1話 祝!無能
遅れて本当にすみません。
まだ2話目だっていうのになかなか筆が進まず投稿できませんでした。
できる限り毎日投稿したいんですけれども、難しそうなのでこれからは2日に一回のペースで更新していきたいと思います。
それでは、どうぞ
「ようこそいらっしゃいました‼勇者様方っ‼」
俺はその言葉に混乱しつつも周囲を見渡した。
もちろん妹は抱きかかえたまま・・・
この部屋は、四方を大理石のような素材でおおわれた大きな広間になっていることが分かった。それ以外にはほとんど物がおいてなく、パッと見てつまらないという印象を受けた。和人たちは広間の中央にいるようで、周りには和人と同じように呆然としながら部屋を見渡しているクラスメイト達がいた。
しばらくして、和人は、今まで教室にはいなかった存在。ドレスに身を包んだ少女について考えようとしたのだが、ここで俺に異変が起きた。
「ガハッ・・・・何しやがる・・・雫。」
俺がずっと抱きかかえられていた妹こと雫が、ものすごい強さで抱きしめてきたのだ。
「だ・・・だってぇ・・・大好きなお兄ちゃんにずっと抱っこされてたら私おかしくなっちゃうよぉ。」
「お・・・おい、雫?」
明らかに雫の様子がおかしい。
「スーハー、スーハー。グヘ、グヘヘヘ。お兄ちゃんの臭いが私を包み込んできて、幸せだよぉ。」
(やばい、雫の奴完璧に聞こえてないな。周りの奴らの視線が痛いし、何よりおれ自身が危ない。何とかこいつを離れさせないと)
俺は、いまだに俺の臭いをかぎながら何かをブツブツつぶやいている雫を無理やり離しながら言った。
「雫。現状を把握したいからとりあえず離れてくれ。」
「ぶー。まったくしょうがないお兄ちゃんだなぁ。まぁ私も現状を把握したいから離れてあげよう。感謝しなよお兄ちゃん。」
「はいはい。離れていただきありがとうございます。」
などというやり取りをしながらも雫は、しぶしぶという様子で俺から離れていった。
俺から雫が離れたところで、ドレス姿の少女が俺たちに話しかけてきた。
「落ち着かれましたか勇者様方?私の名前はは、フィリア=フォン=トランジスタと申します。なぜこのようなことになったか、不安に思われているかもしれませんが、一度国王様にお会いになっていただけませんか?詳しい話はその場でしますので。」
クラスメイト達はフィリアの言葉に対し不安や困惑などを感じたが、今どのような状態なのかを知るためには付いていくしかないため、一同は付いていく意思をフィリアに伝えた。
「ありがとうございます。では、案内しますので付いてきてください。」
そういいながらフィリアは俺たちの目の前にあった大きな扉から出て行った。
和人たちもフィリアが出て行った扉をくぐると、今までいた部屋とは一転して、まるでどこかのお城のような廊下が広がっていた。
(本当にここはどこなんだ。このような建造物は一度も見たことがない。そもそもここは日本なのか。ここまで状況がそろうと異世界という可能性も・・・いや、まさかな。)
和人は、これまでに起こったことが最近はまっている異世界召喚と似ていることもあり、うすうす感ずいてきていた。
しばらく歩くと二人の重装備を着た兵士が守っている、今までとは比べ物にならないほど大きく豪華な扉の前に着いた。おそらくここに国王がいるのだろう。
「では、これから謁見の間に入って、国王様とお話をしてもらいます。その場を借りて、皆さんが一番気になっている『ここがどこなのか』という疑問に答えさせていただきます。・・・ではいきましょうか。」
そうフィリアが言うと左右にいた兵士が、その重厚そうな扉を開いていった。
謁見の間は先ほどの廊下が霞むほどの豪華さだった。和人たちがいた部屋よりも広く、左右の窓にはいろいろな種類の宝石がちりばめられていた。そして、故部屋の奥、他の床よりも一段程高い位置には、大きな宝石がはめられた美しい王冠を被った、きつい目つきをした50代後半の男性が座っていた。
その男が和人たちを見て言った言葉で、和人の予想は確信に変わった。
「よく来てくれた、異界の勇者たちよ。私はこのトランジスタ王国を統べる王エドワード=フォン=トランジスタという。此度は召喚に応じてくれたこと、感謝する。」
王の高圧的なもの言いに、ほとんどのクラスメイトがたじろぐ中、怜輝が食って掛った。
「いきなりよくわからないところに連れてきているのに何でそんな上からものをいうんだ‼少しは誤るということはしないのか?そもそも異界の勇者とはどういうことだ。」
「そのことに関しては約束通り私がすべてお話いたしましょう。」
怜輝の言葉に今までずっと黙っていたフィリアが話を始めた。
「まずは皆さまが一番気になっているここはどこかという質問に答えさせていただきます。一言で申しますと、ここは皆さまがいた世界とは異なる世界・・つまり『異世界』と言われるところです。今、この国・・・もとより『人族』が治めている国は魔王が率いる魔族達によってかなり危ない状態に陥っています。そこで我々は最後の手段としてトランジスタ王家に伝わる勇者召喚の秘術を使い、皆さま呼び出させていただいたのです。どうかお願いします。皆様の力でこの国を守ってください。」
