海底の城①
239話
檻に老婆が近づく。そして、檻のカギを取り出し、檻から少年を解放した。
「ありがとう。助かったよ。じゃあオイラはもう行くよ」少年は僕らの間をすり抜け、足跡を付けていく。その足跡の周辺にはは藍色の毛が落ちていて、元は獣だと物語っている。
「どこに行くつもりだ?」ラフノが少年の方に視線を向け言った。すると少年は僕らに目を向け、
「それはもちろんオイラの愛犬の所に行くんだ」少年は笑顔を見せ、走り出し、井戸へと飛び込んだ。僕らは慌てて井戸の中を覗き込んだ。
すると、その瞬間狼の姿となり、井戸から出てきた。狼のような姿で灰色の毛並みを持つ狼だ。次の瞬間狼は穴だらけになった狼の首根っこを咥え、地面から解き放ち、僕らが初めてこの世界に入って来た時の森へと走っていった。
呆然として立っていると、脳内から声がした。
「ありがとう。虫が居なくなったみたいだから、こっちに戻ってきて」その声はラナで間違いなかった。
僕らの身体は図書館に戻ってきていた。
「どうだった?虫がどれだけ面倒なものか、わかってくれたかな?」ラナは微笑みながら首をかしげる。
「わかったから教えてくれ。僕らが今回どんな物語に入ったかを」僕は息を吐きながら言った。すると、ラナは「そうだね」と本を一冊開いた。
「この物語は、一人の少年と一匹の狼が森で起きたことを綴る単純な物語なんだよ。最後の結末は森が焼けて生き物が住めなくなってしまう、という悲しい物語だよ。でも、虫にページを破られたことで文字が消えたりして、新たな物語が生れて複雑になったみたいなんだ」ラナは目を瞑って悲しそうな顔をしながら言った。
「って、こうもしてられないね。次の本を助けて貰わないと...」ラナは唐突に次の本を取り出しながら、片手で頭を持ち、掻く。焦りが生じているみたいだ。
「次の本はこれだよ。”海底の城”っていう本」ラナは本の題名を僕らに見せるように、表紙を見せてきた。
「先にどんな話か聞かせてくれ。簡潔でいい」ラフノは先程の本の教訓を生かそうと先に物語の全貌をラナに聞いた。
「そうだね。この物語は一人の漁師が船に乗って居たけど、転覆して溺れるところから始まる物語なんだ。その漁師は溺死したかと思われるわけだけど、目を開くとそこは城の中で、突如として現れた姫様に豪勢な食事をもてなしてもらい、陸に帰って干からびて死んでしまう物語だよ」ラナの目つきは何時になく険しい。
「いいかい?この物語は海の話だ。だから、君たちは虫を探すのに手間取ると思う。だから、僕が加護を付けてあげる」ラナはそう言うと懐から手帳サイズの本を取り出し、宙に浮かして僕らに聞こえない声でつぶやいた。
その瞬間手帳のような本から水のようで水ではない光が現れ、僕らの身体を包み込んだ。
「その加護は稀に物語に入ることによって消えることがあるから、その時は陸の方を探索して欲しい。頼んだよ」ラナはそう言って”海底の城”という本を僕らの前に出し、その本が扉となる。僕らはその扉に入った。
図書館に独り言が響く。
「何とかはぐらかせれた...。虫によって物語の中に物語が生まれることは”ない”。恐らく魔女は、この図書館の中に何らかの方法で入り、虫を解き放った...。その後、色んな物語をグチャグチャにしていってる?僕は魔女を探したほうがよさそうだね」ラナはそう言って図書館の本を全て浮かし、目を大きく開いた。
僕らが来たところは海中だった。そして、その遠くに泡凹を上に吹きながら落ちて行く人影が見えた。海面には船らしきものが転覆している。
あれが恐らく漁師だろう。これから海底の城に行くところだろうが、どうやって僕らは海底の城に入るか、水中では口を開けても話せやしない。漁師について行くしかないみたいだ。漁師とは一定の間隔を保ちながら海底の城の場所を知るしかないな。
沈んでいくことによって、段々と暗くなっていく。僕らは目線にずっと漁師がいる。そこで漁師をサメのサイズのアンコウが背に乗せて素早くどこかへ連れて行く光景を見た。それに僕らは泳いでついて行く。アンコウの泳ぎは意外と早く、僕らはすぐには追いつけず、見失いそうになる。が、ラフノの光の力で即座に移動できた。
ラフノのお陰で漁師を見失わずに海底の城まで来た。これであとは虫を探すだけと思われた。
ごぽ...ごぽ...
背後から聞こえた。泡凹が溢れる音は、ヤーズだった。僕は鱗を海面まで持っていき、空気を鱗の球に込め、すぐさまヤーズに持っていき、空気を与え、ヤーズの身体を鱗で包み、海面まで送った。
「私は陸を探索するのよね...?」ヤーズは独り言をこぼしてドラゴンの羽を生やし、陸を探索しだした。
僕は手を後ろから前に倒して移動の合図をした。
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