後日談
書いていたら後日談ができました。
良かったら読んでください。
「「あっ」」
久しぶりに会った。一か月ぶりぐらいだろうか。会った場所は前と同じく食堂。学部が違うともうこんなところでしか会わないもんだな。
「なつ、最近どうだった?」
そんな言葉をかけながら、彼が座っている向かいの席に座る。今日はラーメンを注文した。
「んー別になんも変わってないよ。」
そういう声は不機嫌そうではない。問題は解決したようだ。ちなみに彼はまたチャーハンを食べていた。好きなんだろうか。
「ふーん、そっか。まあ俺も変わったことはないけど。」
そんな当たり障りのないことをしばらく話していた。
そして本題に入る。
「今日、何限目までの授業?」
「4限目までだけど?」
「じゃあ、遊びに行ってもいい?」
なにか感じたのだろうか藤崎の表情が曇る。
「・・・・・どこに?」
「なっちゃん家」
はあ、とため息をつかれてしまった。
「なんで?」
「行ったことないから。俺ん家には前来たでしょ?」
「・・・成り行きでな。」
「うっ、そうだったねー。」
今思い出すだけでもちょっと恥ずかしい。
藤崎はしばらく悩んでいたようだったが、
「来てもいいけど、何もないよ?」
「ん?別にいいよ。ただ喋ったりしたいだけで。」
「・・・・母親がうるさいけど。」
「楽しそうだね。」
そう答えると黙ってしまった。もう懸案事項はないようだ。
「じゃあ、授業終わったらね。」
そう言うと、
「はいはい。」
とめんどくさそうではあるものの、肯定の言葉が返ってきた。
『校門にいる』
そんな簡素なメールがすでに届いていて、慌てて校門に向かう。なんでこんなときに授業が長引くかなーと悪態をつく。
ピロリーン♪
メールを受信した音だ。
携帯を見ると、
『悪いけど、用事を思い出したから帰るわ』
藤崎のメールが入っていた。
(えっなんで急に)
『ちょっと待ってて』
と、メールを素早く送り、校門まで急いだ。
「はあ、はあ」
久しぶりに全力で走ったから息が切れてしまった。校門の周りを見渡すが藤崎の姿は見当たらない。
メールを見ないで帰ってしまったのか。それにしても用事なんて急すぎる。今日本当に用事がもともと入っていたのなら、俺が誘った時点でそのことを言うはずだ。用事があったのを忘れていて今思い出したとか?
校門を少し出て彼の姿を探すが――――――彼はいなかった。
だが、彼ではなく、いるはずがない彼女と目があった。
「えーと、祥平?」
「・・・・・・・ふぁれ?」
変な声が出た。言い直そう。
「あれ?どうしたの?」
言えた。
目の前にいるのは俺の彼女だ。大学は別々で、しかも彼女は県外の大学に行くことになったので、なかなか会えないでいたのだが。
「えーと、今日は休講で、明日から3連休になるから帰って来たんだけど・・・迷惑だった?」
「そんなわけない!」
それは断言して言える。
「良かった。さっき藤崎くんにも会って、祥平なら今来るって言われたんだけど。」
―――――――――そういうことか。
「・・・あはは」
「祥平?どうかした?」
「いや、なんでもない。」
彼の優しさは特殊なところがあると思う。下手をすればそれが優しさだとは気付かれない。その優しさがどこから来るものなのか。理由を俺は知らないが、いつか分かる機会があればいいと思う。ただでさえ、彼のことについて俺はよく分かってないと思うから。
彼にお礼のメールを入れ、(本人はすっとぼけるかもしれないが)そして今回の埋め合わせに、また遊びに誘ってみよう。
今は、彼の厚意に甘えることにした。
「―――琴未、どっか行きたいところある?でも今から行けるようなところでないとダメだけど」
「うーん、そうだね・・・」
どこがいいかな、と話しながら、
俺は彼女と手を繋ぎ、歩き出した。