旅仲間
闘技場ストーリーまだもう少しです。
17話
何も無い空間が僕を迎え入れる。
「また、死んでしまったのか」僕の発した言葉が壁のない空間で孤独に響く。
「目を覚ましたくない....。僕が今目を覚ませば、また死人ができる...。どうすればいいんだ....」僕が悩む姿を見兼ねたのか誰かが僕に声をかけてきた。
「お前はどうしてそこまで変われた?」この声は、ウトムでの少女の声。名前も知らない少女を僕は見つめる。
「お前が初めて私に会った時。この町を大陸を壊す事ばかり考えて、人を殺すことに躊躇がなかった....」少女は僕に冷たく言った。
「俺がお前と初めて会った時。こいつなら、ずっと幸せに旅ができると思った....」突如現れたドイルの影が言った。
「あなたは親身に私の話を聞いてくれた。それだけでうれしかったね?」突然現れたアンナの影が言った。
「君は変わった。変わってくれた。今では大陸を滅ぼす事などを忘れ、冒険者として過ごしている。君は変わった。しかし、私たちはもう変われない。感情のない精神の影。君は私たちを背負って生きていくんだ....。君は変われる。まだ変われる。変わり続けるんだ、レイド....」突如現れたアストラストの影が淡々と話した。僕は覚悟を決めて目を閉じ、そして開いた。
「お前の負けだ....」僕は立っていた。そして、槍がライトの腹部に刺さっている。?違う。ライトの腹部に槍が刺さっている。しかし、ライトは死んでいない。爆発する前の状態でライトが倒れている。死んでいないことが分かった僕はライトの顔の真横を全力で殴った。すると、土煙が舞い上がり、暫しの沈黙が流れる。ライトを見ると気絶していた。そして、会場が湧く。
「おおおおおお!前回の優勝者を倒しやがったぁ!」「なんて、やつだ!」「すげぇぇぇえ!」僕は控えから回復術士を呼び、ライトの回復を促す。そして、僕はそのまま会場を後にした。
僕が控えに行くとハルが目の前にいた。ハルは何かを喋ろうとして、口を噤み、そしてまた口を開いた。
「私は気にしないよ。だからさ、お前の提案通り、仲間になるよ。ライトを倒したんだから...」ハルは俯きながら言った。
「ありがとう....」僕はそのひとことを発して椅子まで歩いていき、そのまま寝転んだ。
次の闘いは鉄ナックルのサンム対弓のヤーズだ。僕は寝転んだ場所に柵の建てられた覗き穴があるのを見つけ、そこから試合を見ることにした。近接では圧倒的にサンムの方が有利だが、間合いに気をつけて動けば一方的に攻撃出来るのはヤーズだ。この試合結果によって僕の対戦相手が決まるから、出来れば動きをしっかり見ておきたい。そんなことを考えていると、ベルが会場内に鳴り響いた。
先に動いたのはサンムだ。鉄のナックルを盾のように扱い、矢を受けないようにしているようだ。そして、負けじとヤーズが動く。ヤーズは弓の中仕掛けに触れ、引く。すると光の矢が現れる。そして、次の瞬間その光は神々しいまでに光り、一瞬で勝負は決まった。サンムの鉄ナックルを砕き、喉元に光の矢が突き刺さる。サンムは蹲り、吐血する。そして、倒れた。
「弱すぎて話にならなかったよ...」ヤーズはその言葉のみを発して会場から出ていった。回復術士がサンムの脈を測ろうとすると、既に事切れていたそうだ。
シードの関係で弓のヤーズと剣のラフノが1時間後に闘うようだ。剣のラフノ、弓のヤーズ、僕は二人の動きが分からない。つまり、ほぼ情報がないからどんな行動をするのか全くわからない。この試合で二人の行動を見れたらいいが....。僕がそんなことを考えていると、ハルが僕の傍に来た。
「どうだ?優勝出来そうか?」ハルは首を傾げて言った。
「正直、勝てる気はあまりしてない。さっきの弓使い...、ヤーズは気を付けないと一瞬で方が付くだろうし」僕は冷静に分析する。そんな時に背後から声をかけられた。
「あなたがレイドさん?」声をかけてきたのは弓を背中に背負っている人。ヤーズだ。
「そうですが?」僕はヤーズの声に応じた。
「次が準決勝みたいで、緊張しちゃって。たまたまレイドさんを見つけたので声をかけさせて貰いました」ヤーズはそう言ってお辞儀をした。話しかけてきた理由になりえないとは思ったが、僕はそこに対しては言い返さなかった。
「そうか。あ、そう言えばさっきの矢の攻撃凄かったな」僕がそう言うとヤーズは胸を叩いた。
「そうでしょう!そうでしょう!ただ、あの技は最後まで取っておきたかったんですよ!残念です...。だから決勝はあまり期待しないで欲しいと伝えたくて、声かけたんでした!」ヤーズはそう言って笑った。
「わかった。手加減はしないつもりだがな」僕はニヤリと笑って言った。すると
「なんでですか!」ヤーズは僕の言葉に強く当ってきた。しかし、笑いながらだから冗談だということは分かる。そこに剣のラフノが加わった。
「次お前とだったな弓の人」ラフノがヤーズに言う。
「ヤーズですよ!名前呼んでくださいよ!もう十分長い付き合いでしょ!」ヤーズはラフノにそう言った。そこで僕は疑問が生じた。
「君たち、どういう関係??」僕は困惑しながら聞いた。
「「あ、旅仲間ですよ」」ヤーズとラフノは同時に答えた。
どうでしたか!?
面白く読めたなら良かったです!
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