいた。しかし、どこか違う。体が元より小さかったのだ。赤鬼に声をかけようとすると、赤鬼から鼻を啜る音が聞こえた。そして、雫の落ちる音。赤鬼は蹲って泣いていた。

「どうして?ボクはタダ子供達と遊びたかったダケなのに....。他の鬼のせいでボクはずっと怖がられる....。どうすればいい?“ 青鬼”くん」赤鬼の拍子抜けの言葉。僕は赤鬼の肩に手を置き、口を開く。

「他の誰かにばっか頼ったらダメだ。ただ....」僕の言葉の途中に赤鬼が叫ぶ。

「ボクの何を知っているって言うんだよ!昔からボクの相談相手は青鬼くんだけだった!」赤鬼の叫ぶ声が終わると僕は先程の言葉の続きを言い出す。

「ただ、お前はお前らしく、いつも通り、いればいいんじゃないか?その方が青鬼くんも手助けしやすいかもしれないし、自分の気づけなかったことが新しく見えてくるかもしれない。今ならまだ間に合う。青鬼くんを救ってあげよう。今度は赤鬼、次はお前が青鬼を助けるんだよ」僕は赤鬼をわかり切ったような単語を並べて言った。僕の言葉に一瞬口を噤み、口を再度開く。

「分かった。次は僕が青鬼くん、君を助けるために...」赤鬼は胸に手を当てながら言った。胸から手を離し、続けて赤鬼はしゃべる

「お願い。ボクの力で青鬼くんを助けて....」赤鬼は僕に向き直って言った。その言葉に僕は一言言う。

「任せろ」僕の一言に赤鬼が微笑んだ。そんな気がした。

目を覚ます。世界は崩れかけている。赤鬼の力はどんな物なのか知らない。僕は青鬼に向けて赤鬼の力を解放した。


金色に輝く小麦畑を2つの影が横切る。

「はははっ!」小さな子のような甲高い笑い声。

「待ってよー!」ひとつの影を捕まえようとしているのは青い肌の鬼。そこに2つの影を呼ぶ声がする。

「こら!危ないから戻ってきなさい!ご飯も出来てるんだから!」赤鬼と青鬼の親だろうか?赤鬼と青鬼は大人しく呼ばれた声の方向に行く。

「ほら、今日は豪華なご飯なんだから」赤鬼と青鬼の親は優しくそう言って赤鬼と青鬼の背中を押して、家に誘う。

夜には。赤鬼と青鬼は布団に潜っている。

「クククッ....明日は何する?」赤鬼は笑いながら言った。

「花冠作りとか....」青鬼の発した言葉に赤鬼はにこやかに笑った。

「いいよ!やろうな!」赤鬼は笑ったまんま言った。


赤鬼の力を使うと、過去の記憶が脳内に流れた。それは青鬼も同様だ。破壊行動を続けていた青鬼の動きが止まる。その時、みんなの攻撃も止んでいた。


「いいなぁ。あそこの村は」赤鬼が木の影に隠れて言った。

木の焼ける音に悲鳴。多くの鬼が人々を捕まえては殺す。そして、人々は鬼に支配されるようになった。

ボクは人と仲良くしたいのに....。

「どうすればいい?」赤鬼は初めて青鬼に相談した。

「わかった!僕が人を殺すように見せかけるから、君はそこを助ければいい」青鬼は人差し指を立てて言った。

「殺してやろうか!人間!」青鬼は人の前に立って、牙を剥き出しにして言った。そこに赤鬼が現れる。

「やめろー!」赤鬼はそう言って青鬼を殴ろうとしたが、そこに赤鬼と青鬼の親が現れる。

「なにしてるの!もう!喧嘩しちゃだめでしょ!」親はそう言ってシワシワになった細い腕を赤鬼と青鬼の胸に手を当てて押した。

「なんだよ!そうやって!最終的にはぼく達を食べる気だったんだ!」小さな子供にそう言われ赤鬼は背を向けて歩いていった。

突如、鬼の支配は終わった。これは好機だと感じて赤鬼は町に降りようとした。その時、親鬼が倒れたのだ。

「ちゃんと、生きるのよ....」赤鬼と青鬼の親は息を引き取った。しかし突如黒い瘴気が親を襲った。親鬼の肌は黒く染まり、人格が代わり、歩き出す。赤鬼と青鬼は黒く染まった親鬼を止めることは出来ず棒立ちしていた。それから記憶はない。


青鬼は止まったまんま動かなかったが、急に動き出した。そして、青鬼の頬に伝る雫を町の人は見ていた。そして、青鬼が空を見上げた。

「全て思い出した。ぼくはもう前に進めないよ。赤鬼くん....。ぼくらはきっと無意識に黒鬼を親だと勘違いしていたんだ」青鬼はそう言って、僕を見る。

「ぼくを殺してください。もう。みんなに酷いことをするのは嫌なんです」青鬼の言葉に覇気が感じられない。

「赤鬼と会いたいか?会いたいなら僕を憎んで、渾身の一撃を僕に打ち込んでくれ。そうすればお前は自由だ。また小麦畑で追いかけっこでもしてこい」僕がそう言うと青鬼は頷いて僕を殴る。

何も無い空間に小麦畑が広がる。

「「ありがとう」」赤鬼と青鬼の笑顔が脳裏にこべりついて離れない。最後に放った言葉はあまりにも僕には重い物であった。

目が覚めると青鬼は倒れていて、次の瞬間衝撃が走る。黒い稲妻が地面に落ちる。そう。黒鬼、改め、鬼神の登場だ。

「さぁ、どうしてくれようか?」鬼神はそう言って腕を上げる。鬼神の容姿は大きくなく、小さな子供の形をしていて、頭からは漆黒の角が生えていた。

いつも読んでくれてありがとうございます!

初めて読んでくれた人も是非今後とも呼んでくれると嬉しいです!

どうでしたか?

面白かったのなら良かったです!

次回も読んでくれたら嬉しいです!

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