第六話:散歩
バスはいつも通りの時間にやってきて、
私もいつも通り、後ろから二番目の席に座った。
殆ど寝ていなかったのでバスの中でうとうとしていると
すぐに学校に着いてしまった。
ふらふらしながら教室に向かっている途中、友達に会ったので話をした。
気が付くといつの間にか席に座っていた。
今日は妙にだるくて、気力がなかった。
本当にずっとぼーっとしていた。
帰りは友達の誘いを断って、学校から少し離れた河川敷を一人で歩いていた。
ここにはたまに来る。
静かで、川に写る大きな夕焼けが気に入っていた。
しばらく歩いていると、仔犬とは呼ぶに足らないが
あまり大きくもない犬がとぼとぼ歩いていた。
私は動物は嫌いではなかったが、母が苦手だったので
昔からあまり触れ合う機会がなかった。
でもその犬にはどこと無く自分と似た雰囲気があって、
私は知らぬまにその犬に駆け寄っていた。
すると、その犬は人懐こそうな顔で私を見上げた。
茶色い毛に垂れ耳の犬だった。
犬に初めて触れる私は恐る恐る頭を撫でた。
犬があんまり嬉しそうに尻尾を振るので、
私は河川敷の草の上に座って犬と遊んでいた。
犬には首輪もなく少しやせていたので、野良犬なんだなと思った。
でも私がためしに「おすわり」と言うと、
喜んでその場にすわった。
私はその時直感した。この犬はきっと前に大事に飼われていたのだと。
その日、名残惜しそうに私を見つめる犬を置いて、家に帰った。
それからも犬の事が気になり、
ちょくちょく河川敷に来ては犬と遊ぶようになった。
犬はなぜか、たまにいないときもあって
私は犬がいない時はがっかりして、早めに家に帰った。
名前は勝手に『チョコ』とつけた。
もちろん単純に毛が茶色っぽいからである。
少し前のよく晴れた日だった。
私がいつものように『チョコ』と呼ぶと、
どこからともなくチョコがやってきた。
頭を撫でていると、チョコの後ろに人影が見えた。
夕暮れどきで顔がよく見えなかった。
相手は私が目を細めているうちに近くまできていて
『どうも。』
と会釈をした。
ようやく顔が見えたと思ったら、見覚えがある人だった。
これからも、よろしくお願いします。