一切の特殊能力を持たない異世界転生ものの主人公
初投稿で文章もまだまだつたないですが、最後まで読んでいただけると幸いです。
――君たちはあるだろうか。異世界転生もののラノベを読みながらもし異世界転生ができたらなぁと考えたことが。
――君たちはあるだろうか。目を開けたら異世界に転生してたらなぁと願いながら朝起きていつもの風景に絶望したことが。
そう、あるのだ。あるに決まっている。何せこの俺、井上ヒロもその一人だったのだから。ありえないとわかっていても、心のどこかで万が一、億が一であるかもしれないと信じてしまっているのだ。
しかし俺は今日、運良くいや、運悪くその億が一の異世界への切符を引き当ててしまったのだ。なぜ運悪くなのか、それは全て今俺の前にいるこのド畜生女神のせいだ。
それは遡ること、二時間前のことだ。その時の俺はバイトの帰り道で疲弊しきっていた。ここで素直に家に帰って寝てしまっていたら良かったのかもしれない。だが俺は何を思ったのか特に欲しいものもないのにコンビニに足が向いてしまったのだ。そこで不運にも事故に遭い、俺の短い人生は終わった……はずだった。
しかし、俺が目を覚ますとそこには女神がいた。女神は俺の早すぎる死に同情し、異世界で第二の人生を送る選択肢を与えてくれた。当然俺は異世界を選んだ。
「異世界で第二の人生を送ることにします。女神さま」
女神は頷き、全ての元凶となる悪魔の言葉を放った。
「でも、チート能力とかで無双する感じのやつはもう飽きたからそういうのは無しね?」
「は?」
「それじゃあ、いってらっしゃーい!」
「いやちょっとまっ……」
そして俺はチート能力も何も持たずに異世界へと送られた。
そして今に至る。
「それで?なんの能力も持たずに転生させられた俺があまりにも惨めだから私が付いていってあげる?」
俺は転生したばかりでまだ混乱する頭を整理しながら目の前にいる女神の言葉を復唱した。
「うん、そーゆーこと」
なるほど、慈悲深い女神もいたことだ。しかし、そもそもの元凶は
「……じゃね?」
「ん?」
「いや、何の能力も持たせずに転生させたの女神さまじゃね?」
「いやそうだけど、後々考えてみたらさすがにかわいそうだったかなぁっていうかなんていうか……ねっ?!」
いや、ねっ!?って満面の笑みで言われましても……。でもまぁ女神だし、下手な能力よりは良かったかもしれない。前向きに考えるとしよう。
「それで女神さま、これからどうすればいいの?」
「えーっと、近くの村に宿屋があったはずからそこ行こう」
「そうだな、とりあえず衣食住は揃えておきたいし」
「それじゃあ、出発!」
俺は意気揚々と森へと入っていく女神の後をついて行った。
村に向かう道中、俺はふと思ったことを口にしてみた。
「そういえば女神さまの名前教えてよ。流石に人前とかで女神さま呼びは怪しいし」
「うーん、名前かぁ……」
そう切り出すと女神は少々恥ずかしそうに俺にこう言った。
「長いこと名乗る機会がなかったから覚えてないんだよねー」
「覚えてない……」
予想外の回答が返ってきて困惑していると、
「じゃあ、ヒロ君が私の新しい名前つけてよ」
「は?」
この女神は何を言っているんだ?つけるって俺が?女神の名前を?
「それって大丈夫なの?」
「何が?」
「いやなんて言うか、女神的にっていうか」
「まあ、ダイジョーブ!」
「そ、そっか」
ほんとに大丈夫なのかはかなり不安だが、まあいいや。本人がそう言うんだから大丈夫なのだろう。しかしよくよく考えてみたらゲーム以外で人に名前なんて付けたことがない。
「名前か……。やっぱ女神だしそれっぽい名前がいいよな。それにこの世界どことなく西洋に近い気がするからカタカナの方がいいよな。その上……」
そう俺が一人でブツブツ言っていると女神があきれた顔で言った。
「別に何でもいいから早く決めてよ」
ほう、なんでもいい……なら、ゲームのメインヒロインの名前にするか。
「ルナ」
「ゲームのキャラクターの名前かぁ。まあいっか。なんでもいいって言ったのは私だし」
こうして女神の新しい名前が決まった。
アニメとかだったら普通、ここの場面転換明けで村に着いてギルドなり宿なりに向かっていることだろう。しかしここは現実。そうは問屋が卸さない。先の会話から数時間後、俺たちはまだ森を彷徨っていた。
「おい、もう十キロは歩いてるぞ」
「こんなに遠くないはずなんだけどなー」
「まさか迷ったんじゃないだろうな」
「……」
「迷ったんだな!?そうなんだな!?」
そう俺が嘆いていると、ルナが前を指差しながら顔を青くして
「ねぇ……ヒロ君、あれって……」
「ん?あれ?」
俺がその指さす方向を見るとそこには異世界に行ったら俺が一番出会いたかった、そして今一番出会いたくなかった…
「黒龍……」
確信した。気付かれた瞬間終わる。
「ヤバいよ!いきなりボス級モンスターじゃん!」
「騒ぐな!気付かれたらどうすんだ!」
とっさにルナの口を封じた。しかし、遅かった。殺気が俺たちを包み込む。
「くそっ気付かれた!ルナ!お前女神なんだからどうに出来ないのか!?」
「無理だよ!だって私、戦闘能力皆無だもん!」
「使えねー」
「やめて?そんなこと言わないで?私メンタル弱いの!」
そうこうしているうちに黒龍は俺たちを燃やし尽くす準備万端の姿勢になっていた。
「「終わった……」」
俺たちが死を覚悟したその時だった。
「光よ、かの黒き龍を討ちぬき消し去りたまえ」
背後から詠唱じみた女の子の声がしたと思うと、一筋の光が黒龍を貫いた。そして黒龍は森全土に響き渡るほどの凄まじい断末魔とともに消え去り、そこには黒い水晶だけが残っていた。
「何だったんだ……今の……」
「た、助かったんだよね?私たち」
俺とルナが目の前で起こったことに啞然としていると、
「怪我はないですか!?」
先ほど後ろから聞こえた女の子の声とともに白く弦のない弓を持った一人の女の子が森の奥から現れた。
「安心してください。私はただのエルフ。怪しいものではありません」
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