出発まで+登場人物(笑)紹介
今回の国をまたぐヨーロッパ弾丸ツアーは、昨年夏から高校時代につるんでいたグループ5人のうち1名の留学が決定した事に端を発する。
この友人、昔からフランス愛をしょっちゅう語っていたのだが、どうやらそれが高じてフランスへの留学を決行するに至ったらしい。準備期間は言語がどーのと大苦戦していたようだが、無事学内の審査も通りフランスへ渡航。文学でそこそこ有名ボルドーでの学生生活を1年間送る事となる。
フランス。古き美しい街並みを今も維持し、美味しいものが沢山あり、美形の溢れかえる街(一番重要だ、とは同行者の言葉だ)。
そんな素敵な場所なのだ、「遊びに来て!」「絶対行く!」という流れは極めて自然といえよう。仮にそれが、例えカラオケに行く程度の遊び計画であっても妙に面倒がる5人組であったとしても、だ。
かくして、私達はこの春休みにフランスへ旅行する事を決めた。春である理由は、1人が就活だった為、就活だ卒論だと忙しいためである。
……高校の同学年なのに4/5が就活と未だ無縁というのも、思えばなかなかに奇妙な話である。ついでに言えば、3/5が同じ学部、それも6年制である。
とここで、今回の旅のメンバー、そしてフランスで今も学んでいる友人達を紹介しよう。流石に実名はマズイので、おおよそで誤魔化す。
・吾桜紫苑(書き手):今更説明の必要も無い、書き手本人。今まで言ってなかったが(しょーじきばれてる気もするが)、当時医学部4年生。
・Aちゃん:吾桜と同じ小学校、後に互いに転校するも高校で再び再会した友人。可愛い系の才女。小学校の頃から仲が良かったかと聞かれて「いや、別に?」とシンクロで即答するような間柄。高校時代、2年3年とクラスも塾も一緒だったためほぼ常に共にいた謎の縁の深さを発揮。
高校時代は休部中だった演劇部を復活させ、部長としてヒジョーに癖の強い面子を引っ張る。当時医学部3年生。
・トム:吾桜と中高同じな友人。「紫苑を見た瞬間に同族って分かったわー」と笑顔で言い切った、しかしこちらとしてはよもや同族とは思えなかった文学系美少女。だがしかし、口は悪い。男口調は当たり前、中学時代は吾桜にキックをかましていた残念美少女。
中学当時からフランス大好き。高校時代はAちゃんと共に演劇部を復活させた。現在ボルドー大学に留学中。吾桜と同じ大学の文学部。
・S子(Sちゃん):何を思ったか高校入学初日に私に話しかけてしまったが故にこの変人メンバーと関わりを持つ羽目になったちょっと気の毒な常識人。だが、私達と普通にやっていける時点できっと同類。可愛いけど偶に無駄に男前な美少女。
男の子に話しかけられると盛大にテンパる可愛らしさをお持ちだが、こんなメンバーといるせいで助けられるどころかニヤニヤしながら眺められるだけという気の毒さを発揮。いやまあ、鍛えられたはずだ、多分。当時法学部4年生、就職決定済み。
・N嬢:高校1年から3年までクラスを共にした吾桜の友人、だが多分話した回数は少ない。
おそらく私の知る中でも1,2を争う変わり者かつパワフル。高校時代、山岳部、ESS、生物研究部を掛け持ちし、演劇部の助っ人という名の事実上部員カウントされていた(しかも全て幽霊部員ではない)強者。趣味は動物の解剖と言い切った過去を持つ。相当な読書家で、以前吾桜がうっかり日本刀について話を振った時には、いきなり活き活きとマシンガントークで語っていた。当時医学部3年生。
……とまあ、所属からして個性溢れる愉快な面子での旅行となったのだった。
準備期間もなかなか曲者だった。4人全員が異なる大学へ通う(しかも県まで違ったりする)身、話し合いはFacebookで行われた(何故ここでラインという選択肢がないのか、それはスマホよりPC派が何名かいたためである……多分)が、誰かが常に試験前繁忙期あるいは就活中だったせいで話し合いは難航(というより停滞度合い半端無い)。
……というよりもだ。約1名はなかなかコメントせず、約1名は忙しさと旅行経験の少なさ故にあまり何も言わず、約1名はやはり忙しさ故にコメントせずという惨状だったりした。いや、私も忙しかったので全く人のことは言えまい。
何せ後に「暇な時は全然話進まないのに忙しくなった途端に書き込まれてー」とAちゃんが漏らしていたのだ、ちなみに私はその真逆だった。他の人も絶妙に忙しい時期のタイミングがずれていて、コメントのタイミングが素晴らしく悪かったようだ。このメンバーに協調性という単語は期待してはならない。
しかも、希望を出せというと、それぞれてんでばらばら出したい放題。そこで話し合いが「如何に候補を絞るか」ではなく「如何に少ない日程で全て回るか」にベクトルが向く辺り、比較的文化部系の集まり(純粋に運動部ばかりなのは私だけである)の癖に、誰も彼もなかなかに根性があったりする。大体高校のせいだろう。
……結局、「あと数日でツアーの割引キャンペーン期間終わる!!」という危機感に煽られて私が予定を組み立て見積もり、申し込みまで半ば強引に漕ぎ着けたのだった。
オソロシイ事に、その後どこへ行くだの何を見るだのの細かい打ち合わせはほぼ無かった。要するに、出発してから話し合おうね状態である。女子4人旅でパックツアーでなくフリーツアーという時点で恐れ知らずだが、出発前に綿密な計画を立てようという発想すら無かったという点は、見る人が見れば卒倒者かもしれない。しかもあの情勢だったりする。
……まあ、誰も彼も試験だったという身も蓋も無い理由だが。
という訳で、出発前日夜まで「あれはいるのか」「これどーしようか」とFacebookで話し合ってたマイペース娘4名は、3/6のまだ陽も昇らぬ早朝に空港に集合したのだった。