10.ひどい……
「みんな大丈夫かな?」
「大丈夫、お父さんもみんなも強いもん」
走りながら聞くと今までで見たことがないほど不安そうな顔をしてた。
見たことないほどって言えるほど一緒にいたわけじゃないけど……
でもすごく心配してることがわかる。
私だって心配だもん、エリサさんはもっとだよね。
急がないと……
私がいやって思えばそれがなくなるなら私の力でみんなを助けられるかもしれないし!
みんなに優しくしてもらってきたんだから、今度は私が助ける番だよね!
「とにかく急ぎましょう。何かいやな予感がするわ」
エリサさんのお母さんがスピードを上げたのに置いて行かれないように私も頑張って走った。
「あの、ところでなんであそこに入ってたんですか?」
頑張って走りつつもさっき教えてくれなかったことを聞いてみる。
「そうだよ、急にいなくなっちゃって!」
「あ、えっとそれはごめんね?」
やっぱりアレクさんと一緒でエリサさんには弱いんだ。
やっぱりいいな、家族って。
もういっても仕方ないけどやっぱりちょっと寂しい。
「アレクと一緒に外と中、両方から崩そうとしていたのよ。結局バレちゃってあそこに捕まったんだけど」
「なるほど……ってそれ、私だけ知らなかったってこと?」
あ、これはもっと怒りそうな気がするよ……?
「後で色々聞かせてね?」
「は、はい……」
たどり着いた村はもういろんなところが壊れちゃっててあの綺麗な門にも火がついちゃってた。
「ひどい……」
「ニド……ついに私たちを」
「モーズからの攻撃……私たちがいない間にこんなことに……」
朝まで見てた綺麗な村の様子はもうどこにもなくて。
村の全部が燃えていた。
「村長!」
門の外にある小さな木に寄っかかって座っている村長をエリサさんが見つけた。
エリサさんのお母さんは任せるわ、とだけ言って村の中に入っていった。
「おお、よく戻った……」
「大丈夫ですか! 一体何が……」
「あやつが裏切りおった……こっちの情報は筒抜けだったのじゃ……」
「それは誰なんですか! 村長!」
ボロボロになっている村長さんが苦しそうに体を起こす。
「無理をなさらないでください……! その怪我ではもう……」
「この村をお前らを守らなくては……」
そういうと村長さんの体が光って私は目をつぶる。
光が収まって目を開けると村長さんがさっきよりは元気そうになっていた。
これも魔法?
「これで少しはやれる。まだ若いのには負けん」
「村長……」
「すごい……」
私が思わず声を出すと村長は私を見た。
「こんなことに巻き込んでしまってすまなかった。それと疑ってしまったこともすまない」
「え、私、疑われてたんですか!?」
全然気づかなかった……
いつから?
会った時から?
「ごめんね、セレちゃん。セレちゃんが私たちと違う種族だったからみんな疑っていたの。だから村長にも会ってもらったし……」
そうだったんだ……
私、全然気づいてなかった……
「私の方こそ、勝手にお邪魔しちゃって甘えちゃって本当にごめんなさい……」
「セレちゃんは謝らなくていいの。悪いのは全部私たちだよ」
「その通りだ。必ずその償いはさせてもらう。しかしまずはこの戦いをなんとかしなくては」
「そうですね。それで裏切られたというのは……」
村長さんが口を開こうとした時門のところに1人の影が見えた。
「そこにいるのはステラ……? ステラなの?」
「ああ、お前も無事で何よりだよ。そこのちびっこもな」
「ダメだ、エリサ! そやつが裏切りものの正体だ!」
「えっ! ステラ、嘘でしょ……」
ステラさんが……?
そんな、エリサさんとあんなに仲良しだったのに……
「俺がこんな古臭いお前らの仲間なわけないだろ。俺はお前らがやろうとしていたことをもっとうまくやってやっただけだ。そこのちびっこのおかげで俺に疑いの目が少なくなって本当に助かったぜ」
「そんな……あ、もしかして!」
あの森の奥で聞いた話もステラさんたち……?
「ふん、察しだけはいいらしいな。その通り、お前に聞かれたのは失態だったが、外にいるチビはお前しかいない。念の為不法退出者名簿に登録しておいたが、簡単に網にかかるとは思わなかった。あとはそのバカが魔法を使ってうちの国の兵士に攻撃をしてくれたおかげで正当防衛成立ってわけだ」
「私のこと、全部囮に使ってたの……?」
「ああ、だからも用済みだ。よくわからない力も持っているようだしさっさと消えてくれ!」
今度は銃が見えてないから攻撃が当たるのいやっ! ってする!
「ぐっ……なんだこの力場は……!」
やっぱり私にステラさんが振った剣は当たらなかった。
でもどうしよう、たとえ裏切ってたんでもステラさんを傷つけたくはないし……
もう一度仲直りできると思うから。
「ステラさん、もうこんなことやめよ? 誰も幸せにならないよ……」
「うるさい、お前に何がわかる! こいつらのせいで俺たちは死にかけたんだ!」
「そんなことない! きっと何かの間違いだよ!」
「ガキがいうことなど信用できるか!」
私じゃやっぱり何にも変えられないの……?
子供だからダメなの……?
「セレちゃん、時にはやらなきゃいけない時もあるんだよ。ありがとう。あとは任せて」
エリサさんが風のようにステラさんに近づく。
「ちぃ! 先にお前から始末してやる!」
私から剣を離してエリサさんに向ける。
エリサさんはそのスピードを落とさないままステラさんとすれ違う。
きっと一瞬の勝負。
今までなら見えてないはずなのに今の私ははっきりとそれが見えちゃった。
エリサさんの体が切られる瞬間。
真っ赤な血が飛び出す瞬間。
「エリサさん!」
そのままエリサさんは倒れて赤い水溜りを……
し、死んじゃった……の……?