旧世界
248話
ラナに”空との契約”という物語に誘われた後。僕らは鳥居を見かけた。
その前にいた仮面を倒し、僕の攻撃によって壊れた鳥居を潜り、神社の目の前に行き、神社の戸を開こうとした瞬間、空に異変が生じたのだ。
空には人の顔が浮かび上がっていて、光が射し神々しくなっていた。次の瞬間、その空から声がしたのだ。
「契約を破棄しにきたか神を恐れぬ人間...しかし、ただで破棄させる訳にはいかぬ」空の声は傲慢に口を動かした。
「何が望みだ?」僕は曇りなき眼で空を見つめ、言った。すると、空はニッコリと微笑み、口を開く。
「お前の身体を引き換えに契約を破棄してやろう」空は僕が思っているよりも、安易な要求だった。だから僕は微笑んだ。
「良いだろう」
「レイド!なんでそんな契約をした!?」ハルの叫びに近い声が聞こえていた。
そこで僕は理解する。さっきまでも物語は僕の身体が引き剥がすための...行程だったんだ。
その瞬間、僕の身体は空に打ち上げられ、最後の最後に涙を流すハル、ラフノ、そしてヤーズがいた。
「ここはどこか?分かる訳もないか。誰にも問えないし、ここがどこかは自分で確認していくしかないみたいだ」僕は頭を控えめに掻きながら口を動かしていた。
口を動かすと同時に右脚が一歩踏み出していた。
歩きながら辺りを見渡すが、何の変わり映えの無い風景が続いているだけで、他には何も見えない。風景は埃が集まったような、曖昧な地面で見たくもない灰色だった。
「これでヤーズは元に戻っただろう。僕はもうここをさ迷い歩くだけでいいのか?別に僕の問いかけを聞いてる人なんているわけ...」僕は歩きながら一度目を閉じ、別の方向へと向いて目を開く。
そこには、真っ黒な縦長上の仮面を被っている人影が見えた。つい僕は口を開く。
「誰だ?」僕が鋭い目つきで問いかけた。
すると、黒い仮面から声が聞こえる。
「貴様も神に身体を売ったか。しかし、妙だな。神は清き巫女の身体を欲すものである。貴様の様な”忌み嫌われそうな体”がどうして神の欲を満たした...か...気になるものではあるな」仮面の声は徐々に小さくなっていき、聞き取るのも難航するようなものだった。
そしていつの間にか仮面は顎に手を付け、尻を後ろに出し、腰を曲げて、僕の顔に付くくらい近付いてきていた。
僕はそれに気づくとすぐに仰け反らせて、仮面に鋭い目つきをしたまま口を開く。
「何が言いたいか知らないが、そろそろ教えろ。お前の存在と僕の”忌み嫌われそうな体”っていうのが何なのか」僕は自分の身体について一番の興味を示した。
「そうか。何も知らずここに来た感じか?しかし、ここに来たものは大体何か知っているはずだ。清い体でもない。髪に求められる存在ではない。ではなぜここにいる?」
「おい。それは答えじゃない。教えろ。どうして僕が忌み嫌われる体なのか」僕はさらに鋭い目つきにして、言った。その瞬間風が吹き荒れた。
「あまり調子に乗るなよ新入り。我の目には貴様の容姿は人間の腐敗した体の様に見える。この場所ではあまり珍しくはないが、貴様のは何度も腐敗しているような鼻がねじ曲がりそうな臭いにおいだ」僕の身体は僕の身体の数倍以上の身体の大きさの深緑の毛色に身を包んだ。
犬の様な姿で、顔の正面には黒いだけの仮面を被っていて、喉を鳴らしている。その犬の仮面に僕は包まれる形になっていた。それでも僕は口を開く。
「じゃあ、せめてここがどういうところなのか教えてくれ」僕が諦めたように犬の仮面の尻尾に遠慮なく、もたれながら言った。すると、人型の仮面が口を開く。
「良いだろう。それぐらいはここにいる限り、知る権利がある。...ここは旧世界だ」人型の仮面は埃の様な地平線を眺めながら言った。
「この旧世界は忘れられた歴史ですらも語り継がれない場所だ。それはなぜか、元はここは人間以外の知的生命体はいない世界だからだ。...これはこの世界の歴史書だ」人型の仮面は口を動かしながらどこからともなくボロボロの本を取り出し、僕に渡してきた。
「読んでみろ。内容はまるで現実味はないがな」人型の仮面の言葉で僕は本を開き始めた。
本には信じがたい事が書かれていた。
鉄に似たハイレアメタルを多く使い、常に電気が流れる世界。不自由の無い世界。今では人間のプログラムした人間。”アンドロイド”彼らには水も食料も必要がない。
必要とするものがあるとすれば、電気とレドアウィル液という化学反応液を必要とする事だけだろう。赤い液でなんとも人間の血液に近いものらしい。
しかし、実際そんな液があるのは信じがたいのだ。人間は何時しか人間を人工的に生み出せる生命になってしまったのかもしれない。
これは喜ぶべきか、悩ましい事ではあるが、私はこう思う。”とても良い出来事”だ、と。
「どうだ。信じられないだろう。私でさえも信じがたいものだ。もしかすると、誰かの作り話かも知れないが」人型の仮面はどこか微笑んでいる気がした。
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