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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
251/288

司書ラナの一つの思い出②

250話




 「僕はお前と物語を作っていきたい!僕のしたいことのために絵を描いてくれるか?」僕は少年と目を合わせて言った。すると、少年は微笑みながら口を開く。


「任せてよ!この”シスト”しっかりと絵を描かせてもらう!」シストというのは少年の名前だろう。この一週間名前も知らず物語を作っていたのかと思うと、滑稽な気もしなくもない。


でも僕はその時安堵の息を短く吐いて、微笑を浮かべた。


「ありがとう!また明日!」僕はそう言って手を上げて、さよならを告げ、家とは逆の方に歩いていく。それは家に帰れないと自覚していたからだろう。


僕はその日、外で夜を過ごすことにした。幸い、冬ではないため、夜もそこまで寒くはなかった。



 朝になってから僕は落ち葉に塗れた体を起こし、体中に付いた落ち葉を払った。


「今日から僕はシストと物語を作る...現実味がないや!」僕は一人、満面の笑みを顔に侍らせた。



 洞窟付近まで来て、気持ちが抑えられなくなっていた。


しかし、その気持ちは一瞬にして恐怖に染まる。


 僕は今何を見ているのだろうか。僕の目線の先には父が長い黒髪を引っ張る姿があった。髪の先には人が付いている。その人は、シストだった。


痛がるシストの目が僕の胸を締め付ける。僕は自然と胸辺りをグッと掴んで、自然と足に力が入らなくなる。父に向ける怒りが頂点に達したとき、父が口を開く。


「これがお前の障害物だろう?こんな”影”何かといるからお前はだめになったんだ!こんな奴、殺してしまえばお前はまた計算正確率が上がるだろ!」父はそう言いながらシストの髪を引っ張る一方の手を拳にして、振り上げた。


その瞬間。僕の視界に紙が溢れかえり、世界はまるで僕を中心に動いているかのように遅くなる。



 その時、僕の背後から声がした。


「あんた。あの人間を助けたいのかい?」心が落ち着けるような声だった。僕は声のした方へと目を向ける。するとそこには僕よりも少し身長の高い女性で、滑らかな唇と真っ白な頬になぜか神々しささえ、感じられた。


「助けたい...助けたい...か...。僕は今そんな事をしたいわけじゃないよ...僕は憎いんだ。父が...」僕は地面の土を指で抉る。


「じゃあ、この司書のチカラを...ん?」

「要らない。僕はそんな力に頼りたいわけじゃないよ」女性が口をはさんで、手を差し伸べてくるが、僕はその手を跳ね除け、言いながら立ち上がる。


「だから、邪魔なんだよ。これは、僕の問題だ」僕はそう言うと同時に踏み出した。



 砂煙が微量起こり、僕の身体は父の元へと向かって行く。


「シストから手を離せよ!」僕はまた父に向かって乱暴な言葉遣いをした。それが父を完全に怒らせる引き金となった。


「そうか!それがお前の答えか!ならやっぱり殺すしかないなぁ!」父はそう言って右手を背にまわし、包丁を逆手に持って、シストの顔へと包丁が刺さりかけた瞬間僕は叫んだ。


「待ってくれ!」僕の言葉で父が踏み止まる。そして、父は僕を睨んでくる。


「どうした?言うことを聞く気になったか?」父はまるで正気を失ったかのように不敵な笑みを見せた。その瞬間、世界は再び遅くなった。



 「これは?」シストが引っ張られる髪を自分の手で引っ張り返しながら言った。そこで僕はゆっくり進む世界でシストと対面する。


「僕はもう、お前とは会えないよ。だからさ、後は一人でまた絵を始めなよ...」僕は言葉を言い放つと、シストに背を向け、空から降って来る紙によって隠される。


「待っ...!」シストは去っていく僕の姿に片手で叫んだ。しかし、その時にはもう世界は元に戻っていて、手には色んな色で汚れ、傷んだ筆がシストの手に握られていた。



 「じゃあ、行こうか。司書の後継人」女性が微笑を浮かべて言った。僕はその言葉に頷くだけだった。



 それでいつの間にか僕は司書になって、この図書館にいる――――この世界が終わる最後まで。





 「確かに信じられないな...作り話って言う感じしかしない...でも、真実、なんだろ?」僕は人型の仮面に向けて言った。すると、人型の仮面は一度俯く。


「作り話。貴様はそう思うか?」人型の仮面は僕に問いをぶつけてきた。


「実際に見たわけでもないし、信じがたいっているのが普通だろ?」僕は正論をぶつける。


その僕の言葉に犬の仮面が口を開く。

「あまりここで疑うと後で痛い目見るぞ...」犬の仮面がそう言った直後のことだった。


 埃の世界は朝日の様なものが上がると同時にあらゆるところから塔が地面から生えてきた。そのたびに埃が空に舞い、目が開けれなくなる。


腕で目を塞ぎ、風がなくなると同時に目を開けると、そこにはボロボロの本に書かれていた様な、恐らくハイレアメタルという鉄に似たものが地面にまで使われ、辺り一帯は一瞬にして塔が並び立つ世界へと早変わりした。


「これが旧世界の一番進歩した時点の街並みだ。と、この本にはあるな」人型の仮面は顎辺りを触りながら言った。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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