ライト
闘技場のストーリーがもう少し続きます。
16話
僕は宿屋のベッドにて今日言った僕の発言を思い返した。
━━━━「それでも!殺してはならない!人が人を殺すなどあってはならない!」━━━━
どの口が言えるんだよ...。散々人を殺してしまった。1番の人殺しが....。僕は自分を悲観するように蹲った。
シーンとした部屋に廊下から誰かの会話が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
「ぼくは下手に出ていただけだと言うのに!あのレイドとかいう“ 偽善者”のせいで!ぼくの顔面に泥を塗りやがったっ!」マストラと思われる声は僕を貶しているようだ。
「まぁまぁ、私がトドメを刺すので今は抑えて...」マストラを宥めるように話す声は槍の使い手、ライトだ。
「絶対勝てよ!」マストラの怒声にライトは
「もちろん」優しく答えていた。僕も甘く見られたものだ。僕には誰も勝てないのに、まぁ殺すわけにはいかないから一撃必殺っぽかったら避けるけど。
そういえばハル大丈夫かな?相当な重傷だったが。明日になったら真っ先にハルの場所に行ってみるか。そのまま夜は更ける。
━━━翌朝。
朝早くに僕は闘技場に行った。闘技場の控えには幾つか部屋がある。ハルと書かれた札の部屋にハルがいるはずだ。ハルの札を見つけて入ると、丁度着替えているハルがいた。僕は見なかったことにして部屋からゆっくり出た。部屋のドア代わりにカーテンだったのが幸いした。ハルの部屋の前で少し待ち、部屋に入ろうとすると、ハルの独り言が聞こえてきた。
「分かってた...。分かってたけど....。でも、やっぱり....。悔しい....」ボソッと放ったハルの言葉は悔恨の念に囚われていた。僕は時間を置いてハルの部屋に入った。
「怪我大丈夫か?」僕はいつものように聞いた。
「あぁ。全然痛くない!いやぁ、悔しいなぁ!」ハルは悔恨を断ち切るように言い放った。そこで僕はある提案をした。
会場から声が聞こえて来た。そろそろ、僕の出番って事か。ライト....。昨日闘ったマストラよりも強い。ナイフ1本で勝てるとも思わない。さらに前回の優勝者ときた。強行突破を計るか?いや、心臓を突き刺されておしまいだ。そんな事を考えていると会場への門が開かれた。僕の出番だ。僕が会場に足を踏み入れるとブーイングの嵐。そしてライトが入る時は歓声の嵐。真逆だな。両者中央に向き合う。
「君さ、ハルって子と知り合い?」ライトの唐突な言葉。
「そうだが?」僕がそう言うとライトが微笑を浮かべた。
「お互い頑張ろう」ライトはそう言って手を差し出してきた。僕はライトの手を握る。握手と言うものだ。そして、手を離し向き合うとベルが鳴った。
「終わらせてもらうよ!」ライトはそう言って僕の肩の関節を一点集中で狙ってきた。僕はナイフで槍を弾く。弾くと火花が飛び散る。そこで会場は盛り上がる。
「なんだ?大した事ないな?これは僕が勝てそうだ」僕は構えを解いて喋る。
「へぇ...。じゃあこれはどうだ?」ライトはそう言って槍に魔力を巡らせた。すると槍は灼熱の炎に包まれる。
「これでいいかな!」ライトは言葉に合わせて突撃してきた。これはまずい!僕は咄嗟にナイフで弾こうとするも、ナイフは槍に当たったところから煙を出して溶けだす。僕はその勢いに乗じて後ろに避ける。舞い上がる砂埃が会場を更に盛り上げる。
「魔法系ありなのか!?」僕がそう叫ぶ。
「ここは殺しのある所だ!だからなんでもやっていいんだよ...」ライトは僕を睨みながら言った。まぁ、能力をバリバリ使っている僕が言えたことではないが、今はそんなことどうでもいい。勝つしかないんだ。
「じゃあ次は僕から行くぞ」僕はそう言って溶けかけたナイフを持ち、突進する。
「何を仕掛けるつもりだ?」ライトは微妙な顔をして言った。僕は右足のみに力を入れ、ライトの前まで跳ぶ。そして、その勢いのままナイフをライトの肩に突き刺した。
「無策で来るとは...思わなかった...!」ライトは不意を突かれ、痛さで顔を歪ませていた。
「これで槍は持てないだろ!」僕はライトの顔を見上げながら言った。しかし、ライトは片手で槍を振り回す。1度距離を空けて作戦でも立て直すつもりか?そうはさせまいと僕が動こうとすると、会場内に爆発音が轟く。砂埃に隠れたライトを目を凝らして見る。ライトからは目に見えるほどのオーラの様なものが溢れ出ていた。
「これでお前の負けは決定した!圧倒的な力の前にひれ伏すがいい!」ライトは微笑を浮かべながら興奮した様子で言った。
「まさか、この爆発音の原因はお前か?」僕が恐る恐るライトに聞いた。
「あぁ...。お前はここで丸焦げにする...。ははっ....」ライトは首を傾げて言った。どうすれば、僕が負けずに勝てる?さっきと同じように突進...。無理だ。目の前で爆破されて目眩しされた後、体を爆破されておしまいだ。じゃあ、一瞬で背後に周り込み、ナイフを突き刺す。無理だ。今のあいつは神経が研ぎ澄まされている。懐に潜り混んだところですぐ爆破されておしまいだ。僕が考えているところにライトが喋る。
「もう動かないつもりなのか?諦めたのか?ん?はぁ...。つまらない。もういいよ。そこから動くんじゃないぞ...」ライトは僕を睨みながら言った。そして、ライトは爆破を背に向けて連続で撃ち、高速移動してきた。僕は呆気に取られて、バランスを崩す。そして、そのまま爆発を1度左手に受け、爆破に当たった部分から血が吹き出す。
「........ッ!」僕は痛みに耐えられず声が出る。血が吹き出る左手を押さえて僕は後ろに下がる。地面に滴る血を僕は眺める。
「痛いだけだよ?早く死んで欲しいかな?」ライトはそう言いながら歩いて近づいてくる。僕はそれに合わせて後ろに後退る。
「そうか。でも諦めるわけにはいかないんだ....」僕は顔を歪めながら言った。
「そう?じゃあ死んで」ライトは大爆発を起こし、一瞬で僕の顔が触れるくらい近くにきた。そして、僕の腹部に槍が刺さり、爆破の熱が全身に巡る。そして次の瞬間僕の体は弾け飛んだ。
どうでした?
楽しく読めたなら良かったです!
次回もよろしくお願いします!