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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
242/288

海底の城③

241話




 「面白い話してくれたお礼にこれあげる!」トートはそう言いながら羽衣を自分から外し、ハルに巻いた。


「これを着けて祈るとなんと...身体が透けるの!」トートはハルに着けた羽衣を握った瞬間にハルの姿が消えた。


「これは...」ハルが何もないところから声を出した。


「これを使えば探せる...」ラフノが微笑を浮かべながら言った。


すると、僕とラフノからは全く興味が失せたはずのトートがラフノに急接近し、口を大きく開く。


「何を探すの?」

「それは...」ラフノが説明すると見せかけて僕に目配せしてきた。僕はラフノに向かってゆっくりと頷いた。するとラフノは口を開く。


「俺たちはこの世界の人間じゃない。俺たちはこの世界にいる悪を滅ぼしにきたんだ。悪は生き物、主に人間に住まう。俺たちはその悪を滅ぼしにきた...。冒険者だ」ラフノは胸を一度叩いて言った。


するとトートは口をへの字にして、

「つまんない...。でもそう言うことなら頑張ってね...。私は見かけたとしても見かけてないふりをするから」トートはいじけた声を出し、明らかにテンションが下がっていた。


「ま、まぁ、私が透明になれるし、効率は上がるだろうし、さっさと探しに行こう!」ハルは透過する羽衣を付けて元気よくドアを開いた。



 ドアを開くとハープや笛の様な音が聞こえた。音楽が城中に流れているみたいだった。


「今日は陸の方が溺れてきたみたいだから、存分に宴をしているの。一年に一人来るか来ないか位だから人間は歓迎するようにしているの。


しかも、溺れてきた人間はこの城の姫、”リヴィア姫”の踊りを近くで見られるのよ。私ですら近くで見れないのにね...」トートは俯いたまま言った。


「そ、そうか」僕はあからさまに落ち込んでいるトートを見て、応答した。




 「なにも見当たらない...」ヤーズは翼で飛びながら言った。そこで、ヤーズは海岸にゆっくりと降り立った。そこに背後から声が掛けられた。


「あんた今...空から来たべ?」振り返るとそこには釣り竿を肩に担いだ、正しく漁師と言わんばかりの髭を生え揃えた男が立っていった。


「そうですけど...」ヤーズは言い逃れは出来ないと頬を人差し指で掻きながら言った。


「そうかそうか。あんま空飛ぶんでねぇよ。魚が逃げちまうんでな」言葉の後に男は手を振りながら、海岸沿いに去っていった。


 しばらく時間が経ち、

「不思議に思わないの!?」ヤーズは一人で波の音と共に空しく突っ込みを入れた。



 「じゃあ、ハル。先に行って辺りに誰も居ないか確認しに行ってくれるか?」僕は見えないハルには目を向けず、通路に目を向けて言った。


「分かった...」ハルは若干声を抑えめに応答し、忍び足で一番近い曲がり角を覗き込もうと、顔を出すと同時に前に衣を纏った男が現れた。


それと同時にトートが僕らの前に立ち、男に話しかける。

「どうされたのです?こんな端っこに?」トートは手を口の前に出して、笑顔を露わにしながら自虐を含める。


「あ、いえ。宴には参加しないのか聞きにきただけであります」男は凛とした声で手をおでこ辺りに斜めに持っていく。


「そう、下らない宴なんて私は出ないわ...」トートは目を細めながら男を見た後に、目を逸らして目を閉じる。


「分かったなら去ってくれるかしら?」トートは追い打ちの様に男を睨んだ。すると男は身体を一瞬揺らして、どこかへと歩いて行った。



 「ほら行ったわよ...!」トートは笑みを浮かべて僕らに言った。先程の男のことを考えると、僕らは十分眼中にあったみたいで少しほっとした。


 ハルはトートの言葉で再度通路を見て誰も居ないことを確認し、僕の手を一瞬握って、ついてくるように知らせる。僕らはそれに付いて行く。移動すると音楽が更に存在感を増した。


「僕の見立てでは宴に虫が居ると見てる。でも確証はない...」僕が作戦を立てようと顎に手を突き、考え込んでいるとラフノが一つ口を開く。


「まず、人一人でこの宴だ。俺たちは隠れる意味があるのか?」ラフノが意表を突く質問をしてきた。だが、それはハルが解消してくれる。


「それは物語を問題なく進めて虫を探しやすくするためだろ?」ハルの姿は見えないが、ハルは僕を見て言っていると分かった。


「そうだ。その方が早く見つかると思っているんだ。だからできれば誰にも見つから...」

「あ!人間だ!しかも、溺れてない!これは早く伝えねば!」背後から無駄に声の高い男が叫びながら走り去っていった。


「「「バレたな」」」僕らは声がシンクロした。そして、僕は口を開く。

「各自逃げろ!捕まったら宴会場から動けなくなって、探せるものも探せなくなるぞ!」僕は走り出すと同時に叫んだ。

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

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