戦いの火蓋
212話
目の前には槍が留まっている。
「僕を殺しても空間に閉じ込められるだけ。でも、僕がお前を殺しても今まで通り生き返るんだろ?」僕は目の前に留まる槍を指さしながら、言い放った。
「そうだけど...」
「そこで僕は一つ提案したい」僕はそう言いながら指を一本立てた。
「停戦だ...。一度は僕も呑んだことだ。それも最低一時間が条件だ。どうする?」僕は手を広げながら言い放った。するとトライネはため息を吐いた後に口を開いた。
「分かった...ただおれからも一つ条件が...」
「魔王城に入るなってことなら無理だ。僕が成すべき事だからだ」僕はそう言い放ち、トライネの目を見る。
「...その、魔王城に入るのだけは許可できない...」トライネは牙を剥き出しにして静かに言い放つ。
「魔族は契約ごとに関しては固いと知っている。自分がした事なら相手の分も呑むべきじゃ...」僕が手をひらひらさせながら言い放っているときに風を切る音が聞こえた。その音に合わせて僕は後ろに避けた。
「やっぱり無理か...」僕そう言ってトライネを見るとトライネは臨戦態勢に移っていた。
「どうしてもというのなら...この場で殺す...」トライネは物騒な言葉を言い放ち、眼光を輝かせた。
骨の屋敷は脆いようで全く壊れるような様子がなかった。
「これが魔王城なのか?」ハルが困惑しながらも口に出した。その疑問はラフノにも共有されていて、状況をくみ取ろうにも汲み取れないものだった。
「とりあえず理性のある魔族が住んでいるものだろう...。警戒しつつも入ってみ...」ラフノが作戦を離しながら骨で出来た石段に足を掛けた瞬間屋敷から砂埃が立った。
「さてさて、あなた方は何しにここに来たのです?」そう聞こえる声の方向を向くと屋敷の上に人影が見えた。
黒いスーツを纏った男が立っていた。
「人間はこの魔界に入る場合原型を留めれぬはずですが?どうやってこちらに?」男は眉を歪ませて言い放つ。その言葉にヤーズが口を開いた。
「それは私の力で突破してきたのよ」ヤーズがそう言いながら両手に炎と雷を纏う。
「おっと...すでに殺す気満々ですね。でも、それは頂けない」男は前半微笑みながら言い放ち、後半はヤーズの耳元にて声を響かせた。それと同時にヤーズは弾かれ、地面を這う。
「私は現界では弱いですが...魔界では私の方に分がある。何が言いたいかというと、あなた方は負けるのです。そして、私のしもべとなっていただきましょう」男は目を大きく開き、興奮した様子で大きく言い放った。それとほぼ同時期に屋敷の少し離れたところから声がした。
「ぅう...何が...。...はっ!これは一体!」それはラフノたちが護衛しているはずだった男だった。
「おや...そこにも人間が...どうしてこちらに来れているのです...?」スーツの男は目を大きく開き、護衛している男を見た。
ラフノたちだけでなく、ただの人間が魔界に来れているのが相当不思議なようだ。スーツの男が護衛している男に移動しだす。それを見た瞬間、ハルは剣を取り出し、黒い壁を作るように黒い斬撃を飛ばした。護衛している男の前に黒い斬撃で造られた壁が出来上がった。
「時間を操る力で斬撃を止めた。この力の前にお前は無力だ」ハルはそう言って剣先を片手でスーツの男に向けた。
「なるほど、つまり、あなたを殺せば私の勝ちということですね?」スーツの男は大きく開いていた目を元の少し細めの目に戻し
、言い放った。
「それをさせないための俺たちだ」ラフノはそう言いながらハルの横に立ち、剣を周囲に出現させ、光を纏わせ、その一本を取り、腰に掛けていた剣を取り出し、光を纏わす。
「私たちに出会ったからには生きては帰さない!」ヤーズがそう言い放った瞬間ラフノたちの攻撃は始まった。
「魔王様...どうして私めの言葉を聞いて下さらないのです?なぜ後から入って来たスーツ男なんかを!」魔王の側近が魔王の前に立ちふさがり言い放った。しかし、側近の言葉は魔王には響いていないようで全く反応がなかった。まるで”死んでいる”かの様に。
「我はいつ魔王になった...。我はなぜ今魔王なのだ...分からない」魔王はそう言って魔王城から見えるガラスの先を眺めている。
俺は昔から好きなことがあった。それは、物語を描くことだった。絵を交え、友の文で物語を作ることは何よりも楽しかった。そう、何よりも。でも、そんな平和はすぐに断ち切られた。友は急に手のひらを返し、こう言った。
「今日からもう文字は書かないよ。今日から僕は”司書”になる。だからさよなら」友はそう言って俺を一人残してどこかへ消えてしまった。
その後俺は絵を描き続けた。何度も失敗作を生み出しては壊し、成功作と思って誰かに見せてみても「そんなことするよりも世のためになることをしたら?」と言われるだけだった。意味のない事。俺はその言葉に苛立ちを覚えていた。だからこそ俺は絵を描き続けた。苔が体中に生えようとも...。
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