空間の空間と空間
210話
それから一時間経った今、僕は上を見上げていた。その空間は天井というものはないように思える。実際ある訳もないのだが。その時本が音を立てて閉じられた。
「そろそろ限界...お前とこの空間にいるより外に出たい...。だからそろそろ死んでくれる...?」少女はそう言って宙に浮きながら槍を操りだした。
「そうか。でもまだ死ぬわけにはいかないな...。だってさ、今この時点で僕の仲間が魔王城に入っているだろうしな」僕は微笑みながら言い放った。その瞬間少女は血相変えて容赦なく僕の頭を切り落とした。
「早くいかないと...!」
「どこに?」少女の急ぐ姿を見て僕は言い放った。
「どうして生きて...」
「そりゃここが、僕の空間だからだ」僕は余裕の表情で言い放った。
「どういうこと...ここから出せ...」少女はそう言いながら僕を睨んでくる。
「簡単だ。この一時間僕が何もしてないと思っていたのならお前の負けだ。僕はこの一時間この空間に殺されることだけを考えていた...。これだけでわかれば察しがいいよな...」僕はそう言いながら微笑みながらも、睨んだ。
「...なるほど...。つまり今この空間はお前の物...」少女はそう言いながら不敵に微笑んだ。
「でも、それができるとしても、あり得ない...。この空間で死ぬことはできないはず...」
「空間と空間同士がぶつかった場合どうなると思う?」僕は指を一本立てて言い放った。「正解は」と言葉を継ぎ、
「存在感の強い空間が打ち勝ち、相手の空間を保ちつつもそこは強いほうの空間へと変わる。だから、今ここは僕の空間だ。お前に勝ち目はない。諦めろ」僕は突き放すように言い放ち、睨む。
その瞬間少女は笑った。
「ぁ...あははははっははははははははは!!」狂ったように笑う少女の顔は先ほどのつまらなそうな顔ではなく、正に
「狂人...」であると言えるほどだった。
「久しぶり...あれだけ本の続きを読みたかった気持ちを静められるのは!!ははははっは!...ハァ...、ヒッヒッ...」少女は叫び、笑いつかれるまで腹を抱えて笑った後に目に溜まった水を全て指で取り去る。
「この気持ちが冷める前に身体動かしておかない...と!」少女は最後の文字に合わせて僕の真横を目にも止まらぬ速さで通り過ぎた。
「これは...すごいな...。空間が歪んでる...」僕はそう言いながら通り過ぎて行った方向を見た。そこは何か渦巻いているようで空間が曲がっているのがわかった。
僕が感心しているときに背後から腹へと槍が突き抜けた。血しぶきが滴る。しかし、それはすぐに治り、次の瞬間少女の腹が突き抜けた。
「そうだった...お前は殺せない...でも関係ない!」少女はそう言ってこうした様子で唾液を飛び散らすほどに乱れながら、槍に乗って僕に襲いかかってくる。
「無理だ」僕は飛んでくる少女の脳天にナイフを突き刺した。その瞬間少女の身体は気持ちがいいほどバラバラになり、地面に臓器やら骨やら肉やらが落ちた。
「この空間で勝てるわけないだろ...幹部よ...」僕はそう言って少女の持っていた本を手に取った。
風を歪ませて辺り一帯の木のモンスターを怯ませながら駆け、モンスターに囲まれていた男をハルの御姫様抱っこによって救出した。
「もう大丈夫だ!傷はないか?」ハルは走りながらも男の身体に損傷があるかどうか聞いた。すると男は「あ、あぁ」と返事をした。
それから、ずっと走った。モンスターが追いかけてこず、見えなくなるまで。
「さて、お前はどうしてここにいるんだ?」ラフノが眉を顰めて言い放った。その言葉は先ほど救出した男に向けたものだった。
「それが...私にもさっぱりなのです...船の上で寝込んでいたらネックレスで首が閉まり邪魔だと力づくで取ったその次に見慣れない陸に立たされていて、何がなんだが私にもわからない状態だったのです...」男はそう言って俯いた。
「なるほど、じゃあここから帰られないということなの?」ヤーズが顎に指を当てながら言い放った。「ええ...」と言葉を継ぎ、
「そう言うことなのです...」男は落ち込んだように言い放った。
落ち込むのは無理もない。だってこっちから向こうへは帰れるかわからないのだから。
「分かった。安全なところで待っていてくれるなら魔王を倒してから迎えに来よう」ハルはそう言って周囲を見渡した。そこで男は口を開く。
「ま、魔王!?もしかしてあなた方は勇し...」
「勇者じゃないぞ...。それから先を言えばお前を殺すことだってできるんだからな...?」ラフノは脅しをかけるように言い放った。その言葉により男は口を塞いで口を噤んだ。
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