表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
237/288

一人の少年と一匹の獣④

236話




 「最近では何か気になることは起こりましたか?」ラフノが滅多に使わない敬語を使って聞き込みを始めた。


「最近...最近ではそうですね...」女性の村人はタオルを片手に掛けて、顎に人差し指を付けて空を目線だけで見る。


「最近は子供の成長が素晴らしいってことくらいしかないですね...」女性の村人は眉をハの字にしたまま動かさない。


「そうですか...」ラフノが落ち込んだ声を出すと、女性の村人が今度はラフノに問う。


「何をなさるおつもりですか?」女性の村人の声は少し震え混じりでラフノを見つめる。


「俺たちは悪を滅ぼしにきただけですよ」ラフノは滅多に見せない笑顔で答えた。




 森の中で一人、歩く人影が見える。それはレイド達を襲った少年の姿だった。少年の手にはリンゴが握られてあり、少し噛み跡がある。少年は歩き、そのままとあるところに行きつく。そこは洞窟だった。


「森に誰も来なくなってざっと24年だったのに、どうしてあの者らは来たのだ?」少年は松明に指を鳴らして火を灯し、壁に馬鹿力で突き刺し、洞窟内に腰を落ち着ける。


 しばらく経ち、少年が立ち上がった。そして、割れたり、蜘蛛の巣が張った、歪な形の鏡を木箱から取り出し、自分の顔を見る。するとそこには、灰色の毛色をした獣の姿が映し出された。


「懐かしい。人間の姿になって喋る力も得た。それに力も上がった。我はこの森を守り抜くだけでいい」少年はそう言って拳を握りしめ、鏡を元の木箱にしまった。




 「あの、何か最近で気になること起こりましたか?」ハルが首をかしげながら言った。


「いや、と、特にな、無いと思いますけど?」必要以上に挙動不審な人に声をかけてしまった、とハルは顔に苦笑いが生じる。


「そうです、か。では...」ハルはすぐにこの場を離れようとお別れの言葉を放とうとする。しかしそれは挙動不審な村人によって遮られる。


「で、でも、き、気になること。あ、ある」挙動不審な村人は言葉の後に人差し指を井戸の方へと向け、


「あ、あの井戸...ま、毎晩唸り声が、す、する」挙動不審な村人は勢いづいて何度も頷いている。


「そう、ですか。ありがとうございます」ハルはお礼だけ言ってその場を立ち去った。




 「お嬢ちゃん...」

ヤーズが聞き込みをしようと歩き始めたと同時に背後から声がした。その声に向くが、そこには誰もおらず、風だけが通り過ぎた。


「お嬢ちゃん...」再度聞こえた声にもう一度振り返ると、世界は夜空の様に広がる。そして、聞こえた声が周囲全体から聞こえる。


「イヒヒヒ...私は魔女さ...。お前は力が欲しいか?」

「別に要らないよ?」魔女の言葉にヤーズが笑顔で言った。ヤーズの言葉に魔女が驚愕の顔となり、


「そんなお前には力をやろう...」魔女はヤーズの言葉を脳内で改変し、力を与える流れにする。魔女は手に魔力を溜めだした。


「だから要らないって...」ヤーズはそう言って細い腕を構えて、魔女を殴ろうと周囲を見渡す。

「力は、強靭な力狼に変えてやろう!」魔女は不気味な声を出した。その瞬間ヤーズは声の聞こえたほうに拳を向け、前に突き出す。それと同時にヤーズの右腕に炎が灯り、空間を叩いた。そして、魔女の姿が現れる。


「場所がわかる訳...」魔女は怯えた声を出し、溜めていたはずの魔力は消え去った。


「だから要らないって!」ヤーズが可視化された魔女に向かって叫び、体をドラゴンへと改変させ、怯える魔女に鼻息をかける。その瞬間魔女の顔は青ざめ、空間が元に戻っていく。それに合わせてヤーズは身体を元の人の姿に変わる。


「あの...イヒヒヒ...じゃ...」魔女は怯えてどこかへと消え去った。



 そして空は、夕日となっていた。一瞬のことのように思われた出来事は長い時を過ごしていたようだった。そしてそこに、レイド達が戻って来た。


「なにか情報は得られたか?」僕は老婆の家の前に止まって問うと、老婆が僕らの間を過ぎ去って、家に入った。


「あんたらも家に入ってから話しな。暗くなるよ。暗くなればあんたらの言う悪も活発になるだろうしね」老婆はそう言って家に入って戸を開けたままにしている。僕たちは老婆の家に入ろうとする。その時、僕はなぜ家の前の檻の中の獣は大人しいのか気になったが、それは一旦排除して家に入った。



 「じゃあ、実質井戸の声位しか無いわけか...じっとしていても変わらない。行ってみよう」僕が立ち上がり、家から出て行こうとすると、老婆が声をかけてきた。


「気を付けな」僕は老婆の言葉に頷いて外に出た。そしてそのまま井戸へと移動開始した。


 井戸に着くと、呻き声が聞こえていた。


「ここに虫に寄生された人がいる?」ハルが井戸を覗き込む。下には水があって、ぴちゃぴちゃと音を立てて呻き声が上がるがそれには言葉のように聞こえた。


「た...す...け...て...」

どうでしたでしょうか?

面白く読めたのなら幸いです!

次回も読んでいただけると嬉しく思います!


ついでに感想や評価もしていただけると活力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