レイドの生まれ故郷『コセトマ』
227話
目を開くとそこは僕の生まれ故郷”コセトマ”だった。虚ろな目で周囲を見渡すと以前見たときよりすっかり廃れていた。畑も小さくなり、荒れていた。周囲を見渡したところで僕は自分の身体の変化に気づく。ボロボロになっていたはずの服は新品同様になっていて、傷もなくなっていた。そこで僕は声を掛けられる。
「レイ...ド?」その声は祖父の声だった。杖を地面に着き、より一層皴が増えた祖父はとても元気そうではあったが、同時に不安そうな顔をした。そこで僕は気付く。
「なんて顔をしてんだよ...」僕は誰にも聞こえぬ、か細い声で放ち、自分の顔に触れた。それと同時に背後に気配があることを確認した。僕の後ろにはラフノとヤーズが立っていた。そこにはハルはおらず、本当に亡くなったことを知る。
「ここは...どこだ?」ラフノが虚ろな目で周囲を見渡す。僕は無理に笑みを作り出し、口を開く。
「僕の生まれ故郷だよ」僕は作り笑いをした。
「レイドの生まれ故郷...ね...。ハルと一緒に来たかったな...」ヤーズが地面を向いた。僕はその言葉を無視し、口を開く。
「そうだ、僕が冒険者になろうと思った本でも見るか?」僕は手を一度叩いてひらめいた事を口に出した。僕のその言葉でラフノが反応する。
「レイドが冒険者になろうと思った本...?」ラフノは気になっているようで、首を傾げた。そこで僕は祖父に声をかける。
「僕が持ってた本、今ある?」僕は作り笑いをした。祖父が仮の家に入り、暫くしてボロボロになった本を一冊持って出てきた。
「これがお前の持っていた本じゃ」祖父は嗄れた声を震わせ、本を僕の前に出してきた。その本を僕が片手で取ろうとすると、本を僕から引いた。
「レイド...お前。この村の状況見て何も感情がわかんのか?」祖父のその言葉は僕にはなんとなく察しがついていた。
――――僕の所為だ。
僕がこの村を出て王都までの中間地点で止まった町”クネゴボ”で初めて僕は正体不明の力を使った。そこで僕は王都に行って、騎士団に応援を頼んだらしいが、僕はそのことは覚えていない。今でも信じがたい。僕が王都に行き、応援を頼んだこと。こればかりは今まで力を使っていたが、解明できていない。
二度目の力で僕はいつの間にか人を殺していた。それが問題となり僕は牢に閉じ込められた。でも冒険者になるため出ようと思った。
しかし、それは処刑という形で日の光を浴びた。そして、処刑されたと思った時、僕は三度目の力を大いに振るい、惨殺したんだ。それのせいで僕の故郷である”コセトマ”という村は国によって壊されたんだ。そう言う察しがついていた。
「ごめん。僕が人を殺したから...」僕は震えた声で俯いた。すると祖父が溜息を吐いてから口を開く。
「なぜ人を殺し...」
「ごめん」僕は祖父の言葉を遮って謝った。そのまま僕は続けざまに口を開く。
「ごめん...村を出て。ごめん...人を殺して。ごめん...王都に行って。ごめん...おじいちゃん。ごめん...殺して。ごめん...仲間に誘って。ごめん...乱して。ごめん...何も守れなくて。ごめん...救えなくて。ごめん...皆。ごめん...生きてて...」僕は俯きながらも手足を震わせながら、涙をこぼした。震えた声は謝った分だけ大きくなる。しかし、最後のみはか細く、胸を締め付けるもので、掠れた声となった。そこに背後から暖かさが僕を包む。
「大丈夫...だよ?全部背負ってないで...私たちにもその辛さ分けてよ...そしたら...楽になると思うよ...?」ヤーズが僕の背にへばりつくように抱き着いて、僕の背中に口を近づけた。
「そんなこと言うなよ...。俺たちはもう”冒険者”だろ?」ラフノは僕の頭をぐしゃぐしゃにする。
胸が暖かくなった。どう考えても長く時を過ごしたのはこの村だ。でも、それでもそれ以上に僕は仲間という温かみを感じた。
「お前...いい仲間を持ったな...」祖父は僕を説教するつもりだったのだろうが、その気も失せたのか暖かな笑みを浮かべた。「そうじゃ...」と祖父が口を開き、続けて言葉を放つ。
「折角お前の生まれ故郷に戻って来たんじゃ。ご飯でも食べていきなさい」祖父は何時になく優し気な口調で家へと進んだ。僕はそれに付いて行き、家に入る。
「レイド!...あ」村の子供の一人が満面の笑みを浮かべながら僕の名を呼んだが、すぐに口を噤んだ。ドアから家に入ると近くに子供。そのさらに奥は子供の親が見えた。
「レイド君...。なぜ村に戻ってきた?今、村に戻ってくればまた国の人間が来て...あれ?あんたは見たことあるな...確か、銃とハンマ―を持った人と一緒に...って、目の前で人を殺した奴の仲間か...?」村の男はヤーズを見ながら怯えていた。そこでヤーズは口を開く。
「たまたま船が一緒で一緒にいるように見えたのかな?でも大丈夫。あれから私はあの人たちの行方知らないし」ヤーズは顎に手を付け、天井を見回す。その声は通常通りになっていた。
「まぁまぁ、一夜位ならいいじゃないですか。でも一夜だけね」更に奥から声がした。それは子供の母親の様だった。とても気さくそうだった。でも、明日にはこの村を出て行け、と言われているのと同じ言葉にも感じた。
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