第五話(完結)
「はあ・・・」
そんな昔のことをなんで今更思い出すのだろう。いや、忘れていたわけではないのだ。人には優しくしないと、と思っていたのが、そもそもこの出来事が要因であることをずっと俺は思い出したくなかっただけで。
彼女はどうしているだろうか―――とふと思った。優しすぎた彼女は少しは変わっているだろうか。
だが、結局、昔のことを引きずっていても仕方がない。そう割り切って前に進んでいかないと。
母が言った、その人のために優しくありなさいという言葉を、忘れないで。
では、同窓会はどうするか。元々はそのことに悩んでいたのだ。割り切ると決めたからには行った方がいいのか、行かない方がいいのか・・・
「はあ・・・」
もう何度目か分からないため息をつく。こういうときにぐだぐだ悩んで決断できないのは悪い癖だ。
そんなとき、
「なつきー、ただいまー!!いるんなら返事しなさ――――い!『ただいま』って言ったらおかえりでしょーーーー?」
・・・母さんが帰ってきたようだ。元気なのはいつもだが、こんな気持ちの時にはほんと救われる。
ぐだぐだ悩んでいたことはどこかへふっとんでしまった。
小学校の思い出も悪いことばかりでもない。楽しいこともたくさんあった。旧友と久しぶりに話すのも悪くないだろう。
≪佐山北小学校・同窓会のお知らせ≫ 俺はそう書かれた葉書を手に取り、そこに書かれたメールアドレスに返事を送った。
そして、
『おかえり』
その言葉を母に言うために、俺は下の階に降りていった。
更新が遅くなり大変申し訳ありません。
彼の優しい理由を書こうと思ったものの、なかなか上手くまとめられず・・・
時間がかかってしまいました。すみません。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。