喜
246話
悩んでいるよりも僕は身体が動いていた。僕の身体は白の側面を歩き、たどり着いた場所は人間が通れそうなドアだった。ドアは少しボロボロで使い古されたようなものだった。
僕はドアを開こうとドアノブに手を掛けると背後から声がした。
「君は誰だい?」声の方向に目を向けるとそこには誰もおらず、困惑している僕にハルが口を開いた。
「早く進むぞ」僕はハルの言葉で声にならない掠れた声で応答して、ドアから城へと入った。
城に入ったときに初めて目にしたのは僕らの身長の10倍くらいになる木箱だった。木箱はもはや家と表記しても間違いがない気がした。何より、その木箱が幾つも積み重ねられていて、落ちてくれば僕らは血しぶきを地面に広げて死ぬ位危ない気がした。
天井は無駄に高いが、巨人からすればこれくらいが丁度いい高さなのだろう。
「確実に僕らは別の物語に飛ばされたな。あの巨人が多くいたとして、その巨人に虫が寄生していたとすれば...かなり厄介だと思う」僕は木箱にもたれながら言った。僕の言葉にラフノが頷く。
「確かに巨人だと...ダメージが入りにくいかもしれない」ラフノはヤーズを一瞬見た後に周囲を見渡しながら言った。
「それでもやらないとな。この物語が終わった後は直ぐに”空との契約”に戻って虫を排除しないといけないしな」ハルは覚悟を決めた鋭い目つきで言った。
その突如のことだった。背後から僕の身体が連れ攫われた。衝撃は強く視界がぶれた。そして、腰辺りに圧迫感覚が襲ってくる。目を開くと僕は巨大ネズミに咥えられていた。
「なんだよ...!今から...ッ!」僕は言葉を放っている時に気づいた。それは初めての人間以外に虫に寄生された生き物だったからだ。
寄生されているのがわかったのはネズミの頭が抉れていたからだ。頭が抉られているのにもかかわらず動ける生き物はあまりいない。
それに僕が知っているネズミは抉れても走れるような生き物じゃない。
「でも、これでこの物語からはすぐに出られそうだよ!」僕は少し叫び気味に鱗を周囲に出し、鱗でネズミの首を切り落とした。
その瞬間僕はネズミの走っていた勢いのまま地面を転がり、ネズミの頭が僕の傍に転がって来る。死んでいるはずが、少し首が動いている。
しかし、間もなくして動作しなくなった。
「これで虫の排除が済んだなら...好都ご...」僕が一人でつぶやいているときに床に衝撃が走った。そして、光が僕の目に入る。
光の方に目を向けた瞬間、僕はまた圧迫感に襲われた。強い風を頭にだけ浴びて、急に止まる。そして、僕が目の当たりにしたのは、巨人だった。
「お前...人間か?」巨人の声に僕は軋む体に、大丈夫だ、と言い聞かせながら、頷く。その次の瞬間僕の身体に圧力がかかり、風が強く吹き、耳が痛くなる。
そして、気付けば僕の身体は地面にへばり付き、地面から破裂音が鳴り、風が辺り一面に吹き荒れる。死ねない痛みで久しぶりに意識が遠のき、巨人が一言口を動かしていた。
「人間は滅ぼす...」巨人の一言を最後に僕は意識を失った。
「ねぇ、この子起きないね...」「傷はあまりないみたいじゃが...」「さっきの音と関係あるのかな?」目を開き始めると同時に言葉が飛び交っていた。その声で僕は体を徐に起こした。
未だふらつく身体をどこかよくわからないところにもたれ、口を開く。
「ここはどこだ...?」僕が問いをすると、先程聞こえた声が答えを言ってくれる。
「ここはこの城の主の”檻”だね」檻に閉じ込められているのにも関わらず、元気な声で明るく言ってきた。
「そうか。じゃあ、僕は出させてもらう」僕は一言言って、檻に手を伸ばし、力を入れるが、いまいち力が入らない。そして、僕の身体が意図せず倒れる。
その時、周囲にいる人が僕によって来る。
しかし、僕は鱗を出し、身体のあらゆるところに纏い、無理やり僕は身体を動かす。
「僕は気付いたんだ。僕は...違うんだ」僕は一人でつぶやきながら、周囲の鱗で檻を壊し、僕は檻の外に出る。檻は宙にあったらしく、僕の身体は下へと向かって行くが、身体の節々に鱗を纏っていたおかげで身体は地面に当たる前に空中で止まった。
僕が仲間の元に帰ろうと移動しだす。その時だった。再度、声が聞こえた。
「人間。死ね」巨人の声だった。僕は即座に鱗で巨人の声が聞こえた方向にバリアを張る。
バリアを張った瞬間巨人の平手が鱗のバリアに直撃、後、僕の鱗のバリアは弾き飛ばされ、僕の身体もその衝撃に乗じて壁まで吹き飛ばされた。
「巨人...強くない...か?」僕は渋々痛む体を鱗で無理に起こして、巨人に目を向ける。痛みが意識を牛耳っている気がする。苦しい。呼吸が...出来なくなっていく。
でも...
「久しぶりに...楽しめそうだ...!」僕は痛みに笑顔を含ませた。
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