適合
216話
俺は天と地で言い争っている人影を見ている。
「私はこの身体が生まれてからずっといる天使ですよ?後から入った忌むべき悪魔は出て行ってもらえますか?」翼の生えた人影は柔らかな声で言い放った。それに反応するのは赤黒い靄で人の形を象っているもの。恐らく悪魔だろう。
「何を言ってる?おれはこいつを助けたんだぞ?こいつの今は亡き同胞についていた悪魔だからって避けるのはおかしいだろ...」
「そう言うことではないのです。悪魔と天使が分かり合えるわけないでしょう?ですからここからいなくなってほしいだけです」
「ここから出ればこいつは死ぬぞ?」
「そんなことはありません」
「本当にそうか試してみるか?」
「いいでしょう切り刻んで...」
「これは僕のことだ。勝手に話を進めないでくれよ」ラフノは悪魔と天使が争っているところに俺は口をはさんだ。
「俺はどっちもの力を使ってあいつを倒したい。ハルが死んでしまう前に」ラフノはそう言いながら拳を握った。
「分かりました。ただ一つ忠告です。あまり天使と悪魔を同時に使わないことをお勧めします」天使はそう言ってラフノに背を向けた。それと同時に悪魔は薄ら笑いを浮かべてラフノに背を向けた。
「ラフノ大丈...」ヤーズがそう言いながら駆けてくるがそれをラフノが手を出して止めた。
「俺は平気だ。それよりもあいつを倒そう...」ラフノはそう言いながらもスーツの男を指さした。
「勝つおつもりですか?残念ですがあなた方が勝つことは百に一つもないでしょう。なぜなら私は死神ですから」スーツの男はそう言い放ちながら、大鎌を片手で軽々しく振った。その瞬間黒い霧が高波の様に迫ってくる。ラフノは純白の翼を羽ばたかせた。それと同時に風が巻き起こる。それにより黒い霧を退いた。その瞬間空に純白の羽根が幾つか舞った。
黒い霧が晴れたころ、ラフノの姿が露わになる。頭に純白の光に赤黒い靄が蔓延り、頭からは右斜めに赤黒い歪な角が生えている。背に純白の翼その翼は羽根が所々取れ、赤黒く照っている羽根が一切生えていない部分が見える。そしてラフノはふと薄ら笑いを浮かべた。
「勿論勝ったつもりだ」ラフノはそう言い放ち、大鎌を構えたスーツの男に目を向ける。
「そうですか。しかしながらそれは些か傲慢ではないでしょうか?」スーツの男は大鎌を持つ手を休めること無く言い放つ。それと同時にラフノは一瞬立ちくらんだ。そして、その瞬間スーツの男はラフノに向かって、不敵な笑みを浮かべながら接近していた。大鎌を振りかざして。この事にいち早く気づいたヤーズが両手を大きく広げ、雷と炎の矢をスーツの男に向かって飛ばしていた。
しかし、スーツの男に当たる時になったとき、空気に溶けて掻き消えた。そこでスーツの男が口を開く。
「私の大鎌の前では全てが刈り取られ、無力化するのです。例え、幾ら威力の高い攻撃でも...グッ!」スーツの男は余裕の表情で発言していると、何かに耐える表情と声を上げた。その理由はスーツの男の懐にラフノがいた事と関連していた。
「俺の今の状態では魔王でさえも手出しが出来ないはずだ...」ラフノはそう言いながら白く鈍く光る剣をスーツの男の背に突き出した。
「何を馬鹿げたことを言っているのですか?」その声は背後から聞こえた。しかし、ラフノの目の前には苦しむ表情を浮かべるスーツの男がいる。しかし、そこでハルがある事に気づく。
「大鎌を持ってない!?」ハルは驚愕の念を飛ばした。その言葉を放った次の瞬間、背後から声が聞こえる。
「あれを見ろ...お前の仲間ではないのか?」トライネは僕を抱いて空を飛びながら、目線をレイドの仲間がいるであろう所に向けた。僕は言われるがままその視線の方向に目を向ける。そこにはラフノ、ハル、ヤーズ、そして、現界にて一度顔を合わせたスーツの男が立っていた。それも複数人。
「下ろしてくれ。僕が先に行く」僕はそう言いながらトライネの手を退かそうとする。するとトライネは口を開く。
「分かった...降りろ...おれは後で行こう」トライネはそう言って僕から手を離した。その刹那、僕の身体は風を切りながら浮遊感を味わう。死ぬことはあまり怖くないのに妙な恐怖感を覚える。しかし、恐怖感とは裏腹に僕は笑っていた。
「どれだけあなた方が行動しようが私には勝てませんよ」スーツの男がそう言い放った瞬間ヤーズが口を開く。
「ラフノ!上!」ヤーズの叫び声に近い声でラフノが上を向き、即座にその場から離れる。それに釣られるようにスーツの男が上を向く。そこにはレイドが足を地面に向けて落下してきていた。そして、落下はその直ぐだった。
地面がブロック状に割れ、風が巻き起こる。砂埃が舞い、体中に衝撃が走る。痛みは確かにある。というか僕の足は一度破損した。しかし即座に僕は時間を戻し、足を修復し、地面を歩き出した。抉れた地面を歩く。砂埃から出て、目の先にいたのはスーツの男だった。
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