忘却
247話
「レイドなら大丈夫だろうが、一応レイドを探しに行こう」ハルはレイドが連れ攫われた方向歩き出し、言った。
ハルの歩く速さにヤーズとラフノが合わせて、周囲を注意深く歩きながら歩き出した。
その直後のことだった。床に衝撃と風、音が激しく鳴った。
ハルは破裂音が聞こえた方向に走り出し、木箱の道から抜ける瞬間ラフノがハルの肩を掴んで引き留め、木箱の陰に隠れる。
無駄にでかい木箱は人が隠れるには余りに都合のいいものだった。ハルが木箱の陰に隠れても、尚確認した事はレイドが地面にへばり付き、ピクリとも動かなくなっていることだった。
そして、そのそばに大きな二本の棒...否。上を見上げればそこには城から出てきていた巨人だった。巨人の身体は想像を絶するほどの大きさで、以前見た巨像の魔王と同じくらいの大きさな気がした。
「レイ...ッ!」
「待て、レイドが死んだ場合、相手は死ぬ。今はレイドがどうなるか見守ったほうがいい。それに今俺たちが出て行ってもレイドであれ程のダメージだ。死ぬだけだ」ラフノは鋭い目つきでハルに言い聞かせた。するとハルは俯いた。
「ここは...雲の上の城...?...ッ!」ヤーズは独りでに呟いたかと思えば頭を抱えだした。それにハルが近づいて、ヤーズの背中を撫でる。
巨人がレイドの体を握りしめ、移動しだした。
「さぁ、行くぞ」ラフノの言葉で全員動き出した。木箱の影に身を包み、巨人を追っていく。図体が大きいからこそ、微細な動きに気付かない。
巨人について行くこと一分ほど経ち、レイドはぼろ雑巾の様に、宙に吊るされている籠に乱暴に入れられる。
「巨人がどこかに行ってからじゃないと助けられそうにないな...」ラフノは建物の柱を背にして言った。
それから暫くすると、巨人が去り、籠にもたれ掛かるレイドを見かけた。
それからレイドは籠に人だけ通れる穴を作った。レイドはそのまま落下していく。
それを見たハルはレイドの元に走っていくが、レイドは空中で止まる。その瞬間レイドは壁際まで巨人の平手で飛んでいく。
それにハルが怒りを叫ぼうとした瞬間。レイドが巨人を見て笑っているのが見えた。
「殺して...やるよ!虫に寄生...されて...ないかもしれないがな!」周りが見えず、僕は傷んだ体を無理に起こして目を大きく開ける。
痛みがいつの間にか快感へと変換され、楽しくなっている。
「人間は死ね」巨人の言葉に僕は一言添える。
「それしか言えないのかよ!」僕はそう言い放ち、足を極限まで曲げ、地面に魔法陣が出現し。次の瞬間床が炎上に凹み、割れ、僕の身体は巨人の顔に移動する。
「一撃で終わりだ!」僕は叫ぶと同時に右拳を構え、腕に魔法陣を張り巡らせる。
そして、巨人の顔を打った。その瞬間巨人の鼻は折れ、顔が大いに凹む。
そして追い打ちの様に大爆発が巨人の顔に巻き起こり、巨人はあっけなく倒れた。
「久しぶりに...楽しめた...かな」僕は大の字に床に寝ころび、微笑んだ。その時、上から声が聞こえた。
「レイ...ド?」ハルの声だった。
「虫は片付けれたみたいだ...これで下に降りれそうだな」僕はハルのどこか怯えたような声に笑顔で返した。沈黙が流れ、ハルが口を開く。
「そうだな...」ハルの声にはどこか無理したような声が含まれていて、僕の胸に何かつっかえ棒でも刺さった気がした。その言葉に僕は口を開こうとする。
それと同時にハルが口を開く。
「レイドは...いつも私たちのために先を生き急ぐ時があるよな。それはとても嬉しい事だ。でもそれって全部、自分のためだろ?」ハルの言葉で僕はまるで崖から突き飛ばされたような感覚に襲われる。
「そんなこと、ない」僕は上半身を起こして小さな声で言った。
しかし、僕はなんとなくわかっていた。僕の目的。冒険者。この目的に仲間は付いてきてくれた。だからこそ、仲間を大切にした。
でも、仲間をいつの間にか苦しめていたのかもしれない。それはハルの言動でわかることだ。そうだ。僕は仲間を大切にすることがいつの間にか自分のためになっていたんだ。
自分のために必死になっていたのだろう。ハルの言葉で僕の心と対面している。
目を閉じ、静寂の中僕はそんなことばかり考え、頭の整理が出来たとき、僕は目を開いた。すると、そこにはハルの姿はなく、目の前には賽銭箱と障子の戸。
そして、僕は振り返る。そこは鳥居があり、理解する。
「ここは神社だ...」僕は独りでに言った。その次に空から声がした。
「これで契約は破棄させてもらう。では約束の物をもらおうか...」空から聞こえた声に目を向けると、そこには雲で人の顔が象られていた。困惑が困惑を呼んでいると、下の方から声が聞こえた。
「レイド!なんでそんな契約をした!?」ハルの焦りの声が風になびく。そして、次の瞬間僕の心臓に風穴があき、僕の視界はさかさまになる。
そして、僕は気付く。自分のした事を。これまで忘れていたことを。
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