道の先
229話
目の前にいたのはハルだった。そこで僕は涙したのだ。ハルが生きていたことに安堵の涙を流した。そこで僕はあることが気になる。
「ハルはなんで死ぬことが分かって、その予定より早く死んでしまったんだ?」僕の疑問の言葉でハルが左腕を右手でつかみ、口を開く。
「それは時間操作の代償と...予知能力でわかったんだ。」唐突に出てきた予知という単語で僕は目を大きく見開いた。
「予知能力は死ぬ時期が近くなると寝る度に勝手に予知される。そして時間操作は他の人より長く時を過ごす。それは相手の時間を巻き戻すのにも、だ。」そこで僕は口を半開きにして、息を飲む。
「相手の時間を巻き戻すことで自分の身体に巻き戻した分の時が進むんだ。だから...」僕がハルの言葉を遮る形でハルの肩を掴む。
「ハル、お前能力については分かった。じゃあ聞くが、お前はいつから自分が死ぬことを知っていたんだ?」僕が深刻な顔つきでハルに聞くと、ハルは一瞬地面をみて口を開く。
「一度レイドが自身のチカラに呑まれて灰になり、治まった後で、元の世界に帰って来た時、町が壊れていた時があっただろ?」僕はその時の壊れた町の風景を思い出しながら頷く。
「その時に大きく使った巻き戻しで、大体一か月で死ぬことがわかっていたんだ...。このことを言えば皆に気を遣わせてしまうと思い、私は言わなかったんだ」ハルは長いまつげを舌に下ろしてた。僕はそのハルの言葉で自分を責めた。
僕の所為だ...
「良かったハルとまた喋れて!」ヤーズが馬車道を歩くいている。確かにそうだ。僕ももう会えないと思っていたから奇跡のように感じた。でも実際は司書のラナのお陰だと思うと感動も薄れてしまうものだ。
「そう言えばレイド、これは王都に向かってるのか?」ラフノがいまさらながら聞いてきた。僕は「ああ」と返事をして言葉を紡ぐ。
「王都に行って挨拶しに行くんだよ」ラフノが口をはさむ。
「誰のだ?」ラフノの疑問の言葉を聞いて僕はすらっと答える。
「アストラスト」僕の言葉に名前というのは分かっているようだが、まったく知らない人の名前を出されて疑問が浮かび上がっているようだ。ラフノの片眉が上がって、上を見上げている。
「そいつはどんな人なんだ?」ハルが話に割って入って来た。そこで僕は少し微笑む。
「僕が旅に出て一番にお世話になった人?かな」僕は自分でも疑問に感じながら、そっぽ向く。
実際、アストラストはクネゴボにいる人すべてを保護すると言っていた。
それに僕を気にかけてくれていた。だから、村から出て初めてお世話になった人をアストラストと言っても過言ではない。
暫く歩いていると一つ目の町、クネゴボが見えた。僕が初めて来た町ともいえるところだ。何より心を躍らせていた。しかし、それは盗賊によって恐怖に塗り替えられたわけだが。
今では既にほとんど普及されていた。しかし、なぜか人はおらず、まだ王都にいるものだと思った、瞬間。真横に人影を見つける。そして、その影から光が放たれ、僕の後頭部の髪の先を少し掠れた。それと同時に僕の身体はその影に向かい、捕まえた。それはとても軽く肉感があるもの。人だった。それと同時に叫ぶのは僕の手元にいる”子供”だった。
「助けて――!犯罪者に捕まった――!」子供が僕の手の中で暴れながら叫ぶと、町の奥から二つの影が出てくる。そして言葉を放つ。
「こら!犯罪者!やめなさい!」
「手を離さなければ僕の銃が炸裂するぜ!」一人目はツインテールの子供が僕を指さし叫び、二人目は大きな円形のツバが伸びている帽子をかぶり、指を銃の形にしている。そこで僕は気付く。これは、子供の遊びだ、と。
「分かったわかった...離すよ...」僕が子供を地面に解き放つと、子供は僕のすねを蹴って二人の子供の方へと走っていった。
「あれって...」ハルが子供を指さした。僕はハルの目線を追い、子供を見てみる。その子供の足は無かった。
「なるほど...」僕は心でこう言い放つ。僕の所為だ。
アストラストの保護下であったクネゴボの住人はアストラストが居なくなったことにより、王族によって排除されたのだ。
王族にとって下民を養うのは腸が煮えくり返りそうなほど、忌み嫌うことだったのだろう。
しかし、アストラストが居なくなった場合、保護する人がいなくなるそして、クネゴボの人は牢獄に入れられ最終的に、処刑されたのだろう...。
「恐らくこの町は、憎しみと平和で埋め尽くされてるだろうな」ラフノがため息を吐いた。ラフノが「だって」と言葉を継ぎ、
「あんなに幸せそうだ」ラフノは町の奥を見た。正確には子供を強く抱きしめる母親の姿をみていた。
「ここでは休めそうにないね。このまま王都に行くしかないかも...」ヤーズは草臥れた様子で腕をぶら下げる。その言葉に僕が口を開く。
「そこまで疲れてないだろ?さっさと移動しよう」僕はそそくさと足を進めた。
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