「そんな急に魔族を倒してくれなんて言われても、僕たちは今まで平和な国に住んでいて、殺しはおろか、武器さえ握ったことがないんですよ。」
「心配なさらないでください。勇者様方にはこちらに召喚された時点で、すさまじい力を授けられているはずです。皆様方一度『ステータス』と唱えていただいてご自分の能力を確認してみてください。」
和人たちは口々に『ステータス』と唱えた。
「うおぉっ、なんか出たぞ。」
和人達の目の前に数字や文字が羅列されたプレートが現れる。
「そちらのプレートには、勇者様の基本能力値、スキル、適正属性、称号、そして、エキストラスキルが書かれているはずです。」
それを聞いたクラスメイト達は、自分のステータスプレートを真剣に分析し始めた。
「一般的なステータスは、LV1で全ステータス50、スキル・属性は基本一つ、ユニークスキルや称号を持っている人はほとんどいません。」
そのことを踏まえて俺と怜輝のステータスを見てみよう。
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名前:星野 怜輝 Lv1
HP:5000 MP:1000
STR:200
DEF:500
INT:300
AGL:250
MND:150
スキル:「異世界言語習得」「鑑定」「限界突破」「高速魔力回復」「全属性適正」「全属性耐性」
属性:全属性
ユニークスキル:「神聖剣」
称号:「勇者」 「神聖剣の担い手」
「勇者」:この称号を持つものはレベルアップ時に得られるステータスを大幅アップ。レベル成長速度にも補正。
「神聖剣の担い手」:神聖剣を呼び出し扱うことができる。神聖剣によって補正効果が変わる。現在「聖剣アポカリプス」を呼び出し可能。効果:召喚時STR+200
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なかなかのチート性能だ。
「さすが勇者様です。全ステータス100越えでなおかつ神聖剣を使えるなんて。」
「さすが怜輝だな。それに比べて・・・皆日山のステータス見てみろよ」
笑いながら皆に聞こえるように言ったのはいつも和人にちょっかいをかけてくる、神代 京也だ。
なぜ彼がここまで俺のステータスで笑っているかというと・・・
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日山 和人 Lv1
HP:1000 MP:500
STR:50
DEF:50
INT:20
AGL:70
MND:50
スキル:「異世界言語習得」「完全鑑定」「偽装」
属性:*******
ユニークスキル:「女神の愛」
称号:「異世界人」「女神に愛されし者」
「異世界人」:異世界から来たものにつく称号。効果は特になし。
「女神に愛されし者」:ほかの人より女神に愛されている。効果、もしかしたら女神に会える・・・・かも?
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と・・・基本ステータスがほとんど平均値でスキルや称号もしょぼいのだ
(てか・・最後の称号説明で「かも?」ってどういうことだよもっと断言しろよ)
「うわっ・・・何このしょぼいステータス。」
「『女神の愛』ってなんだよ。強いのか?」
「どうせ、日山のステータスだし、大した能力じゃないんじゃないの?どうなのフィリアさん」
そんなクラスメートの質問にフィリアは大変答えにくそうな顔をしながら、
「そのようなスキルは見たことがありませんが、説明文からするとそこまで強いスキルではないようですね。」
「やっぱりな。こいつだけ勇者のスキルも持ってねぇし、つかえねぇじゃんこいつ。ほんと無能だな。」
俺のステータスの内容と、王女の説明、プラス俺に対する悪印象が重なりいろいろなところから「無能。」という声が聞こえてくる。
そんな中フィリアの声が響き渡った。
「今はそのようなことを言っている場合ではありません。皆さまステータスの確認もすまれましたでしょうし、とりあえず今日のところは休んでください。お部屋はこちらで用意しておりますので。案内しますのでついてきてください。」
そういうと、フィリアは入口に歩いて行った。
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和人が案内された部屋は、10畳ほどの大きさで、部屋の端には大きなベッドがおいてあった。
和人は今日起こったことと、これからどうするかということを考えていたが
「なるようになるさ。」
と考えさっさと寝てしまった。
その夜、和人は不思議な空間で目を覚ました。急なことに焦っていると、ふいに後ろから声が聞こえた。
「会いたかったわ和人。私の愛しい人。」
その声に振り向くと和人は思わず目を見開いた。
そこにいたのは、薄いベールのような服を着た銀髪の女神だったからだ。
ようやく和人を女神と会わせられた。
次回、ようやく和人がチートになって王城から逃げ出します。