海底の城②
240話
移動して、目の前に海底の城が見えた。海底の城はサンゴ礁に囲まれていて、さらに明かりが所々に自然発生している。なんとも幻想的な眺めだ。町では見れない光景だ。
僕らは誰にも気付かれぬように海底の地面を踏みしめながら、徐々に城に近づき、目の前に城が建っていた。城の中も水中だとすれば、僕らが頼れるのはラフノしかいない。
それはラフノだけが減速せず攻撃できるからだ。この水中では僕の使う鱗も減速する。ハルの斬撃も減速するし、時間操作も使えなくなっている。
「稀に解除される加護...。よりによって私か...海底なら私の電撃が喰らうと思ったんだけどな...」ヤーズは俯き、ため息をこぼした。それでも尚ヤーズは地上を散策する。海の傍にはわらで造られた家が何軒も建っている。岸には船が打ち上げられていたり、釣り竿を地面に刺し、魚が来るのをひたすら待っている人がいる。
「もしかして、あの村は漁村...って、見ればわかるよね...。一人だと独り言が増えるね...。さてと、前の本みたいに魔女が居たら面倒なことになりそうだし、しっかり探さないとね」ヤーズは独り言を多くしゃべった後、翼を大きく広げて、空を飛び回りだした。
海底の城の中に何とか侵入出来た。中は城というだけあって、綺麗だった。壁はハマグリの殻が所々に付いていて、その所々に真珠が飾り付けられていて、不思議と発行している海藻が水もないのに揺れている。
「...ここではあまり話さないほうがいいだろうが...。僕らは今から散らばって、虫に寄生された生き物を探そう」僕は独り言をつぶやいた後に仲間に指示を出した。
「どこで集合する?」ハルが疑問を口に出しながら、首を傾げた。
「大きな音を立てたらそこに集合ということにし...」ラフノが話しているときに言葉は途切れた。それは真横からの知らない声が聞こえたからだ。
「ここで何してるの?」その声は若々しい女の声だった。僕らが振り返るとそこには布を重ね重ね着て、腰あたりから肩辺りを通り、後頭部辺りまで細くも平らな布。羽衣を着けている。顔立ちは幼く、童顔で白の髪の毛が尻辺りまでの長さの女だった。
僕は困っていた。海底の城の誰かにバレた以上争いが起きるに違いない、という思考が僕の脳内を駆け巡り、一つの策を思いつく。それは、この目の前に白髪の女を殺し、殺した事がバレる前に虫を探すことだ。
僕が考え事をしていると、白髪の女が口を開く。
「もしかして、陸の方?ここに何しに来たの?そもそもどうやって来たの?」白髪の女の質問攻めに僕は女の肩を掴み、握りしめていく。徐々に女の表情が険しくなっていく。
「今、私に何かするつもりなら叫ぶよ?」白髪の女の言葉で僕は踏み止まり、手を離した。そして白髪の女は微笑みながら口を開く。
「陸の方。私に陸のことを教えてくれるなら私についてきて」白髪の女は立ち上がりながら言って、僕ら一人一人に目配せをした。
ここで助かるなら従った方がいい、と僕は脳内で考え付いて、潔く白髪の女について行くことにした。
ドアを白髪の女が開き、僕らが入るとドアは閉められた。白髪の女はベッドに腰かける。
「教えてよ。陸のこと!」白髪の女は興奮した様子で言った。僕はその言葉に微笑んだ。
「地上は亜人とか、動物などが暮らしている場所だ」僕が端的に伝えると白髪の女は頬を膨らませて、口を開く。
「そんなことは分かってるよ!他に何か教えて!」白髪の女は少し怒りを露わにして言った。
「分かった。話す話す。...地上には僕らみたいな人間と、人間と動物を兼ね合わさった人間を亜人って言うんだ。それらを全て合わせて人間族だ」僕は自分の胸を左手で触れながら言った。すると、白髪の女は再び頬を膨らませた。
「つまんない!もっと面白い話して!」さっきまでの口調は何だったのか疑うほど荒れている気がする。
「面白い話って言ってもなー...」ラフノが頭を掻きながら悩んでいる。
「私たちは冒険者だ。私たちの生きる世界ではモンスターという動物とは一味違う歪な存在で、冒険者の一部はそのモンスターをたおして生計を立ててるんだ...ってこんな話じゃ面白くないよな」ハルが説明するように言った後に後悔して「忘れて」と言わんばかりに手を前に突き出した。
しかし、白髪の女は口をあけっぱでハルを見つめていた。
「...面白い!」白髪の女は満面の笑みを作り、拍手をしていた。そして女は再度口を開く。
「名前はなんていうの?」
「わ、私はハルだ」ハルは顔を近づけてくる女に仰け反りながら言った。
「私はトートっていうの!よろしくね!」トートは手を前に出し、ハルの手を掴んで、強引に握手し、微笑んだ。
僕とラフノは眼中にないみたいだ。
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