4.ちびちびって言わないでください
「本当に昨日はごめんね〜」
「う、ううん! 大丈夫!」
エリサさんに連れられてこの村の案内をしてもらえたのは結局次の日になってからだった。
なんか、15歳にならないと暗くなってから外にでちゃダメなんだって。
怖い獣が出るとかいってたけど本当かな……?
隠し事してる気がするけど……あたしにはよくわかんないや。
「セレイルちゃんは今まで何してたの?」
「えっと、学校でお友達とおしゃべりしたり……」
「学校!? セレイルちゃん実はすごくお金持ち!?」
「え、え?」
あたしのうち、そんなにお金持ちじゃないと思うんだけど!
いつもお父さんのお給料日の近くはお母さんが家計簿見ながら頭抱えてたし!
「学校ってみんなが行くんじゃないの?」
「そ、そんなことできるわけないじゃない。学校にいけるのは一部のお金持ちだけよ。あなた、やっぱりグズミアとかにいたのかしら……」
「グズミア? よくわかんないけどあたしは行ったことないよ」
でもそっか、学校ってみんな行けるわけじゃないんだ……
あたしの周りの子はみんないけてたから全然考えたことなかったや……
「……私たちとは違うのにグズミアも知らない……? ってことはモーズとかエジックも知らないってこと……?」
あれ、なんだかすごくエリサさんが悩んでる。
あたしが知らない単語ばっかりだし。
ほんとのこと、話したほうがいいのかな……
「あ、ごめんね、セレイルちゃん。とりあえずお話ししながら歩こっか」
「う、うん!」
2人とも立ち止まってたから気を使わせちゃった。
それともあたしがじっとエリサさんのこと見てたからかな?
「えっと、この村はシュバントって言って私たちがまとまって生活しているの。狩りをしたり、作物を育てたりして協力して生活してるわね」
「お金とかは?」
「一応、違う町に売ったりしてお金は作っているけど、ここで売買をするわけじゃないからあんまり使ってないみたいね」
「そうなんだ」
なんだかのんびりしてる感じでいいなぁ。
まだ少ししかここで生活してないけど、雰囲気がすごくあったかくていい感じ!
「ここがぞk……村長の家。今はお出かけしてるからいないけど、今度挨拶しに来なきゃだね」
なんかすごくおっきい家だなぁと思ったらやっぱりすごくえらい人の家だったんだ……
って、エリサさん今挨拶しなきゃって言った!?
ええ、そんなすごい人とお話ししたことなんてないから今からすっごく緊張しちゃうよぉ……
怖い人じゃないといいなぁ。
「あはは、そんなに怯えなくても大丈夫。すごくいい人だし、小さい女の子には優しいから」
「そ、そうなんだ」
別にろりこん? とかじゃないよね?
学校でそういう人がいるって聞いたからちょっと怖くなっちゃう……
「で、ここが村の出入り口。すごく綺麗な門でしょ?」
赤と黄色で綺麗に塗り分けられた大きな木が鳥居みたいに組まれてる大きな入り口。
すごく綺麗だなぁ……
「村長とお父さんが2人で作ったのよ。すごいでしょ」
「そ、そうなの!? それは本当にすごいね!」
それにしてもエリサさん、本当にお父さんのこと好きなんだなぁ。
なんだか、聞いててこっちまで幸せになっちゃう。
「バカ娘、どこまであのおっさんのホラ吹きを信じてるつもりだ」
「バカとは何よ。それにお父さんはちゃんとこれは作ってるもん!」
あれ、この男の子は誰だろう……?
エリサさんとあんまり仲良しじゃないみたい。
「あの……」
「なんだ……っ! お前……!」
「きゃっ!」
鋭く睨まれて私は思わず、エリサさんの後ろに隠れる。
うぅ、ちょっと怖い……
「こらステラ、こんなに小さい可愛い子を怖がらせちゃダメよ」
「だがエリサ、そいつは……」
「父と長の判断よ。詳しくここで話すわけにはいかないわ」
「……大体把握した。すまなかったな、ちびっ子。俺の名はステラ・シュラウト。怖がらせるつもりはなかったんだが、見知らぬ顔だったからつい睨んでしまった。許せちびっ子」
「ちびちびっていうのやめてください。私にはセレイル・レッダローズって名前があるんです」
「それはすまない、セレイル」
ちょっと怖いけど、悪い人じゃないかも?
「あんたはどうしてこっちに?」
「たまたまだ。少し狩りにでも行ってこようかと思ってな。お前らは……こいつの案内か」
あ、また名前呼んでくれない。
こいつって言われた。
「まあそんなところ」
「あまり遠くに行きすぎるなよ。今日はフェルニルが騒がしい」
「忠告ありがと。あんたも気をつけなよ」
「俺はそんなヘマしない」
「はいはい」
うーん、実はこの2人仲良しさん?
言い合いしてるけどすごく楽しそう!
「ねえ、気をつけてって?」
「……ああ、この村の外に出るとね、危ない動物がたくさんいるから」
そっか、確かに動物さんたくさんいるって言ってたもんね。
「さ、私たちも行きましょ」