反乱
201話
10...
「何言ってんだよ!」獣人が吠える。
9...
「死ぬわけねぇだろ!人間如きに!」
8...
「クッソ!なんで動けねぇ!」
7...
「解けよ拘束を!」
6...
「そしたら殺してやるからよぉ!」
5...
「何なんだよ!」
4...
「ぶっ殺す!」
3...
「何が裁判だ!」
2...
「最後の言葉を言ってみろよ!」
徐々に僕は脳内で数え、最後の番号だけ、口に出す。
「1...。刑執行だ」僕がそう言うと法廷に立っている獣人は跡形もなく潰れた。そして、僕の視界が現世へと戻る。
目の前には腸がえぐり取られた状態の獣人が倒れている。これといった能力が得ている感覚もない。とすると、今まで襲ってきた魔王軍の中で一番弱いということだろうか。最後まで遠吠えだけだったし、それなりだったってことだろう。僕は脳裏にそんな言葉を交わして魔王城を見た。するとそこには紫の髪をした女が立っていた。
「あらあら...やっぱり来ていたのね?勇者の代わり」女は腕組をしてその腕に大きい胸を乗せている。
「お前はさっきのとは違うな...?幹部か?」僕はそう言って決して特別な素材を使っていないナイフを取り出した。そのナイフに黒を纏わせ、構えた。
「....幹部...ああそうね。幹部と言えなくはないわね」女はそう言ってため息交じりに言い放った。
「殺されたくなければそこを退けろ。魔王を殺さないといけないんだ僕は」僕はそう言って一歩足を踏み出した。
その直後だった。僕の足元に切り口が入った。
「あらあら、気を付けないと...死にますわよ?」女はそう言って蛇の様な鞭を両手で伸ばした。
「僕はそれでも進むぞ」僕はそう言ってもう一歩足を踏み出した。その瞬間僕の足の指先が切れ、血が噴き出る。しかし、それは一瞬にして元に戻った。血は噴出しておらず、指もつながっている。
僕は女の顔を見て微笑んだ。
時間帯はもう9時位だった。レイドが出ていき、ラフノは息を吐きだした。
「私はどうすればいいのでしょうか...」ナルファはレイドが寝る筈だったベッドに寝ころんでいる。ラフノはそんなナルファを見て口を開く。
「俺はナルファに魔王討伐なんかには来てほしくないからな?」ラフノは少し冷たい口調で言い放った。ラフノの言葉を聞くとナルファは急激に口を歪ませた。
「チカラになりたくても慣れない人の気持ちがわかりますか...?今日朝方に親と同等に思っている人が無くなったことを知った気持ちがわかりますか...?私が!...私がどれだけの思いで一人になったかあなたにわかりま...すか?」ナルファは自分の心の内を離していくと同時に涙を流し、身体を起こしラフノを見た。ラフノの姿は雨に濡れて、哀愁が漂っていた。
「俺はハルが亡くなると知っても尚、実際にはまだ死ぬわけないだろうと思っているんだ。でも、その分失った時の衝撃が重い。だから俺は今自分に言い聞かせているんだ。ハルが死ぬことをな...」ラフノはそう言いながら窓を覗いた。その瞬間船着き場に停められている船が燃えているのが見えた。
「ナルファ。二人を宿の外に呼んでくれ。嫌な予感がする」ラフノはそう言って目を大きく開いていた。
宿屋の外にでて、ぐちゃぐちゃの地面を踏んでいた。並み大抵の火力では雨に濡れた船は燃えにくいはずが、その船はまるで乾ききった日のの様に大きく燃え上がっていた。
ラフノは思わず踏み込み町の方へと降りて行こうとすると、毛深い人間。獣人に会った。
「ガルルルル...」獣人はそう喉を鳴らし。ラフノを睨む。攻撃を加えられていないラフノは咄嗟の判断で両手を上げ、背を向けた。そこで町の鐘が鳴り、大きい声で町の人が叫んだ。
「獣人奴隷が逃げた!見かけたらすぐに教えること!繰り返す!獣人奴隷が逃げた!見かけたらすぐに教えてくれ!」その大きい声を聴いてラフノは理解した。これが獣人奴隷だと。
背に何か鋭利なものを構えられている。ラフノは進むがまま進み、宿屋に着いた。そこにはおいて行ったハルとヤーズ、ナルファが立っていた。
ヤーズが口を開く。
「今のは...!って獣人!?」ヤーズは驚愕の声を放った。
「従えば殺されはしないだろうから反抗的なことはするなよ?」ラフノはそう言ってハルとヤーズに挟まれた状態になる。
「おほん!私はこの獣人族の長。アルドリスだ。私たちは今からこの大陸の獣人族の奴隷制を廃止するように仰ぐ。しかし、聞かなければ争いも止む負えないと思っている。お前たちはまだ助かる。この大陸から去れ」獣人族の長はそう言い放ち、錆びついた剣を向けてきた。
その時、後ろで騒ぎが起きた。そして声が聞こえた。
「ニンゲン族が私たちを殺そうと飛び道具で攻めてきました!指示を!」獣人族の女はそう言い放った。長はその声を聴き、口を開く。
「やはり、聞く気はないみたいだ。和平を結ぶつもりだったのに...」長は平和的案を最後に吐き捨て、剣を掲げた。
「攻撃してくるニンゲン族は殺せ!そして獣人族の奴隷制の廃止を叫べ!”我々は自由を求める生き物だ”と!行け!」長が合図すると同時に多くの獣人族は雄たけびを上げながら、そこらへんにあるものを全て武器にし、突っ込んでいきだした。
ラフノは高台から町を見下ろした。そこは正に地獄だと感じたほどだった。獣人がほとんど一方的に魔法や銃により倒され、一人の獣人を複数人で槍を突き刺して弄んでいる。こんなことが...
「こんなこと許せない!」ラフノの言葉を代弁するようにヤーズが言い放ち、町に走り降りて行った。
「私も行くぞ!」ハルはそれについて行く。そして残されたのは、ナルファとラフノだった。
「俺は行くぞ!?ナルファはどうするんだ?」ラフノはそう言って下を向いているナルファに言葉を得ようとした。しかし、ナルファは何も言わず、その場にいる。ラフノはナルファをその場に置いて行った。
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