それぞれの道②
256話
俺が行くべき場所は既に決まっていた。俺の中に眠る二つの存在。
それは天使と悪魔だ。元々俺には天使の存在が眠っていて、今では亡くなったヴァイルの悪魔が俺に住み着いている。何度もピンチを切り抜けたからこの二つの存在を俺は否定する気もない。でもケジメを着けなければならない。
俺は歩きながら目を閉じた。その瞬間、意識は遠のいた。
目を開くとそこには、いがみ合う姿が見えた。
「あんたのせいで別れたのですよ!」
「それはないな...こいつはそれだけで別れるような意思は持ってねぇ...」前者が天使で後者が悪魔だ。それぞれ、怒りを露わにしたり、穏やかであったりする。
そこに俺は口をはさむ。
「どちらの所為でもないし、それに、旅は終わったも同然だし...」
「待て。その先の言葉は見当がつく...。お前。オレを返す気だな?」悪魔が俺の言葉を遮って、不敵な笑みを浮かべた。俺は微笑み返してから口を開く。
「お前だけじゃない。そこの、元から俺の中にいた天使も元の場所に帰ってもらうつもりだ」俺は悪魔に目線を向けた後に、天使に目を向けた。
すると天使がわかりやすく顔をゆがめた。
「な!なんでですか!?」声を荒げる様子を見ると予想していなかった事だったからだろう。
「それはもう必要がないからだ」俺は冷静にかつ、丁寧に端的に教えた。
「必要がない...」天使は落胆して両膝を地面にぶつけた後、両手の平を地面にヒタッ...と着けた。それを悪魔は指をさしてケラケラと笑う。
「そうだ。確かに助かってたが、今は必要がないからな」俺は多少なり感じる罪悪感に似た感情を持つ。
「でも、先に返すのはお前だ」俺は口を動かしながら同時に指を悪魔に向けた。
「そうか...そうだな。そうでないと人間の目線から変わっていることになるな...」悪魔は一瞬動揺して動きが停まり、微笑んだ。
「で?どうやってオレを返すつもりだ...?」悪魔は俺に向かって気味の悪い微笑みを返して来た。
「今回の旅はそれを得るための旅だ」俺は目標を堂々と言った。
仲間の様に並列で飛べるのはドラゴンの姿だからであると思わせる。空を仰ぎながら私は考え事をしていた。
これからどうしよう。この変わった世界を飛び回ることには変わりないけど、空を飛んで地上を見てるだけじゃつまらない。雲の上に行ったことはある。することがない。だから、どうするか迷ってる。
私が考え事をしていると、下から熱量が弾け、腹が温まる。ドラゴンの皮膚で暖かいという事はそれほど地面は...。
急旋回し、辺り一帯を円を描く様に飛び回る。地面を向くとそこは炎で焼きただれていた。何もない地面を自分が紛れている群れのドラゴンが焼き払ったとは考えにくいが、焦げ臭いにおいがドラゴンの咆哮を呼び覚ました。
「この鼻がねじ曲がり様なにおいはなんだ...!」ドラゴン化しているお陰か、ドラゴンの言葉を理解できた。人間のような知性持ちで少し安心した。鳴き声で生きているわけではないみたいだった。
改めて下を見ると、地面は焼きただれているだけではなく、図書館に行くまでにも見たことのない種族が立っていた。
「巨人族!人間を殺すのはいいが、火を使うな!」群れのドラゴンの一匹が声を上げた。
しかし、巨人族はドラゴンの言葉は分からず、よくわからない言語を放った。まるでゴブリンの様だった。
「伝わらねぇか...。おい!そこの...見慣れない同胞よ!彼の者らに我らの力を見せてやれ!」先程から群れを指揮しているようなドラゴンから私に指令を出してきた。
「わ、私が...?」私は咄嗟の反応が出来ず、挙動が不審になる。
「そうだ。どこから紛れ込んだか知らないが、ここに居させてやっているんだ!この後も行動を共にしたいのなら力を、誇りを示せ...!」ドラゴンの指令からの言葉で群れが私の背後に押し寄せてくる。
ここで断るのは愚策ね...。
「分かりました。では...」私は続きの言葉は出さず、地面に降り立つ。
相変わらず、私はドラゴンの姿のままで、巨人族からはまるで人間の子供と犬というようなサイズ間で、青年巨人は両手でドラゴンを持ち上げられそうな大きさだ。
「XXXXXXX!」巨人が何かをほざいている。しかし、言葉がわからない以上、精神的ダメージが全くない。
次の瞬間私の口から炎が辺り一帯にまき散らす。その炎に巨人は抱かれ、皮膚が溶け、燃えていく。腐敗したようで、焦げ臭いにおいが鼻に突き刺さる。
私はそれさえもかき消すように更に炎の火力を高めながら浮いて行く。
巨人族が完全に焦げた後にも私は燃やし続け、炎を切ったときには地面は溶岩だまりになりかけていた。そこに声が掛けられる。
「ドラゴンは力の象徴だ...。お前を正式に迎え入れよう」ドラゴンの指令がそう言った瞬間に群れのドラゴンが咆哮を上げた。これがドラゴン式の歓迎だとわかった。
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