魔界の扉
209話
「どうした?」僕は目の間に止まった槍に向かって言い放った。
「お前を殺せば...解放されるのか、それとも、階層空間の様に一生出られない様になるのか...それに恐れただけ...」少女はそう言って片手を前に突き出したまま止まっていた。
「分かった。僕は何もしない。だから、一度停戦しよう...」僕がそう言うと少女はため息をこぼし、槍を手をグ―にして破壊した。
「どちらかと言えば何もできないから停戦でしょ...。まぁいい...。停戦にしておいてあげる...」少女はそう言って地面に座り、片手に抱えていた本を取り出し、読みだした。その瞬間に静寂が流れる。
たまに紙をめくる音が鳴るだけで、それ以外は何も起こらない。今いる空間は今本を読んでいる少女が作ったもので、僕の思い通りに何かをできるようなものではない。
「暇だ」僕は端的に言い放った。
デスティは指を一本立て、口を開く。
「まず一つは、魔界から流れ込む所は魔界の力が強いわ...だから、もしかしたら、理性を失ってあなた達がモンスターに変貌するかもしれないわ...。二つ...」デスティはそう言って指の二本目を立てた。
「そもそも、魔界に繋がる空間は既に小さくなって人が通れるサイズではないのよね...」デスティはため息交じりに言い放った。そこでラフノが口を開く。
「じゃあ、どうやってお前はこちら側にこれたんだ?」ラフノが眉間にしわを寄せながら言い放っていた。すると、デスティは微笑みながら口を開く。
「それは簡単よ...?空間に一瞬切り口を作って、その穴から行ったり来たり出来るわ...でも、個人であけた穴だから不安定でどこに出るかはわからないことが...」
「分かった。じゃあ、私たちを魔界に行かせてくれないか?」ハルはデスティが話しているときに割込み、腕を掴んで強く言い放った。
「出来ないことはないわ...ただ、気を付けたほうがいいわよ...。魔界の生き物は特に人間族、現界の生命には強く反応するわ...。だからと言ってすぐにはこちら側には戻れないわ...」デスティは目を細めながら言い放った。
「そんなの百も承知よ!」ヤーズが手を腰に当てて言い放った。「だから」と言葉を継ぎ、
「今すぐ...ここから魔界に!」ヤーズはそう言ってデスティに詰め寄る。それに圧倒されたのかデスティは「え、ええ...」と了承を口に出した。
人々が踊り狂っているところから離れ、船着き場にきた。それは人を巻き込まないためだ。
「じゃあ始めるわよ...」デスティはそう言って左手を真横に伸ばした。次の瞬間伸ばした手が黒く禍々しい色形に変貌を遂げ、上にあげる。そして振り下ろした。その瞬間空中に縦に切り口が出来、開かれた。その刹那、空気が急激に重々しくなり、目が熱くなる。視界が真っ赤に染まっていく。ラフノは腕を目の少し上あたりに構え、防ごうとする。勿論、防ぐことはままならないが、軽減されている感じがしていた。
「さぁ入って...!」デスティがそう言って瞬間に時空の穴から濃い紫で関節の無い手がラフノたちを連れ去った。
地面に当たる。ラフノは顎を思いっきり強打し、血が垂れてくる。続けざまに時空の穴からハルが飛んでくる。ラフノは体勢を寝転がったまま、立て直し、自らハルのクッションとなった。
「す、すまない...」ハルはそう言ってラフノの身体から降りた。その瞬間時空の穴からヤーズが足を向けて飛んできた。丁度立ち上がったハルにドロップキックの様に飛んで行った。
「大丈夫か...?」ラフノは少し呆れたように言い放った。すると、ハルとヤーズは口を揃えて言い放つ。
「「平気...」」
ついた場所は森だった。しかし、魔界ということだけあって、鮮やかな緑色ではなく。少し紫がかった葉の色で樹木の色は白や黒、紫、黄色などがある。
「奇妙なところだ...」ハルがそう言いながら木に触れた。その刹那、樹木が歪み、牙の様に破けていき、大きく開かれた。そして、勢いよく閉じられた。耳を突き刺すような鉄を叩いたような音だった。その場にいたハルは直ぐに避け、木に対して剣を構えていた。
音に反応するように周囲にあった木が全て牙をむき出しにして、無数の金属音を轟かせ出した。
「周囲に敵がいるのはこちらに分が悪い...けどどうする?」ヤーズが両手に炎と雷を宿して言い放った。その時、明らかに人の声が聞こえた。
「ひええええ!だれか!...なんで急に凶暴に...!」その声は酷く怯えていたのがわかった。
「あっちに人がいる。救出してからここを一度離れよう」ラフノがそう言うと、声が聞こえた方向に一筋の矢が飛んで行った。その瞬間周辺含め、その一直線上に火が点った。それだけではなく、気が全て削られていた。
「今よ!」ヤーズがそう言うと同時にラフノとハルは駆け出した。
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