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フェバル〜少女の行き先〜  作者: 月白弥音
第二章 剣と魔法の町サークリス
12/14

12.あ、ありがとうございます……

 気がつくと私は路地裏のような場所にいた。

 綺麗になってる私の体。

 刺されたはずのお腹にも傷は残っていなかった。

 お洋服もエリサさんに買ってもらったのだ……

 あの時、ボロボロになっちゃってたのに今は綺麗になってる……

 それより私、死んじゃうんじゃなかったの……?

 なんとなくわかってたけどどうして私だけ死んじゃわなかったんだろう……

 私が別の世界に連れてかれちゃったのはあの時わかった。

 でもどうしてなんだろう……エーナさん……ううん、誰でもいいから教えてよ……

 路地裏から明るい方に歩いて行ってみる。

 そこには綺麗な服を着てる人がたくさんいて。

 綺麗な石造りの街が広がってて。

 気づけば私の目から涙が溢れてきていた。

 助けてあげられなくてごめんなさい

 私だけ逃げちゃってごめんなさい

 私だけ守っちゃってごめんなさい

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……


 むねがぎゅってくるしくなって

 あたまがまっしろになって

 めのまえがまっくらになって……?







 エリサさんの村が真っ赤に燃えている。

 私は走り回ってエリサさんを探す。


 「エリサさん! どこ! どこにいるの!」


 さっきから誰ともすれ違ってない。

 エリサさん……

 村長さん……

 みんな……


 やっとの思いでエリサさんの家にたどり着く。

 幸い、まだそんなに燃えてなかった。


 「エリサさん!」


 見知った後ろ姿を見つけて私は嬉しくなる。


 「セレちゃん!」


 エリサさんも嬉しそうに私の名前を呼んでくれた。


 「エリサさん、今度は私が守るから!」


 そう言って私はエリサさんに近づく。

 今度こそエリサさんを……


 「セレちゃん……」


 私の名前をそう呼んで振り返ったエリサさんは……


 「嘘つき」


 血まみれだった。

 私が最後に見たのと同じ……


 「自分だけ違う世界に逃げて」


 違う……


 「自分だけ普通に生活できるところに行って」


 違うの……


 「私は何にもなくなってみんな死んじゃったのに」


 ……ごめんなさい


 「さよなら、セレイル」


 ……待って……


 「私のこと見捨てたあなたなんて大嫌いよ」


 エリサさん……

 行っちゃう、エリサさんが遠くに……

 待って、待って……





 「エリサさん!」


 目を開いて最初に見えたのは知らない天井だった。

 今の、夢……?

 気づいたら右手をまっすぐ伸ばしてて私はそれをゆっくり降ろす。

 ここは……?

 私、どうしたんだっけ……?

 なんでここにいるのか、前に何してたのかうまく思い出せない……

 体がなんだかすごく重たい。

 なんとか体を起こして周りを見る。

 そうして初めて私が柔かい何かの上にいることがわかった。

 これってベッド……?

 ふかふかだ……


 『自分だけ普通に生活できるところに行って』


 夢の中のエリサさんの言葉が蘇る。


 ごめんなさい……

 私のほっぺたを涙が流れる。

 胸がチクチクする……


 「あ、あの……だ、だい……じょう、ぶ……?」


 不意に横から声が聞こえた。

 ゆっくり顔を上げるといきなり目が合った。


 「きゃっ!」


 「ぁ……」


 行っちゃった……

 ここの人、なのかな……

 迷惑、かけちゃってるよね……

 今のうちに出て行こうかな……

 でもお礼も言わないでっていうのは失礼だよね……


 「あ、目が覚めたんですね」


 「ぁ……」


 なんでだろ、うまく声が出ない……


 「すみません、7日近く寝ていたのですから喉が乾燥してしまっていますよね。すぐに飲み物をお持ちいたします」


 え、私、そんなに寝てたの……!?

 そんなに迷惑かけちゃってるんだ……

 でもなんかそう言われたら喉がイガイガしてる感じするかも……


 「お待たせいたしました。どうぞ、ユーフです」


 ゆーふ? が何かはわからないけどとりあえず飲んでみる。

 うーん……ちょっと辛いようなすっきりしてるような……でも美味しいと思う。

 喉のイガイガが少し取れたところで私は持ってきてくれた人にお礼を言う。


 「あ、ありがとうございます……」


 まだ少しうまく声が出ない。


 「いえ、大丈夫ですよ。当主様もお嬢様もあなたを快く受け入れております。あ、申し遅れました、私、セアンヌと申します。そしてあちらにいらっしゃるのが、お嬢様のミリア様でございます。よろしければあなた様のお名前を教えていただけますか?」


 セアンヌさんとミリアさん……

 セアンヌさんはメイドさん……なのかな?

 なんだかお金持ちみたい……


 「えっと私はセレイル・レッダローズ、です」


 「セレイル様とおっしゃるのですね。ではセレイル様、なぜあそこにいらっしゃったのか、なぜ泣いていらっしゃったのか教えていただけないでしょうか」


 あんなところ……?

 私、どこにいたの……?

 それに泣いてたって……?

 この世界に来るまでの話をしても信じてもらえるわけないし……


 「セアンヌ、私もお母様も気になっていますが無理に聞いてはいけません」


 「ですがお嬢様……」


 「レッダローズさんはしばらくうちにいていただきましょう。お母様にお話ししてきます。セアンヌは彼女をお風呂に入れてあげて軽食を用意してあげてください」


 「かしこまりました。ではセレイル様、参りましょう」


 私の知らないところでお金持ちのお家での生活が始まっちゃったみたいです……

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