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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
254/288

腐食のオーク②

253話




 「完全に虫に浸食されている...。どんな動きをするかわかったものじゃない...」ラフノが歯ぎしりをして苦痛を言葉に出した。


「分かってるよ...!体力が結構消費するから嫌なんだけど!」ヤーズはそう言いながら右手を前に突き出した。その瞬間に口が破損したオークがヤーズに向かって走り出した。


その間にヤーズの右の手のひらに雷と炎が集まりだす。


そのまま二つの属性が渦を巻き、オークを一直線にプラズマへと変化した長矢がレーザーの様に放たれた。


 プラズマの速さは放った直後、不可視化を促し、オークが気を緩めずヤーズに突き進んできた結果、オークの頭でプラズマが破裂した。


煙が赤と黄色に染まり、オークの状態がわかりにくくなる。

「ふぅ...」ヤーズの口から息が吐かれた。


 その直後、断末魔が聞こえた。

「ギヤォォォォォ!!!」耳を突き刺すような甲高くも痛い叫び声が襲ってきた。僕は即座にオークに目を向ける。眩暈は全く来なくなっていて、観察の集中できていた。


煙の中から細い手が現れた。その手は地面を抉りながらこちらに進んでくる。



 煙の中から徐々に出てくるオークを見ていた。


しかし、煙から出てきた者はいびつなものだった先程まで見つめていたオークではなく、その姿はまるでオークではなく、虫を巨大化したようなものだった。


 ハエの足がオークの腹や足に幾つも生えていて、オークの毛色は黒に変化し、胸辺りにハエの目が大小それぞれがついている。背には正に虫の翅と言える薄っぺらい翅が生えているが、見た感じボロボロで飛べるような気配がない。


 ハエの目が体中を移動する。そのたびに黒くなった皮膚が蠢く。



 豹変したオークを見て僕らは唖然としていた。これが虫に乗っ取られた最終的なものなのか、と錯覚するほどに衝撃的な変化だった。


「って、動け!」僕はそう言うと同時に足を曲げ、豹変オークの元へ跳び、懐に潜り込み、腰を曲げ、地を蹴りつつ右拳を豹変オークの腹に打ち付けた。


その瞬間、僕の身体は僕の右拳の勢いでバランスを崩す。それは豹変オークが僕の背後に移動していたことと関係があるだろう。


次の瞬間、豹変オークはいつの間にか元に戻った口を僕を丸々飲み込める位大きくしていた。バランスを崩した僕は勢いよく両手を大きく開いた。


その瞬間、僕を中心に辺り一帯は氷結した。僕はその隙にその場を脱する。


「突っ込み過ぎだ!」ハルがそう叫んだ突如のこと、氷の砕けた粉が空に舞い上がり、ハルが視界から消え去った。それと同時に背後から何かを砕く音が聞こえた。


バリッ...ボリッ...バキッ!


「ンンンンンッ!」豹変オークが鼻息を吐きながら口を動かしていた。初めの頃より体が大きくなっている。それに肥満体系となっている。



 「待て...何が起きた?」ラフノが目を大きく開き、剣を握る手が緩み、口が開きっぱなしとなっている。


「待って...ハルは...?」掠れた声で上擦った声でヤーズが口を抑え、言った。目が絶望に染まっていっている。


「...こ、これじゃあ、僕の魔王退治も何だったか...いや、止めよう...ここで僕も...でも、もう、だめだ...分かってる。ならせめて...ラフノとヤーズだけでも...!」僕は一人で静かに呟いた後、最後に空を見ながら叫んだ。



 次の瞬間、僕の顔半分に道化師の仮面がへばり付く。見据えるは豹変オーク。僕は見にくくなった視界など気にもせず、全身を駆け巡る痛み。


それさえも、全て豹変オークの所為にする。僕は棒立ちとなり、仮面が微笑む。僕は左手の中指と親指を強くくっつけ、中指を親指の下あたりに当て、音を鳴らした。


その瞬間、僕の身体は一瞬で消え、目の前には豹変オークがいる。僕は親指で中指を押さえ、親指を離す。


その瞬間豹変オークの両足と顔、手以外は消え去った。




 全身の痛みが僕を襲っていた。その時、もうすでにそこはラナの図書館だった。僕は床に転がったまま口を開く。


「ハルは...生きかえら...ないのか...?」痛みに耐えながら言った言葉は空しくなる。


「無理だよ。ハルは死んでいないから」ラナは真顔で本をまた一冊取り出した。


「じゃあまだ...」ラフノが希望を語ろうとした瞬間にラナが口をはさむ。


「ハルは死んではない。ハルは消えた。消えれば僕は何もできない」ラナは僕らを突き放すように言った。


「どうして簡単に言えるの?今まで虫も、魔王も倒してきたのに!」ヤーズが声を荒げた。言葉を放った後も息は荒くなっている。ヤーズは続けて言葉を放つ。


「そんな事なら、ハルを助ける気がないなら私は虫退治何てしない!」ヤーズはラナに向かって非協力的な言葉を放った。その瞬間だった。


「じゃあ、どうすればいいのさ!」ラナが下を向いて声を荒げた。


「ないものを何もないところから作れと言ってるようなものなんだよ!?例え、ハルを作れたとしてもそのハルは意識も記憶も肉体も精神も関係ないただの人だ!さっきから探してたよ!でもないんだハルの本が!消えたらもう何もできようがないよ!」ラナは初めて人らしい感情を露わにした気がした。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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