第1話
短いとは思いますが、ちょっと連載してみようとおもいます。
例えば愛を呟くとして、
果たしてそれは認められるものなのか。
声に出して言えたなら。
誰の目も気にせずに抱きしめてしまえたなら。
僕たちはこんなに苦しまずに済んだんだ。
何故、君じゃなきゃダメだったのか。
何故、僕じゃなきゃダメだったのか。
好きになってから考えたって、もう遅い。
『恋風』
好きで、愛しくて、触れたくて。
行き場のないこの想いは、どんどん僕を弱くする。
僕たちはいつも泣きたい位の愛を叫んでいる。
「おはよ、逸瀬」
「おー、はよ」
「はい、お弁当」
アパートを出て階段を降りていくと、下の方で携帯を弄りながら夏央が待っていた。俺に気付くと、夏央は笑顔で手を振ってきた。駅までの道のりは自転車で。
俺がこいで、夏央は後ろに乗る。
危ないから座れって言ってるのに、夏央はいつも俺の肩に手を置いて、立ったまま風を浴びている。暢気に鼻唄なんか唄いやがって…。
「夏央、うるさい。肩重い」
「逸瀬は相変わらず朝弱いねー」
「朝から元気なお前が解らない」
「ほらー、こいでこいでー」
「へーい」
10分ほど自転車を走らせると、もう駅が見える。
駅の駐輪場に自転車を止め、荷物を持ってホームにおりる。夏央と俺の通う高校は別々。向かう方向も逆だから、一緒なのは駅まで。
「逸瀬、今日部活は?」
「月曜だから休み」
「ならちょうど良かった。沙和さんがご飯食べにおいでって」
「何?おっちゃん出張なの?」
「うん。今日から一週間。京都だって」
「へー。分かった。早めに行くわ」
そんな会話をしていると、夏央の乗る電車が一足先にホームに入ってきた。少し名残惜しそうに、夏央は俺の顔を見て電車に乗り込んだ。
「帰るときメールするから」
「うん。じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
ポンポン、と軽く頭を叩くと、嬉しそうに微笑んだ。ドアが閉まり、少しずつ離れていく電車を見送ると、それに合わせるかのように俺が乗る電車がホームに入ってきた。
ドアに凭れながら、動きだした電車の窓の外で流れていく景色を見ていた。