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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
10/288

覚醒

10話




 地図上の大陸。僕がいたのは地図の左上辺りの大陸だった。


 今では少し右下に行った辺の大陸にいる。


この大陸は通称天空の大陸と言われている。


その理由としては、他の大陸より崖が多い事。


他には生き物が生まれる前からずっと雲で隠れている山がある事からだ。


しかし、実際その山がある事すら怪しいが...。


 そもそもどうやってこの大陸に上陸できたか。


それは今では幻の大陸と言っても過言ではない大陸。


地図上では左上の大陸だ。


 僕は昨日までその大陸にいた。


しかし、夜が明けるとその大陸は無くなり、僕は不思議な力で空の彼方へ吹き飛ばされた。


僕は腰に刺していた特殊能力付きのナイフに魔力を込め、落下する自分を守るようにナイフの特殊能力である魔障壁を展開した。


落下したときにはダメージを受けなかったが、魔障壁はすぐに消え、尻餅を着いた。流石に痛かった。


 しばらく歩くと町が見えてきた。


 いや、町じゃないな。


港の国だろうか。


 門には”スノイヤ”と書いてあった。


海の近くの国で船着き場に船が出入れしているところを見ると、貿易が盛んなことをわからせてくれる。


 さて、何をしようか。


さっき、魔力を込めすぎてナイフの持ち手がひび割れてる。


新しいのを買わないとな。


 そういえばモンスター全然狩ってないからお金がないんだった。


そうだ。


スノイヤに入る前にモンスターを狩ってお金を稼ごう。



 スノイヤから少し離れた場所に洞窟があった。


 再び冒険者っぽいことができそうだ。


僕にもまだ希望の様なものがあるのだろうか。



 洞窟の入り口には血が散っていた。


濃厚な鉄の錆びれたような臭いは僕の警戒心を高める。


この先に何が待っているのか。僕は微笑を浮かべた。


 「あの、その洞窟入らないほうがいいですよ?」背後から声がした。

「大丈夫だ。冒険者なんで」


僕は洞窟に入った。


 洞窟に入って1番先に目に付いたのは錆び付いた剣だ。


僕は錆び付いた剣を拾い上げた。


 モンスターにでも連れ去られたのだろうか?


連れ去られたとしたら急いで探そう。


 僕はそこらに落ちている棒切れを拾って炎魔法を使い、棒先に火を点した。


 直ぐに焼け落ちそうだが真っ暗よりマシだろう。


幾つか木を拾っておこう。


 進もうにも迷ったら困るな。


洞窟の地面にでも掘りを入れておこう。


そう決めると僕は錆び付いた剣を使って地面をバツ印に傷つけた。


 さて、奥に進もう。


 そう決めて進もうとすると、モンスターが現れた。


ブラッドバッドだ。


簡単に言えば吸血コウモリだが、こいつは1匹殺せば群れを呼び寄せる性質がある。


だから眠らすことが1番の対処法だと思う。


 しかし、今僕は特にそんな魔法を使える訳では無い。


つまり、一択だ。ここで殺す。


後に来た群れも全て殺す。


脳筋の考えだが、今の僕にはこれしか思いつかなかった。


 ブラッドバッドは僕に襲いかかってきた。


僕は迷わず腰に刺していたボロボロのナイフを取り出し、斜めに斬った。


僕の一撃でブラッドバッドは地面に落ちた。


 まだ生きているようだ。


僕にとっては好都合だ。


殺さずにいよう。


 ブラッドバッドを後にし、さらに奥へと進んだ。



 洞窟の奥には多くの冒険者であろう人達が山のように積み上がっていた。


立ち込める腐臭を鼻を潰すようにつまんで対処する。


 この空気をずっと吸っていたら、頭までおかしくなりそうだ。


 ふと、後ろを振り返ると先程まであったはずの道が無くなっていた。


目印と同時にだ。


 静寂が流れる。


そして次の瞬間僕の全身に衝撃が走る。

「.......ッ!」堪らず僕は痛みの声を上げた。


圧倒的な力。


僕は洞窟の壁際まで吹き飛ばされた。


洞窟の脆い壁が少々崩壊する。


しかし、僕を殺す威力のない力。


 まだ冒険者として勝てそうだ。


 僕はナイフを取り出し、臨戦態勢へ移る。


 モンスターは強靭な肉体に、濃い体毛が背中を覆うように生えている。


そして、牛のような顔。


 決まりだ。


こいつは“ ミノタウロス”だ。


 ミノタウロスはケンタウロスと違って力に特化されているモンスターだ。


だから、動作が遅い。


 おかげで多少は避けやすいが、少しでも掠れば痛みを伴うだろう。


そもそもあの強靭な肉体にナイフが効くかどうかさえ怪しい。


取り敢えず今は戦うしかない。


 そう決めた時だった。


既に避けれそうも無い拳が目の前に飛んできた。


僕は咄嗟に下に避ける。


いや、避けてはいない。


足が竦んだのだ。


 僕は人に殺されても反撃できるが、モンスターに有効なのか?


僕はにやける。


楽しくなるな。


ミノタウロスは動けない僕を躊躇なく殴りに来た。



 突如、何も無い空間に飛ぶ。


 「ここは....?僕は死んだのか?」僕が声を出すと、背後から声がした。


「おいおい、こんな所で死ぬのか?」図太い声。


聞き覚えのある声だ。


「お前は、グランド?」僕は呆けた顔をしていた。


グランドは僕を見て笑っている。


 また俺を殺しにかかるのか?


僕はグランドを睨む。

「残念ながら俺はお前を殴れないし、勿論殺すことも出来ない。俺はお前の心に憑いてる呪いのような物だ。そして、それを引き換えに俺の力をお前は使いこなす事ができる。このチカラを使うかどうかはお前次第だ」


「僕がお前の力を?僕はお前を許さない。お前が何もしてこなけりゃ今頃、僕は冒険者として生きられた筈なのに...。けど、もうそんな事考えたくない。僕はお前を使う。使わせてもらうぞ」


僕はグランドの堅い皮膚に包まれた手を掴む。


 そして、次の瞬間元の世界に戻る。


 ここは?洞窟か。


目の前にはミノタウロス。


 ミノタウロスの拳が飛んでくる。


 しかし、僕は片手でミノタウロスの拳を止めた。


 その事に驚いたのかミノタウロスは次々と僕を殴り出す。


 僕はミノタウロスの拳を全て捌く。


 これがグランドの力。


ただの冒険者じゃなかったんだな。


 グランドの能力は身体能力強化のようだ。


ミノタウロスが息を荒くするが僕は平然とミノタウロスの攻撃を防ぐ。



 そして、遂にその時は来た。ミノタウロスに隙が出来たのだ。


その隙を僕は見逃さず、まず一撃、もう一撃そして最後の一撃。


 すると、ミノタウロスの体は粉砕した。最後の攻撃は魔力を少々使ったために一気に息が上がる。


 僕は深く息を吐き、壁にもたれ掛かる。


 そのまま僕は深い、深い眠りについた。

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