状況の読めない状況
101話
ここはどこだ?周りの風景は真っ暗で何も見えない。
思い出した。ここはレイドの生んだ灰色の世界だ。その灰に俺たちは呑み込まれたのだと、思い出す。
突如、世界に地響きが起こる。何が起きているかも分からず、身体に浮遊感が得られる。その瞬間俺達こ身体から灰が全て消え失せた。
「ここは一体?」俺がそう言い放ったのも無理はない。なぜならそこは空間がある事さえ危うい、何も無い世界だったのだから。真っ白な空間。そこにハル、ヤーズもいた。だからと言って何がどうなるかも分からないが。
「出口らしきものはあるか?」俺はそう言ってハルとヤーズに視線を送った。
「いや、何も見えないな。」「何も見えません。」ハルとヤーズは、ほぼ同じタイミングで言い放った。
路頭に迷っている時、世界は緑に包まれた。
浮遊感は無くなり、俺の足は草原を踏んでいた。1つの大木に人影が映っていてその後ろ姿だけでレイドということがわかった。
「レイっ....!」俺がレイドの名前を呼ぼうとした瞬間草原は大木へと集まっていく。それにつられて俺達も大木に吸い込まれた。
はしゃいでいる声が聞こえる。そよ風が俺の頬を撫でる。目を開くとそこはひとつの村があった。
「次はなんだ?」ハルが先に話した。さっきから人形のような扱いで疲れきっているようだった。
「恐らくこの村はレイドの村です。」ヤーズが口を開けて言い放った。
「なんでだ?」俺の問いかけにヤーズはすぐ答えた。
「私はレイドの村に行ったことがあります。その時の村の雰囲気は大違いですが、空気が同じ感じがするからだけですけど...。」ヤーズは自信がなさそうに言った。
「自信がないのは道化師の幻想の中でしか行ったことがないからだろ?」俺はヤーズを理解しているかのように言い放った。
「どちらにしろ、ここはレイドの心の中だ。レイドに関係していないものなんかないと思う。」ハルは冷静にそう言った。
村の中に花畑があり、そこに2人の子供がいた。
「これはこう、これはこうすれば....。ほら!出来た!」1人の少女はそう言って花冠を作っていた。その隣にいる子は満面の笑みを浮かべて言葉を放つ。
「すごーい!どうやったのおねーちゃん!」2人は姉妹なのか、分からないが、そんな雰囲気が口調からも漂っていた。
「君たち、それどうやるの?お姉さんにも教えて?」そう姉妹に言い放ったのはヤーズだ。ヤーズは笑みを浮かべて姉妹と同じくらいの背丈まで尻を地面に付けずにしゃがんだ。
「教えない!これは極秘なんだから!」姉と思わしき少女はそう言って明後日の方向へ向く。
「...ない!」妹までも真似をして明後日の方向へ向いた。
「そっかぁ、残念だなぁ。じゃあお名前教えてくれる?」ヤーズはそう言って子供たちの名前を聞き出した。
「私ヒョウリ!」ヒョウリと名乗る子供は手を上げて元気よく答えた。
「ヒョウカです...。」ヒョウカと名乗る子供はヒョウリの妹だとすぐにわかった。
「ありがと!じゃあ、またね!」ヤーズはそう言って立ち上がってこちらに向かってくる。
「やっぱりここはレイドの心みたいですけど、なにか違う気がします... 。」ヤーズは落ち込んだ様子で言った。
「とりあえず、色んな人がいる。話を聞いてみるしかないな。」ハルはそう言って近くにいる人へと向かって行った。
「わかった。じゃあ、一旦別行動だ。」俺はそう言ってハルと逆方向へ歩いて行った。
「あんたは....。1度合ったことあるよな?」俺は一言放った。
「お前は昔からこの村にいたのか?」私は大きい身体の男に聞いた。
「あ?そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。今となってはどうだって良くなっている自分がいる。ただ、鮮明に覚えているのはよく助けを求められていた気がする。」男は私に全く目を向けずそう言い放った。
「お前。自分の名前分かるか?」私は静かに聞いた。
「あ?バカにしてんのか?」男はそう言ってようやく私を見た。
「俺の名前はグランド。それだけだ。」男は眉間に皺を寄せながらも言い放った。
「そうか、ありがとう。」私はそう言って途中途切れている空を見上げた。
「あなたの名前は?」私は突拍子もなく聞いた。
「別に...?」男はそう言って寝転がっているだけだ。
「どうしてここにいるのですか?」私はさらに聞く。
「どうだっていいんだ。その方が楽だよ。」男は私の声が聞こえていないかのように話す。
「どうしてですか?」私は未だ優しく問いかける。
「あ、でも、あ、いや、どうでもいいや。」男はそう言って無言になる。
「私はあなたが何をしたいのか分かりません。教えてください。」私はもう一度問いかけた。
「さっきから誰?俺は誰にも関わって欲しくないんだ。黙ってくれよ。」男は突如として敵意を剥き出しにした。私はその威圧に気圧される。
どうでした?
面白かったならよかったです!
次回も読んでくれると嬉しいです!