出会いと別れ
今回は短くなっております。
12話
朝だ。ナルファはまだ寝ている。
ふと、腰に手を添える。
そういえば、ナイフがもう壊れかけだったな。
僕はそこら辺の頑丈な草をナイフの持ち手に巻いた。
その場凌ぎにしかならないだろうが、何もしないよりはマシだろう。
そんな作業をしていると、ナルファが起きた。
「ん....。どこか行くの?というか移動しないとだもんね」ナルファは起きて早々に動けるみたいだ。
「じゃあ行くぞ」僕は町へと足を動かした。
ギルドの人たちはもう僕を追っては来ないのか?
出来れば早くナルファと別れて一人行動になりたい。
今後ナルファにも僕の火の粉を浴びさせるわけにはいかないからな。
「どこに行くの?」
「スノイヤっていう港国だよ」僕は優しく答えた。
しかし、ナルファはわかっていない様子だった。
そのまま僕らは歩いた。
ここがスノイヤか。道中特に問題がなくてよかった。
「さ、ここでお前とはお別れだ。気を付けて生きろよ」僕がそう言ってナルファを突き放すと同時に、地面に衝撃が走る。
驚きを隠せず僕は周りを見渡す。
その時遠くの方で土煙が上がる。
次に山が動き出した。
山が生き物の様に動き出したのだ。
「なん、だ?あれは?」不意に出た言葉は僕の脳内を掻きまわす。
更に地響きは強くなり、砂煙に岩が混じったものが勢いよく飛びあがった。
僕は曲線に飛ぶ岩を眺める。
段々と僕に近づいてくる。
僕は、背後に腰を抜かしたナルファを見つけた。
僕は強く目を閉じて、ゆっくり開いた。
無意識に僕の足が動く。
僕はナルファを抱え込むように守る。
そして、無数の岩が僕の背中にぶつかる。
「痛.....っ"!」声を抑えられない程の痛み。
背中が凹みそうだ。
岩の流星群が止む。
土煙が上がった場所を見るとそこには想像を絶する景色が広がっていた。
亀のような姿をした山だった。
その亀は移動は遅い。
しかし、一歩一歩、地面が揺れる。
「大丈夫?」僕が抱えて守っていたナルファが口を開いた。
その声で少し安心してしまった。
あの山のような亀、こっちに向かってきてないか?
このままじゃ、スノイヤにいる人が全て死んでしまう。
僕はここから後ろに下がるわけにはいかない。
「おい、今すぐスノイヤに行って船を借りて、どこか遠くへ逃げろ」僕はナルファにそう言った。
しかし
「私は残ります」ナルファは僕の服を掴んだ。
「お前は邪魔なんだ!いいからスノイヤに行け!」
ナルファは泣きながらスノイヤに走っていった。
これでいい。
さぁ、グランドの力を解放しろ。
山の様な亀はスノイヤへと向かってくる。
僕は身体能力強化し、亀に向かっていく。
足の力で速く走ることができる。
勝てる気はしない。
でも、勝たなくちゃいけないんだ。
僕の目の前には山の様な亀。
踏まれたら一瞬で潰れてしまうだろう。
僕は全力で足に力を入れ、跳んだ。
山の様な亀より高く上がった僕はちょうど真下が亀になったときに急降下した。
山の様な亀は僕の攻撃をものともしない。
グランドの力でも止めれないのか。
僕は亀の背中を走り、頭の部分まで到達した。
まずは、目だ。
僕は亀の鼻に足を掛け、亀の目に拳を入れた。
すると亀は悲鳴を上げ、亀は暴れ始めた。
その揺れに耐えきれず、そのまま僕は振り落とされた。
圧倒的な力の差。
僕では到底かなわない。
僕があきらめたかけたとき”それ”は起きた。
「消失魔法。ディペンヴォ!」謎の魔法に謎の声。
救われたのは確かだが....。
危険な魔法なのには変わりない。
僕は周りを見渡す。
そこで不自然に浮かぶ影を見つけた。
そして上を見上げるとそこには
「ナルファ?」先ほどまで一緒に行動していた人が大魔法を使っているかと思うと腹が立つ。
その影の正体がゆっくりと空から降りてきた。
そしてその人は口を開く。
「あんた誰?本当邪魔だったんだけど?」随分と態度がでかい人の様だ。
そこにナルファの声が響く。
「大丈夫だったんですか!良かった」ナルファの声で僕は困惑する。
でかい態度の人が口を開いた。
「ナルファ。ここで何してんの?一人で生きるんじゃなかったの?こんなところで油売って....」態度のでかい人は背伸びしながら言った。
「お姉ちゃん...。それでも私は一人で...」ナルファは震えた声を出した。
背丈といい、顔つきといい、呼び方で姉妹なのだと理解する。
「今は見逃すけど...。次に見たときまだ一人じゃなかったら...。その時は...分かってるよね?」ナルファの姉は言葉を告げ終えると、彼方へ飛んで行った。
「ナルファ。またな」
僕は俯くナルファに手を振り、違う町へと足を進めた。
どうでしたか?
楽しめたのなら幸いです!